『片想いシュリンク』まさかの恋愛ファンタジー冒険譚
『片想いシュリンク』EP*06たより【あらすじ】
すみれちゃんのスマホに架かってきたあおいくんからの電話。虎之助は、電話をスピーカーにした。
「もしもし?」
すみれちゃんが言う。
「あ、すみれー?もしもし、今日どうした?体調大丈夫かー?」
あおいくんは、床掃除をしながら、電話で話していた。
「あっ急に帰ってしまってごめんなさい。大丈夫だから心配しな…ふっくしゅ」
すみれちゃんは、話している途中でくしゃみをする。
「ぷ、言ったそばからくしゃみしてんじゃん」
電話の向こうであおいくんが笑ってくれた。すみれちゃんは赤面して、
「う、あう…」
と言葉にならない。
「すみれは普段から頑張りすぎなんだよ、優等生なのは良いことかもしれないけど、体調悪い時くらいは遠慮すんなよー俺が寂しいだろー」
「…う、うん」
小さなすみれちゃんは、スマホに膝をついて話していた。
「よしよし!素直なすみれには今度好物のプリンを作ってやろう!」
「う…嬉しいけどなんかそれ餌付けみたいだわアオイくん…」
「そうかー?」
虎之助は、そんなすみれちゃんの様子を見ながら、虎之助は部屋を後にした。
2人っきり(?)にしなきゃね
…すみれちゃん
やっぱり嬉しそうだなぁ
虎之助の心がズキっと痛んだ。と、虎之助の部屋のドアの向こうから、ズズンと大きな音がした。虎之助は、びっくりして部屋に引き返す。
「ふええ」
とすみれちゃんの声がした。
「!?え、なに今の音すみれ大丈夫?!」
電話の向こうであおいくんがおどいて心配していた。
「ア…あぅ…ゼンゼンダイジョウブ…」
虎之助がドアを開けると、電話の向こうのあおいくんにそう言いながら素っ裸で机の上に横たわるすみれちゃんがいた。
ゼンゼンダイジョウブ…じゃない!!!
と虎之助は思った。
***
翌朝、すみれちゃんと虎之助は一緒に登校する。
結局…
すみれちゃんがどうして小さくなって
何がきっかけで元に戻ったのかは
わからずじまいで…
すみれちゃんは、自分の手の指を動かしてみた。
「不安だわ…何かの呪いかしらこれ。二度あることは三度あるとも言うし、原因も分からないんじゃ対処もできないし…また小さくなったらどうしたら良いのかしら、とらのすけ…」
すみれちゃんは歩きながら大きなため息をついた。
「とりあえず次は僕がすみれちゃんにもっと可愛い服を用意してあげるよ!毎回破れちゃうし」
虎之助はのほほんと笑顔で言った。
すみれちゃんは慌てる。
「!うっやだ、あれはその…思わず…」
そしてごにょごにょと口ごもった。回想を踏まえて意訳をすると、かわいいって言われたい!ってことだ。
「すみれちゃんかわいー❤」
虎之助がふふっと笑う。
「やめてっ!あともうすぐ学校に着くから先輩って呼びなさい、とらのすけっ」
「えへへ、はーい」
すみれちゃんは、もうっと言いながら、ふんわりと笑った。
「すみれちゃん、僕が力になるからね」
だけど…
何かあった時は無理しないで
迷わず一番に頼ってもらえたら嬉しいな…
今はそれだけでも充分だよ…
「僕はすみれちゃん大好きだよ!」
笑顔の虎之助に、すみれちゃんは少し赤くなる。
「…とらのすけ…ありがとう、私もとらのすけが大好きよーなんてかわいいのっ」
すみれちゃんは虎之助を思いっきり抱きしめた。
「すみれ先輩、とらちゃん、おはよー」
「仲良しだなー」
「またやってる」
道行く生徒たちが、すみれちゃんと虎之助を見ていた。
***
虎之助の友達、男の子のミチルくんと女の子のマオちゃん、そして、虎之助が学校で話していた。ミチルくんが、マオちゃんが書いたノートを読みながら言う。
「めでたしめでたし…て、ないわーさすがにこれはないわマオちん0点」
みちるくんは、ぬん…と言った。
「んなっ頑張って書いた脚本勝手に0点つけないでよ!!」
マオちゃんはムキになる。
「だってまだ途中じゃん、ハッピーエンドまでちゃんと書いてよー」
ミチルくんが言う。マオちゃんは素直な顔になった。
「う…部長にもそう言われたわ」
横で聞いていた虎之助が口をはさんだ。
「マオちゃん1年生なのに演劇部の脚本まで任されるなんてすごいねー」
「そ…そう?中学の文芸部で一緒だった先輩が、今の部演劇の部長なだけだけど…」
マオちゃんは少し嬉しそう。
「僕もこの前久しぶりに童話を読んだんだ。やっぱりお姫様は王子様と結ばれるのが幸せだよね…」
「そう…なのかしら」
虎之助の話を聞いたマオちゃんは思う。
その言い方はまるで
肯定じゃなくて
確認みたいだわ
それでも三人は、他愛のない話を続けた。
「ねーマオちん、この宇宙人大ロボが本当は姫だって気付くシーン、王様どうやって呼吸してんの?」
とミチルくんのツッコミに、虎之助も
「すごいねえ」
と乗る。
「ファンタジーにそういうツッコミは無粋なのっ!」
とマオちゃん。
To Be Continued
『片想いシュリンク』EP*06たより【感想】
「ファンタジーにそういうツッコミは無粋なのっ!」というマオちゃんの叫びは、私の前回の感想、小さくなった時のすみれちゃんの下着問題にたいしての作者クロセ先生からのアンサー・・・なわけはないですけど、そんな感じで受け取ることができます。
虎之助は、すみれちゃんがアオイくんを好きなことを自然に受け入れている気がするけれど、やっぱりそれなりに傷ついたりしているのですね。切なくなってきました。それでも、邪魔するわけではなく、ちゃんと二人きりにしてあげたりと応援しているところが素敵です。
大人のアオイくんに恋するすみれちゃんは、いつもどこか背伸びしていて、頑張っているけれど、虎之助も、二つ年上のすみれちゃんに恋をしています。二人をみていると、断然、虎之助の方が精神年齢は大人のようですが、そうなれるように虎之助も頑張っているのかと思うといじらしいですね。
年下でも、すみれちゃんにたよりにしてもらえるように、虎之助もずっとしっかりしなきゃ、しっかりしようと、アオイくんに恋するすみれちゃんの隣で頑張ってきたのですね。
マオちゃん、虎之助の同級生で、女の子のメガネをかけた友達の名前がやっとわかりましたね。ミチルくんと虎之助の方が、なんだかベタベタしていましたが・・・。
マオちゃんは、以前もですが、虎之助のことをよく観察していて、すみれちゃんとの関係もよくよく観察していましたね。恋心、とまでは行かなくても、虎之助のことが気になるのかな、と思いました。可愛い男子って感じなのでしょうか。
『片想いシュリンク』EP*06たより【タイトル考察】
「僕が力になるからね」とすみれちゃんに言った、頼られたい虎之助と、不思議な体の減少にさいなまれて、頼りにできるのが今のところ、とらのすけだけという状況のすみれちゃん。相互のお互いに対しての気持ちが一致した言葉が、このエピソードタイトルの「たより」なのですね。
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