歌詞解釈/あずさ２号【名曲の物語を紐解く】～歌詞の意味を考える～
男性2人のハモリが印象的なこの曲。あずさ2号という電車の名前がタイトルについている珍しい曲です。8時ちょうどのあずさ2号で、というサビの部分も有名です。
ところで、「8時ちょうどのあずさ2号」に何があるというのでしょうか。サビの部分なので、歌を通して3回も出てきます。歌詞の中で、何故こんなにも時間や乗る電車を特定しているのでしょうか。そんなところも考えながら、この歌詞を解釈していきましょう。
あずさ２号【歌詞】
明日私は旅に出ます
あなたの知らないひとと二人で
いつかあなたと行くはずだった
春まだ浅い信濃路へ行く先々で想い出すのは
あなたのことだとわかっています
そのさびしさがきっと私を
変えてくれると思いたいのですさよならはいつまでたっても
とても言えそうにありません
私にとってあなたは今も
まぶしいひとつの青春なんです8時ちょうどの あずさ2号で
私は 私は あなたから旅立ちます都会のすみで あなたを待って
私は季節にとり残された
そんな気持ちの中のあせりが
私を旅に誘うのでしょうかさよならはいつまでたっても
とても言えそうにありません
こんなかたちで終わることしか
できない私を許してください8時ちょうどのあずさ2号で
私は 私は あなたから旅立ちますさよならはいつまでたっても
とても言えそうにありません
こんなかたちで終わることしか
できない私を許してください8時ちょうどのあずさ2号で
私は 私は あなたから旅立ちます
出典元
あずさ２号
全曲作詞：竜真知子 作曲・編曲：都倉俊一
あずさ２号【歌詞解釈】
この歌詞の主人公は女性です。お付き合いをしていた男性への想いを断ち切り、別れを告げています。おそらくですが、置き手紙のような形で、書き残した文面がそのまま歌詞になっています。つまり、歌詞の全てが、主人公の女性の言葉であり、男性に向けられている言葉なのです。
それでは、歌詞の内容を見ていきましょう。
明日私は旅に出ます
あなたの知らないひとと二人で
いつかあなたと行くはずだった
春まだ浅い信濃路へ出典元：あずさ２号
まず、女性は、旅に出ると宣言しています。あなたと別れて、別の人と幸せになる選択をすることを、この歌の歌詞の最後では、「旅立つ」と言っています。ただ、この1行目の旅に出るは、旅行に行くと捉えるのが自然です。それが、歌詞が進むにつれて、「旅立つ」がダブルミーニング、２つの意味で使われていくのです。
信濃路とは、信濃国、つまり長野県へと向かう道のことです。女性は、男性と旅行に行くと約束していた場所へ、男性が知らない別の人と一緒に行く、と宣言しています。
行く先々で想い出すのは
あなたのことだとわかっています
そのさびしさがきっと私を
変えてくれると思いたいのです出典元：あずさ２号
別の人と一緒に旅行に行くと言っておきながら、「あなた」である男性に対しての未練が残っているようです。しかし、その未練も断ち切ろうとしている様子が伺えます。
さよならはいつまでたっても
とても言えそうにありません
私にとってあなたは今も
まぶしいひとつの青春なんです出典元：あずさ２号
それでも、自分から決定的な決別はできないと言っています。それは、別れを決意した今でもなお、「あなた」とのことが、まぶしいひとつの青春、としています。
直接会っても、別れを伝えることは出来ないから、だから、直接話をするわけではなく、突然、別の人と一緒に旅行に行くという置き手紙を残したのでしょう。
8時ちょうどの あずさ2号で
私は 私は あなたから旅立ちます出典元：あずさ２号
当時、8時ちょうどのあずさ2号は、新宿駅から出ていたようです。このことから、主人公が暮らしていた街は、東京だとわかります。
そして、明日の8時に、新宿から出発するあずさ2号に乗って、あなたから旅立つと宣言しています。
これだけ未練がありながら、何故女性は男性と別れたいのだろうかと、不思議に思いませんか？
その疑問の答えが、2番の歌詞で明らかになっていきます。
都会のすみで あなたを待って
私は季節にとり残された
そんな気持ちの中のあせりが
私を旅に誘うのでしょうか出典元：あずさ２号
まず、女性と「あなた」である男性の関係は、おそらく不倫だったのだと推察されます。それ故に、女性の恋は、待つことしかできませんでした。
女性のふるさとは、東京ではないようです。華やかな東京に出てきて、友達と遊ぶでもなく、流行を楽しむでもなく、ただひたすらに、待つ恋に青春を捧げたのでしょう。
そして、季節に取り残された、とあります。
ちなみに、手紙を書いている今は、信濃路が春がまだ浅い頃となっているので、東京はきっともう春になっている頃でしょう。
季節に取り残されたとはどういう意味でしょうか。おそらく、季節は「春」のことでしょう。「春」は単純に季節の春という意味もありますが、他にも意味があります。春が来た、というと、恋愛が成就したという意味があります。人生の春は、一番いい年齢頃のことです。
非常に婉曲的ではありますが、季節に取り残された主人公は、あなたを待っている間に、春になるときに自分だけなれなかった、ということでしょう。つまり、主人公はあなたを待っている間に、幸せをつかみ損ねそうなのです。そして焦って、旅に誘われる＝あなたと別れて幸せにならなきゃいけない、ということなのでしょう。
不倫の関係のままでは、いつまでたっても、一般的な幸せな生活は送れません。どこかで断ち切らなければと思っているのでしょう。
さよならはいつまでたっても
とても言えそうにありません
こんなかたちで終わることしか
できない私を許してください出典元：あずさ２号
それでも、やはり、未練があり、自分から決定的な決別はできないと言っています。本来であれば、きちんと別れ話をして、別れるべきなのに、一方的に離れるという方法でしか、別れることが出来なかったようです。そしてそのことを、付き合っていた男性に謝罪しています。
8時ちょうどのあずさ2号で
私は 私は あなたから旅立ちます出典元：あずさ２号
そして、明日の8時に、新宿から出発するあずさ2号に乗って、あなたから旅立つと宣言しています。
二人の関係は不倫だったのではないかと推察します。その不倫相手である男性との関係を女性をは断ち切ろうとしているのです。しかし、女性は、まだ男性のことが好きで、直接会ってしまったら別れは言い出せないほど好きなのです。男性の都合のいい言葉に、また流されてしまいそうなのでしょう。
1番の冒頭に出て来た、
明日私は旅に出ます
あなたの知らないひとと二人で出典元：あずさ２号
は、すべて嘘である可能性があります。「あなたの知らない人」というのは、実は存在しないのです。ただ、不倫相手の「あなた」に対して、普通の幸せを手に入れることを告げたかったのではないでしょうか。
そして、「明日、8時ちょうどのあずさ2号で旅に出る」と、何度も繰り返しています。明日の8時に、新宿から出発するあずさ2号に乗る、ここまで具体的に書けば、男性が引き止めようと思えば、来られるのです。
きっと女性は、この手紙を書いたことは、最後の賭けだったのでしょう。男性が引き止めに来てくれる可能性を残したのです。結局、別れるかどうかは、自分に対する男性の本気度に委ねていたわけです。
女性が、「あなたの知らない人」と幸せになることを捨てさせて自分のところへ、と言う決意を男性がしてくれたなら、今までの不倫関係ではなくて、奥さんと別れて自分を選んでくれるのではないかという賭けです。
結局、翌日、2人がどうなったかはわかりません。でも、結局男性は来なくて、女性はあずさ2号に乗って、一人で長野へ傷心旅行へ旅立つのではないでしょうか。
あずさ２号【データ】
1977年に発表された楽曲。兄弟デュオ・「狩人」のデビュー曲。
1997年に富士写真フイルム（後の富士フイルム）のレンズ付きフィルム「写ルンです」のCMソングとしても使用された。
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