『カカオ79％』144：ハプニング【あらすじ＆感想】

web漫画/カカオ79％【あらすじ＆感想144話】～残り21％の甘さ～
144：ハプニング

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144：ハプニング

カカオ79％【あらすじ】

転校してきた翼と勇が、教室の前で自己紹介をしている時に、モブ男は自分の席で、愛ちゃんと翼と勇が映る写真を、スマホで見ていた。

会ったことは一度もなかったけど

よりによってこの街、この学校

面白いと思ったよ

＊＊＊

劇が続いている。モブ男のナレーション。
「毒を飲んで死んだと思われ霊朝に運ばれたジュリエット、ところでそのパリス伯爵からの伝言を受け取れず、本当にジュリエットが死んだとばかり思っているロミオが現れます。まだ赤い唇と頬を見て、彼女の死を信じきれないロミオ…！」

客席は、劇に引き込まれている。
「始まったよ」
「どうなるのかな」
「ちょっと楽しみになってきた」
「原作って、ここでロミオがジュリエットにキスして自殺するんだよな」

翼は、舞台袖で深呼吸する。
「次パリス」
「後少しだ！」
「頑張れ」
クラスメイトたちが翼に声をかける。

ふぅー…とりあえず落ち着こう、もう劇も終盤

ここを凌いだら終わり

でも

翼は、昨日、モブ男に言われたことを思い出す。
「やっぱキスシーンがないと盛り上がんないや、有りでいきまーす、メンゴ☆」
「は？！消してもらえるって聞いたけど？！」

思い出しては、心臓がドクン、ドクンとなる。

一瞬忘れていたけど、やってきたよ、一番の難関…！！

大丈夫、多分ふりだけで大丈夫なはず

最悪、頬にすれば…

ああでもさっきのセリフの後だから

舞台出るのすら恥ずかしくなって…

翼がドキドキと考えていると、後ろから話しかけられる。
「綾野さん」
翼がふりかえると、大道具班の女の子だった。劇が始まる前に、委員長のことを責める資格がないと翼に言った子だ。
「…頑張って」
「…えっ」
翼は驚いた顔をした。彼女は、恥ずかしそうに少しほほ笑んだ。
「う、うん！ありがとう！！」

翼は涙が出そうになる。

やばい、嬉しさのせいかもっとドキドキしてきた…！

頑張るしかないじゃん

＊＊＊

舞台上では、勇リエットが仮死状態で寝ている。その側で、本当に死んだと思い込んでいるという設定の天童ロミオが、勇リエットを覗き込んでいた。ナレーションが入る。
「ジュリエットの手に持った毒薬の瓶を発見したロミオは、まだ暖かい彼女の唇に、愛と悲しみを込めてキスをします」

そのナレーションに、舞台袖の翼は固まる。仮死状態の勇リエットも、固まったまま目を見開いた。客席側で見ていたうさぎの橘君も、表情が変わる。客席もザワザワしていた。

ナレーションのモブ男は考えてる。

ここで止めたらせっかくのいい雰囲気が全部パーだよ

我慢しないといけないんだよ？

嫌だろうけどここで止めたら大迷惑だよ？

翼は、舞台袖から、舞台上の勇と天童さんを見ながら、冷や汗をかいていた。

え

脚色した台本と筋書きが違う。モブ男が以前言っていた言葉を思い出す。

俺はそうやって自分らの恋に酔って

周りに大迷惑なバカの話は嫌いでね

１年B組一同も、唖然としていた。翼と一緒に台本を読んでいた蛍も、客席で、「？」が浮かんでいた。

え？

ん？

パリスとジュリエットじゃなくて？！

勇リエットが、少しだけ体を起こし、舞台袖を見る。天童さんも、舞台袖を見る。

客席はざわざわしていた。
「マジか、あのメガネロミオと…！」
「違う意味でドキドキするわ」
「いやあああああああああああぎゃあああああだめええ」
勇のファンクラブの人も、客席にいる。

舞台袖では、勇リエットとメガネロミオ向けに、カンペが出された。
「ふりだけでいいから！！」
と大きな画用紙に書かれている。

勇リエットは、天童ロミオの方を、冷や汗いっぱいの顔でちらとうかがう。天童さんは、袖にいる翼の方を見ていた。翼も天童さんをムッとしながら見ている。

客席からは悲鳴が聞こえてきていた。天童ロミオは、勇リエットに向き直ると、

死ぬほど嫌だって顔してる

そりゃそうだよね、でも

ふりだけ…

勇リエットは、天童ロミオに見つめれて、目で訴える。
「おい、ふりだけだよな、お前に限ってはやんねえよな、橘に見せるとかで本当にやるとかねえんだよな」
天童さんは、先程、舞台袖でピースしながら「言えた」と言った翼のことを思い出していた。

そっか、からぶっているのは私の方か

このバカも

もうバカするのはやめたように見えるし

バカはもう私だけなのか

翼は、舞台袖で、拳を握る。

嫌だ

でも劇だし

やめて

多分ふりだけ

見たくない

でも

嫌だ

天童ロミオの唇が、勇リエットの唇に近づく。

ドクン

橘君も、焦った表情で、舞台上を見つめていた。

嫌

翼は、一歩を踏み出した。その時、翼の背後から飛び出したのは委員長だった。
「まちやがれー！！ロミオはオレ…」
と言いながら、舞台上にダイブする。しかし、委員長は、メガネをかけておらず、天童さんの背中にダイブし、委員長のおでこは、天童さんの背中にドンっとぶつかった。そのはずみで、天童ロミオは、前に押されてしまい、勇リエットとキスをしてしまった。

唖然とする客席。文化祭会場は全体的にザワザワしている。
「何が、え、今ぶつかったよな」
舞台袖で誰かが呟いた。

舞台上では、委員長がうつぶせに倒れていた。

ToBeContinued