『片想いシュリンク』まさかの恋愛ファンタジー冒険譚
『片想いシュリンク』EP*09素直【あらすじ】
「ア、オ、イ、くんっ、だーれだっ」
うしろから、つむぎちゃんがアオイくんの目を両手で塞いだ。アオイくんは驚いたようだ。
「なーんてびっくりしたぁー?」
「つむちゃん!?」
振り返るアオイくんに笑顔をむけるつむぎちゃん。
アオイくんとつむぎちゃんが待ち合わせをする公園の銅像の影で、すみれちゃんと虎之助が二人の様子を窺っていたいた。
「え、えっ?アオイくんの彼女って…え!?」
虎之助が、アオイくんの彼女がつむぎちゃんだったことに動揺していると、横にいるすみれちゃんは、冷静に二人を見つめていた。
「…つむぎさんって、プライベートだと随分印象が変わるわね」
「ずいぶんって、え、カバンこっわい!個性的!!」
虎之助は驚いた。
つむぎちゃんをよく見ると、黄色い花柄のTシャツに青いチェックの上着を羽織っており、紺のショートパンツに緑地にピンクの水玉模様のタイツをはいていた。鞄は、しゃげーと言いだしそうな赤い、口が大きく目玉があちこっちむいている妖怪のようなハンドバックだった。
「男性は女性の二面性に弱いって聞いたことがあるわ…これが大人の高等テクニックなのね…」
すみれちゃんが震えながら言った。つられて虎之助も深刻に考える。
「………大人の女とは…」
***
のぼりの影に隠れて、すみれちゃんと虎之助が、デートをするアオイくんとつむぎちゃんの後をつける。虎之助は、すみれちゃんの横で考えていた。
…ってすみれちゃん、デート邪魔するって言ってたけど
一体どうするつもりなんだろう
…それに
すみれちゃんは気づいてたんだ…
2人のこと…
虎之助は、二人をじっと見つめるすみれちゃんを見つめた。
「とら、行くわよ!」
すみれちゃんが動き出す。
危ないことだったらとめなきゃ
虎之助はすみれちゃんのあとをついていく。
「アオイくんたちがこのちょっと美味しいお店に入ったわ!私たちも行くわよ!」
どうやらランチをするようだ。
「!ちょっと美味しいお店!?」
虎之助は、お店の名前に驚く。
「アオイくんもしかしてすみれちゃんのアドバイスに忠実に行動してるの!?」
すみれちゃんのアドバイスは、「駅前で待ち合わせしてちょっと美味しいお店でランチした後話題の恋愛映画を一緒に観て感想を話しながら近くの公園をお散歩、クレープ半分こに分け合ったりしつつ良い雰囲気になって手をつないで一緒に帰る」というものだった。
「!!!」
すみれちゃんがキュンっとする。
「いやそこきぃんとするところなのすみれちゃん、そのデート相手が自分じゃまいんだよ!?」
すみれちゃんはしゅんとした。
アオイくんとつむぎちゃん座った席の通路を挟んで反対側の席、ついたてで姿を隠せるようになっている席に、すみれちゃんと虎之助は横並びで座っていた。
「こうなったら…ヤケ食いをするわ、このジャンボパフェを下さい」
「そんなに食べ切れるの?僕はコーヒー」
注文をする。店員さんは、なんでこの子たちは横並びで座ってるんだろう、と不思議に思っていた。
虎之助は、ひそひそ声ですみれちゃんに聞く。
「ていうかすみれちゃん、これから一体どうするつもりなの?」
すみれちゃんは、返事をせずに虎之助から目をそらした。
もしかして無計画!?
虎之助がそう思ったその時、隣のテーブルに、料理が運ばれてきた。
「おまたせしましたー!」
「あ、アオイくんって辛党なんだね」
つむぎちゃんにタバスコをとってもらうアオイくんを見て、虎之助が言う。
「アオイくんは、甘いのも辛いのも好きよ」
スミレちゃんが答える。
その時、タバスコを渡すツムギちゃんの手がアオイくんにちょんとぶつかった。
「ま…真っ赤だね、アオイくんだけ」
2人の様子をみながら虎之助が言った。すみれちゃんが、いつものように魂とともに毒を吐く。
「手ぇぶつかっただけやんけ」
「すみれちゃん何か出てる、おさえて…」
虎之助が注意する。
「お待たせしましたー」
すみれちゃんと虎之助の席にも注文したものが来た。
「ほら、ジャンボプリンパフェ来たよ!すみれちゃん!」
しかしすみれちゃんは、しょぼっとしてしまった。
「スプーンをもつ気力も無くなったわ…」
「もー…ほら、プリンは万病に効くんでしょ?あーん」
虎之助がすみれちゃんにプリンをたべさせた。
「あーん…」
涙目になっているすみれちゃんは、ぱくんぱくんとプリンを食べる。
「元気出た?」
「うん…」
むぐむぐとプリンを頬張るすみれちゃんはうなづいた。
***
「じゃあ…やっぱり次は映画だったね」
デートの後をつける2人は、映画館に着いた。
「アオイくんってば素直で可愛いわ」
とすみれちゃん。
「すみれちゃんも負けてないよ、僕らも映画見るの?」
「もちろん!」
そして二人は尾行を続けた。虎之助は、アオイくんをみて思う。
…アオイくん
僕らからしたら10も年上のお兄さんだから
すごく大人でいつだって余裕なイメージだったけど…
初めて見た…
好きな人の前だとあんなに一生懸命な顔するんだ…
***
映画館。隣のすみれちゃんが、グスグス泣いている。
「あぐっふぐえう、なんてひどい」
…そういえばこれ話題の泣ける恋愛映画だった…
みんな泣いてる
周りもカップルばっかりだし…
確かに…いい雰囲気にもなるよね
すみれちゃんは
本当はアオイくんの隣で泣きたかったんだよね
そんなことを考えていると、すみれちゃんは虎之助に、ふわっとハンカチを渡してきた。
「…え」
虎之助とすみれちゃんは目が合って、すみれちゃんは気が付く。
「…なんだ、とらのすけ珍しく泣いているのかと思ったわ」
「…見てたの?」
「ううん、気配?あ、ED終わった、アオイくんたち動き出したわ!見失わないうちに私たちも出るわよ!」
すみれちゃんはすくっと立ち上がり、虎之助の手を引いて歩き出す。
「う…うん」
大丈夫
泣かないよ、僕は
***
虎之助は、すみれちゃんから渡されたハンカチを広げて笑った。
「ていうかコレびしょびしょだよ」
「え!?ごめんなさい!」
すみれちゃんは慌てた。
To Be Continued
『片想いシュリンク』EP*09素直【感想】
やっぱり、ツムギちゃんでしたね。アオイくんの彼女。そして、すみれちゃんは気が付いていたのですね。虎之助が、すみれちゃんはツムギちゃんが苦手だと思っていましたが、こういうことだったのですね。
自分がツムギちゃんと違って、とコンプレックスを持っていたのも、アオイくんがそういうゆるふわ系のツムギちゃんを選んだからなのですね。すみれちゃんの気持ち、結構つらいです。
暴走気味に尾行しているすみれちゃんと見守りながらの虎之助ですが、この構図は、実はCOMICO恒例の構図でもありますね。よく尾行するんです、人のデート、まだカップルではない二人とかが(笑)
そして次回尾行がばれちゃうって、作者のくろせ先生のコメントでネタバレしていましたね。どんなリアクションをとっちゃうのかな、すみれちゃん。
すみれちゃんの裏表(?)というか、悪い意味ではなく、優等生キャラと普段の虎之助の前だけで見せるポンコツな素がかわいくて、他の人にポンコツっぷりがばれそうでばれない感じが、私は結構好きなのです。
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