歌詞解釈/ルパン三世のテーマ【名曲の物語を紐解く】~歌詞の意味を考える~
『ルパン三世のテーマ』は、モンキー・パンチ原作のアニメ『ルパン三世』の主題曲として使用された楽曲です。『ルパン三世』のアニメや映画などにおいて、オープニングテーマやエンディングテーマ、そして本編でのBGMとしても使われています。そのため、ルパンと言えばこの曲を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
この楽曲は、もともとメロディーだけの曲に対して、後付けで歌詞をつけています。もちろんルパンのアニメがモチーフになっています。今日はそんな『ルパン三世のテーマ』の歌詞を紐解いていきましょう。
ルパン三世のテーマ【歌詞】
真っ赤な薔薇は あいつの唇
やさしく抱きしめて くれとねだる
瞳の奥に 獲物を映して
淋しく問いかける 愛の在りか
男には 自分の世界がある たとえるなら
空をかける ひとすじの流れ星
孤独な笑みを 夕陽にさらして
背中で泣いてる 男の美学真珠の色は あいつのまなざし
遥かな幸せを 夢に描く
いためることを 怖れるあまりに
冷たく突き放す 愛もあるさ
男には 自分の世界がある たとえなるなら
風をはらい 荒くるう稲光
都会の闇に 体を溶かして
口笛吹いてる 男の美学
出典:千家 和也
ルパン三世のテーマ【歌詞解釈】歌詞の意味
真っ赤な薔薇は あいつの唇
やさしく抱きしめて くれとねだる出典:千家 和也
冒頭から比喩が出てきています。この比喩は、少し変わった構成をしています。暗喩になっているので、分かりにくいですが、直喩に直すと、違和感の正体がわかりやすいです。
真っ赤な薔薇は、あいつの唇のようだ
比喩というのは、少し離れた二つの要素を共通点で結びつけることで成り立っています。
AはBのようだ。AとBの共通点はC
という構成です。共通点はCは、直接書かれてはいません。
例文を用いてみましょう。
例文:君の笑顔は太陽のようだ
A=君の笑顔 B=太陽 C=明るい
この場合、Aは対象のモノ(コト)、B はC(共通点)の分野でAよりも一般的、大衆的なもの(コト)という構成になります。つまり、『君の笑顔』よりも『太陽』の方が、『明るい』ことにおいて一般的、大衆的なのです。こうして、一般的、大衆的なものにたとえることで、『君の笑顔』がどいうものか、わかりやすく説明する働きがあるのです。
では、歌詞の比喩の構成をみてみましょう。
真っ赤な薔薇は、あいつの唇のようだ
A=真っ赤な薔薇 B=あいつの唇 C=赤くて美しい
この場合、Aのの『真っ赤な薔薇』よりもBの『あいつの唇』は一般的ではないのです。つまり、AはBのようだ、という構成が成り立たないわけではありませんが、違和感がでます。
A とB を入れ替えてみます。
あいつの唇は、真っ赤な薔薇のようだ
しっくりきます。ただ、普通のたとえです。唇を見て赤いバラを連想しています。歌詞の通りですと、赤いバラを見て、あいつの唇を連想しているのです。見方によってはちょっと危ない人ですよね。
しかし、この違和感が、冒頭からインパクトを与え、普通ではない、突飛なルパンの行動や頭の中を表現しているのでしょう。
文法の話はさておき、ところで『あいつ』って誰?と思う方もいるでしょう。不二子ちゃん?かもしれませんし、それ以外の人かもしれません。ルパンのアニメには、しばしば魅力的な女性の登場人物がでてきます。回によってヒロインのポディションの登場人物が入れ替わることもあります。
ルパンは様々な女性の登場人物に、尽くしたり、翻弄されたり、出し抜かれたり、助けたりしていきます。ここで、『誰』と限定してしまうのは、野暮かもしれません。
そしてその『あいつ』はルパンに、その魅惑の唇で、やさしく抱きしめてくれとねだってきます。
瞳の奥に 獲物を映して
淋しく問いかける 愛の在りか出典:千家 和也
ルパンは見抜いているようです。その『あいつ』と呼ぶ女性が、打算を持って自分に近づいていていることを。だから、女性の瞳の奥には『獲物』が映っているのでしょう。ルパンは泥棒ですから、近づいてきた魅惑の女性が、ルパンと同じ獲物(宝石とか)を狙っているということもよくあります。
でもそんな女性たちにも、感情があったり、抱える葛藤があったり、背負っているものがあったりとまったくの悪いオンナは出てきません。ルパンはそんな女性たちの心の機微をもしばしば見抜いています。見抜いた上で、とぼけたり騙されてあげたりしているよです。
男には 自分の世界がある たとえるなら
空をかける ひとすじの流れ星出典:千家 和也
『空をかけるひとすじの流れ星』は何にたとえているのでしょうか。実は、歌詞には乗っていませんが、実際の楽曲には、この直後にコーラスで『ルパーン・ザ・サード!』と入ります。
つまり、『空をかけるひとすじの流れ星』とはルパンのことです。
孤独な笑みを 夕陽にさらして
背中で泣いてる 男の美学出典:千家 和也
これはルパンの生き方を表現した部分です。表は笑顔で、裏で泣く、泣きたいときも顔には出さない、というやせ我慢の美学のようです。
『男には自分の世界』『男の美学』などと『男』を強調することで、ルパンの紳士としてのこだわり、女性に対してのふるまいや接し方の原点、分かった上で負けてあげる優しさが垣間見えます。
この歌詞の後にも、コーラスで『ルパーン・ルパーン・ルパーン・ルパーン』とはいります。
真珠の色は あいつのまなざし
遥かな幸せを 夢に描く出典:千家 和也
冒頭と同じ比喩の構成をしています。
真珠の色はあいつのまなざしのようだ
A=真珠の色 B=あいつのまなざし C=まぶしくて美しい
これも、意味を考えるときは、AとBを入れ替えた方がしっくりきます。
あいつのまなざしは真珠の色のようだ
そのまなざしは、今度は純粋に遥かな幸せを夢に描いているそうです。
いためることを 怖れるあまりに
冷たく突き放す 愛もあるさ出典:千家 和也
優しくするばかりが愛ではないようです。特にルパンは、警察に追われる大泥棒ですから、自分の存在が必ずしも相手にとってプラスになるとは限りません。そんなときは、相手を突き放さざるを得ないこともあるのでしょう。
男には 自分の世界がある たとえなるなら
風をはらい 荒くるう稲光出典:千家 和也
1番同様、この直後にコーラスで『ルパーン・ザ・サード!』と入ります。つまり、『風をはらい荒くるう稲光』とはルパンのことをたとえているのです。
都会の闇に 体を溶かして
口笛吹いてる 男の美学出典:千家 和也
そして、闇に体を溶かしても(これも比喩ですね)やせ我慢して平気なフリをしているのが、ルパン流の男の美学、だそうです。
ルパン三世のテーマ【データ】
作詞:千家 和也
作曲:大野 雄二
歌:ピートマック・ジュニア
『ルパン三世のテーマ』は、モンキー・パンチ原作のアニメ『ルパン三世』の主題曲として使用された楽曲です。ジャズ・ピアニストであり、作曲・編曲家の大野雄二さんによる、日本で最も有名なアニメ主題歌(主題曲)の1つと言われています。
日本では、当時のアニメのテーマ曲といえば歌詞入りが基本でした。それが、刑事ドラマばりの歌詞の無い曲(インストゥルメンタルと言います)によるテーマ曲は非常に珍しいものでした。
現在ついてる歌詞は後付けで、アニメの第二期で一般公募により歌詞を募集し、歌詞付きのバージョンができました。
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