歌詞解釈/なごり雪【名曲の物語を紐解く】~歌詞の意味を考える~
なごり雪【歌詞】
作詞:伊勢正三
汽車を待つ君の横で僕は
時計を気にしてる
季節はずれの雪が降ってる東京で見る雪はこれが最後ねと
さみしそうに君がつぶやくなごり雪も降る時を知り
ふざけすぎた季節のあとで
今春が来て君はきれいになった
去年よりずっときれいになった動き始めた汽車の窓に顔をつけて
君は何か言おうとしている
君の口びるがさようならと動くことが
こわくて下をむいてた時がゆけば幼い君も
大人になると気づかないまま
今春が来て君はきれいになった
去年よりずっときれいになった君が去ったホームにのこり
落ちてはとける雪を見ていた
今春が来て君はきれいになった
去年よりずっときれいになった
出典元
なごり雪
作詞・作曲:伊勢正三
なごり雪【歌詞解釈】
「なごり雪」はたくさんのアーティストにカバーされている名曲ですが、一番有名なのは歌手のイルカさんによるカバーです。
駅での別れの風景を歌った歌詞です。主人公は見送る側の男性で、旅立つのは女性です。
駅に着いてから、電車が出発したあとまでの見送る男性主人公の心情を鮮やかに描いています。
汽車を待つ君の横で僕は
時計を気にしてる
季節はずれの雪が降ってる出典元:なごり雪
歌詞で「君」といったら、 愛する女性と相場が決まっています。 ちなみに「あなた」といったら、 愛する男性です。 この歌詞は「僕」が主人公で、 「君」への思いを綴っています。
女性は汽車を待っていますが、「僕」は汽車を待っているわけではありません。それでも時計を気にしている「僕」は、隣の女性との別れの時間を気にしています。一緒にいられる、残された時間を気にしているとも言えます。
タイトルにある雪が冒頭から出てきました。「季節はずれの雪」=なごり雪と推察されます。そのことから、季節は冬から春へと変わる頃、春先の時期です。
東京で見る雪はこれが最後ねと
さみしそうに君がつぶやく出典元:なごり雪
女性が、今まで東京にいて、どこかへ旅立つことがわかります。東京で見る雪は最後ということは、もう東京へは戻ることはない、ということです。
文脈通りに読むと、東京の雪が見れなくて寂しそう、と聞こえますが、決して、そういうわけではありません。 むしろ、寂しい事に雪はほとんど関係ないのです。 しかし、「僕」は雪が見られない事に、寂しい気持ちを重ねています。
なごり雪も降る時を知り
ふざけすぎた季節のあとで
今春が来て君はきれいになった
去年よりずっときれいになった出典元:なごり雪
なごり雪とは、どんな雪でしょうか。 辞書で調べると、「名残の雪」は「春が来てから降る雪」とされています。
なごり雪→知り、と、なごり雪が擬人化された表現が使われています。なごり雪は何を知っているのか?
歌詞では、「降る時」を知っている、としているわけですが、なごり雪は春が来たのを知っている、ということになります。 わざわざなごり雪を擬人化したのには、でも僕は、春が来ることを考えてなかった、と繋がっていくように思います。 ふざけすぎた季節とは、学生時代のことでしょう。
動き始めた汽車の窓に顔をつけて
君は何か言おうとしている
君の口びるがさようならと動くことが
こわくて下をむいてた出典元:なごり雪
汽車が来て、女性はとうとう乗車しています。汽車は、現代の新幹線や電車よりも停車時間が長く、乗りこんでから別れを惜しむ時間があります。
窓越しで男性と向かい合っています。向かい合って入るものの、女性の別れの挨拶が怖くて、男性は女性を見ずに下を向いてしまいます。
この場面で女性が「さよなら」と言うであろうことは、男性にも聞き手にも想像がつきます。では、この「さよなら」はどのような意味でしょうか。
別れの挨拶ですが、物理的に離れる別れもあれば、恋人同士が別れるといった精神的なお別れもあります。どちらの別れでも「さよなら」という言葉は使いますが、恋人同士が別れる場合の方が、より印象的な言葉として残ります。
たとえ女性は恋人同士が別れる、という意味で使っていないとしても、この、どちらともとれる「さよなら」という言葉を、女性の口からは聞きたくなかったのではないでしょうか。
別れる寂しさ、悲しさ、切なさなど、様々な感情がありますが、「さよなら」を聞くことに男性は「こわさ」を感じています。
時がゆけば幼い君も
大人になると気づかないまま
今春が来て君はきれいになった
去年よりずっときれいになった出典元:なごり雪
出会った頃の女性は、まだ精神的にも大人になる前でした。女性というよりも「女の子」といった感じだったのでしょう。そして、きっと男性よりも幼く感じたのでしょう。
その頃は、女性に対して恋心も湧かなかったかもしれません。ですから、時間を経て、女性としての成長を遂げることも、自分の恋心がこんなに育つことも想像していなかったのでしょう。
君が去ったホームにのこり
落ちてはとける雪を見ていた
今春が来て君はきれいになった
去年よりずっときれいになった出典元:なごり雪
電車は行ってしまいました。男性は、降っている雪が地面に落ちて溶けていく様子を駅で眺めています。この雪と彼女との時間とを重ねているのでしょう。そして、大人の女性になって綺麗になった彼女のことを考えています。
ホームに取り残されている男性は、彼女の女性としての成長からも、取り残されてしまい、自分は大人の男性として彼女を迎えることができなかった、という気持ちが見えてきます。
彼女と男性の関係を考察してみましょう。この歌に出てくる男性と女性の関係です。仲がよかったことは間違いありません。「ふざけすぎた季節」「幼い君」というヒントから、出会ったのは学生時代、大人になる前のころだと推察します。高校生か大学生でしょうか。
学生時代を一緒にすごしましたが、男性と女性は付き合っていたかどうか、と言うと、両思いながらも、付き合っていなかった可能性もあります。主人公は、はじめはふざけあう友人関係だったのが、いつの間にかどんどん大人になっていく女性に惹かれていきました。
どんどんきれいになる彼女に、自分に自信がなかったのか、言い出す前に、彼女の進路が先に決まってしまったのか、思いを伝えることもできず、友人関係のまま見送っているのかもしれません。
今春が来て君はきれいになった
去年よりずっときれいになった
サビであるこの部分の歌詞。言葉を全く変えずに、3回歌の中で出てきます。「春」とは、もちろん季節の「春」という意味ですが、それ以外にも意味を持っていると思います。一般的に「春」は、人生のステージが上がります。卒業、入学、就職などです。
女性は、もしかしたらお嫁に行ってしまうのではないでしょうか。そのように考えると、「春」は結婚へメタファーと捉えることができます。もう東京へは戻らない、男性が遠距離恋愛を考えていない、などを鑑みると、そのような状況もありえるのではと思えてきます。
だからこそ男性は、女性が去年よりもずっときれいになったと思えてならないのでしょう。
なごり雪【タイトル考察】
旅立つ女性と見送る男性が、駅に着いてから汽車が出発したあとまでを描いています。駅についてから見送ったあとまでずっと季節はずれの雪(=なごり雪)が降っています。
この名残の雪と、女性への未練や別れを悲しむ気持ち、名残惜しい気持ちを重ねています。そして、落ちては溶けてしまう雪と、彼女との儚く感じた時間も重ねています。
なごり雪【データ】
作詞・作曲:伊勢正三
かぐや姫の楽曲。1974年3月12日、かぐや姫のアルバム『三階建の詩』の収録曲として発表。オリコンアルバムチャート1位、年間5位。
1975年イルカの歌によるカバーバージョンがシングルとして発売。大ヒット。以降、様々なアーティストによりカバーされている。
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