津軽海峡冬景色【歌詞解釈】

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歌詞解釈/津軽海峡冬景色【名曲の物語を紐解く】~歌詞の意味を考える~

 

津軽海峡冬景色【歌詞】

上野発の夜行列車 おりた時から
青森駅は 雪の中
北へ帰る人の群れは 誰も無口で
海鳴りだけを きいている

私もひとり 連絡船に乗り
こごえそうな鴎見つめ 泣いていました
ああ 津軽海峡冬景色

ごらんあれが竜飛岬 北のはずれと
見知らぬ人が 指をさす
息でくもる窓のガラス ふいてみたけど
はるかにかすみ 見えるだけ

さよならあなた 私は帰ります
風の音が胸をゆする 泣けとばかりに
ああ 津軽海峡冬景色

さよならあなた 私は帰ります
風の音が胸をゆする 泣けとばかりに
ああ 津軽海峡冬景色

 

出典元

津軽海峡冬景色
作詞:阿久悠
作曲・編曲:三木たかし

 

津軽海峡冬景色【歌詞解釈】

NHKの紅白歌合戦でも、二年に一度は歌われる、言わずと知れた名曲です。今回は、この歌の歌詞解釈をしていきます。

この曲の主人公は、東京から故郷の北海道へと帰郷する女性です。故郷に錦をあげてという、幸せな帰郷ではなく、東京での生活に夢破れて、ひっそりと一人で帰郷する様子が描かれています。

この歌詞の特徴は、ほとんど、女性の心理描写がないという点です。代わりに、風景の描写がたくさんあります。
詩では、「叙事詩」という言い方をします。反対に、心情を表す言葉で構成された詩のことを「叙情詩」いいます。

津軽海峡冬景色は、叙事詩と呼んでいいほど、見事なまでに風景描写のみで構成されています。そして、ほとんど、女性の心理描写はありません。それでも、女性の気持ちが手に取る様にわかるのは、その風景描写に、工夫がされているからです。

上野発の夜行列車 おりた時から

青森駅は 雪の中

出典元:津軽海峡冬景色

歌い出しのたった2行で、主人公を、夜の間の半日くらいで約700キロを移動させました。東京の北の玄関口である上野駅から夜行列車に乗った主人公が、青森駅におりたちました。雪の中とあるので、季節は冬です。時間帯は、夜通し走った夜行列車が到着する時間なので、おそらくです。天気は、です。

北へ帰る人の群れは 誰も無口で

海鳴りだけを きいている

出典元:津軽海峡冬景色

情景描写です。他の乗客の様子とを描いています。北へ帰る人、というのは、主人公の女性である自分のことでもあります。ここで、主人公は、東京から北へ帰る人であるということがわかります。

しかし、他の乗客が、無口なことは見ただけでわかりますが、帰る人かどうかは、本来わかるはずがありません。用事があって、北へ向かう人かもしれませんし、旅行者かもしれません。帰る人とは限らないのに、「北へ帰る人の群れ」としたのは何故でしょうか。

一つ考えられるのは、年末であるかもしれない、という点です。「帰省ラッシュ」の群れに混じって、主人公も帰郷している、という可能性です。

もう一つは、世間話などする気持ちになれない主人公が、他の人もみんな無口だったので、勝手に、自分と同じような状況(夢破れて帰郷)なのかと思っている可能性です。

この歌に限らず、ドラマなどでも、北へ行く行動には「意味」があります。「北」という漢字には、方角を意味する以外にも、負けて逃げるという意味もあります。逃避行は必ず北へとむかいます。南へ向かう逃避行は、ぴんとこない日本人は多いでしょう。

津軽海峡冬景色の歌詞でも、東京での男性との生活から、主人公は逃げてきたのだと推察されます。幸せになれなかったという敗北感があるのかもしれません。

私もひとり 連絡船に乗り

こごえそうな鴎見つめ 泣いていました

ああ 津軽海峡冬景色

出典元:津軽海峡冬景色

主人公の女性が、青森駅に降り立ったところから、津軽海峡を渡って北海道へと渡る連絡船に乗り込みました。

今は、陸路で津軽海峡を渡る場合は、そのまま青函トンネルがあります。空路も一般的ではなく、青函トンネルもなかったこの時代ならではのルートです。ちなみに連絡船はフェリーではなく、国鉄で電車の延長として位置づけられていました。連絡船で北海道までは4時間程かかったと言います。

その連絡船にのって、女性は凍えそうなカモメをみつめて泣いていました。海を渡ることで、いよいよ故郷に近づき、未練を断ち切って、本当に決別することを意味します。カモメの中には渡り鳥の種類もいます。

女性は、渡り鳥であるカモメに思いを馳せていたのかもしれません。初めて、女性の表情が明らかになります。決別の哀しみで、泣いているのでしょう。

そして、そんな自分やカモメ、青森駅や連絡船も全部含めて、津軽海峡の冬景色としています。

ごらんあれが竜飛岬 北のはずれと

見知らぬ人が 指をさす

出典元:津軽海峡冬景色

連絡船の上で、「あれが、北のはずれの竜飛岬だよ」と、知らない人が、その方向を指をさしながら言っています。

この知らない人は、誰に話しかけているのでしょうか。この歌詞の主人公である女性「私」に話しかけていると考えることも出来ます。また、その見知らぬ人の連れの人に話しているのを近くで、主人公である女性が聞いているだけという可能性もあります。どちらであろうかと考えながら、次の歌詞を読み進めます。

息でくもる窓のガラス ふいてみたけど

はるかにかすみ 見えるだけ

出典元:津軽海峡冬景色

女性は男性の言葉に返事をした様子はありません。そして、指でさされてから、曇ったガラスをふいているので、見知らぬ人と、少し離れたところにいるのではないかと推察されます。つまり、女性に話しかけたわけではない可能性が高いでしょう。

竜飛岬は、青森県の最北端です。その最北端である岬も、かすんできて、いずれは見えなくなるでしょう。本土での思い出や愛した人への思いも、本当に決別する時がきたようです。

さよならあなた 私は帰ります

風の音が胸をゆする 泣けとばかりに

ああ 津軽海峡冬景色

出典元:津軽海峡冬景色

はじめて、「あなた」で男性の存在が出てきます。「あなた」は女性にとって、愛した男性であったことが想像できます。

歌詞では、「あなた」は愛する男性、「君」といったら愛する女性と相場が決まっています。

その男性にさよならと挨拶をして、故郷に帰る宣言をしています。もしかしたら、東京で本当に言った言葉かもしれません。

本土が見えなくなりなさそう時に、決別の宣言をして、胸がいっぱいの時に、風が吹いて胸をゆすります。それはまるで、泣いていいよと言われているようでした。

女性は泣いているのでしょうか?先程、カモメを見つめている時は、泣いていました。しかし、いまは、泣いていない、だからこそ、風の音が自分を泣かせようと感じているのではないでしょうか。でも、哀しみを断ち切って故郷に帰りたいので、泣くことを我慢しているのでしょう。

そんな風景が、津軽海峡の冬景色です。

あなたである男性は、女性が愛した人です。女性の様子から、まだ心の整理はついていないように見受けられます。恋人であったでしょうし、もしかしたら結婚をしていたかもしれません。その男性と別れて、女性は故郷に帰るのです。

もしかしたら女性は、その男性と駆け落ちをしたのかもしれません。地元を離れ、東京で生活をしました。でも、何らかの理由でうまくいきませんでした。幸せになるはずだったのに、男性と別れて、東京からも離れて、一人で実家に帰っていきます。

その心情を、本土と故郷の北海道の狭間の津軽海峡の冬の景色に重ねて表現しています。

津軽海峡冬景色【データ】

津軽海峡冬景色
作詞:阿久悠
作曲・編曲:三木たかし

1977年(昭和52年)1月1日に演歌歌手石川さゆりの15作目のシングルとして発売。大ヒットにより、石川さゆりは、数々の音楽賞を獲得。また、津軽海峡冬景色は、その後たくさんの歌手により、カバーされている。

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