歌詞解釈/贈る言葉【名曲の物語を紐解く】~歌詞の意味を考える~
3年B組金八先生の主題歌でもあったこの歌は、卒業ソングとして学校などでも合唱曲に編曲されて、歌われることがしばしばあります。
しかしこの歌は、歌詞をよく読むと卒業ソングというわけではありません。実は、失恋ソングなのです。
今回は、そんな『贈る言葉』の歌詞の意味を考えていきましょう。
贈る言葉【歌詞】
暮れなずむ町の 光と影の中
去りゆくあなたへ 贈る言葉悲しみこらえて 微笑むよりも
涙かれるまで 泣くほうがいい人は悲しみが 多いほど
人には優しく できるのだから
さよならだけでは さびしすぎるから
愛するあなたへ 贈る言葉夕暮れの風に 途切れたけれど
終わりまで聞いて 贈る言葉信じられぬと 嘆くよりも
人を信じて 傷つくほうがいい
求めないで 優しさなんか
臆病者の 言いわけだからはじめて愛した あなたのために
飾りもつけずに 贈る言葉これから始まる 暮らしの中で
だれかがあなたを 愛するでしょう
だけど 私ほど あなたの事を
深く愛した ヤツはいない遠ざかる影が 人混みに消えた
もうとどかない 贈る言葉
もうとどかない 贈る言葉
出典元
贈る言葉
作詞:武田鉄矢
贈る言葉【歌詞解釈】
暮れなずむ町の 光と影の中
去りゆくあなたへ 贈る言葉出典元:贈る言葉
暮れなずむという言葉は、日常生活ではあまり使わない言葉ですね。どんな意味でしょうか。
実はとても古い言葉で、万葉集にも出て来るような言葉です。意味は、なかなか日が暮れない、暮れかかってから、完全に真っ暗になるまでが長い状態を言います。つまり「春の夕暮れ」をさします。
この1行目の歌詞から、季節は春。時間は夕暮れ時、日の光と夜の闇が混在するころだと分かります。そして、去っていくあなたへ「贈る言葉」としています。
この部分が、卒業ソングとしてもしっくりくるため、ドラマの影響もあり、卒業ソングだと思っている人が多いのではないでしょうか。
歌詞の中で「あなた」ときたら、愛する男性をイメージすることが多いです。しかし、この歌での「あなた」はこの後の歌詞からも女性であると推察されます。男性ボーカルが歌っていることからも、「あなた」は愛する女性をイメージしたほうが自然です。
この歌のタイトルでもあります「贈る言葉」。仮に「送る言葉」ですと、物理的に「送る」という意味になります。卒業式の「送辞」など、見送りのときの言葉ともとれます。しかし、この歌詞は、あなたへ「贈る」言葉としています。贈り物の「贈る」です。言葉を贈る。つまり男性は、感謝だったり、応援だったりの言葉を伝えたいのだということが分かります。
悲しみこらえて 微笑むよりも
涙かれるまで 泣くほうがいい
人は悲しみが 多いほど
人には優しく できるのだから出典元:贈る言葉
男性の考えを述べているのでしょう。何故、男性は「あなた」と別れてしまったのでしょうか。歌詞のこの部分から、やさしさに対しての考え方の違いだと推察することができます。性格の不一致といったところでしょうか。
そして男性は優しいので、自分を振った「あなた」にも、感謝だったり、応援だったりの贈る言葉を、泣きながら伝えようとしているのです。
悲しみをこらえて微笑むという「強さ」よりも、泣くことを肯定しています。そして、その悲しみが優しさに繋がるとも言っています。
さよならだけでは さびしすぎるから
愛するあなたへ 贈る言葉出典元:贈る言葉
さよならも言っているのですね。その上で、言葉を贈るようですね。女性に対しての未練もまだあるのでしょう。男性の気持ちが離れた訳ではないようです。
贈る言葉を男性から伝えようとしている点、男性が優しい人物であり、それがいいことだとしている点から、おそらく女性が別れたいと申し出て、話し合って、男性が了承して別れることになったのだと推察されます。つまり男性が振られたことになります。
夕暮れの風に 途切れたけれど
終わりまで聞いて 贈る言葉出典元:贈る言葉
夕暮れの風に途切れたとありますが、風で声が聞こえなくなったわけではありません。きっと、日が沈みかかったころの、夕暮れの風が男性の寂しさを増してしまったのではないでしょうか。
1番であったように、男性は涙がかれるまで泣いているので、寂しさが増し、言葉に詰まったり、また泣き始めてしまい、話すことがままならなかったようです。でも、終わりまで聞いてほしいそうです。
信じられぬと 嘆くよりも
人を信じて 傷つくほうがいい
求めないで 優しさなんか
臆病者の 言いわけだから出典元:贈る言葉
また男性の考えを述べています。今回も「優しさ」が絡んでいます。1番と対比させて読んでいきましょう。前半2行は、「AよりもBがいい」となっており、いづれもBの方がつらい事であるという文章の構造が同じです。
ざっくりですが、1番は無理して笑うよりも泣くほうがいいとしています。2番は人を信じられないよりも、傷ついても信じるほうがいい、としているのです。
そして、後半は倒置法を使っています。倒置法は強調するときに使います。
「優しさなんか求めないで」
「求めないで 優しさなんか」
「優しさなんか」という言葉を強調しています。そして、何故、求めてはいけないかと言うと、臆病者の言い訳だからです。優しさを求めているのは女性、臆病者なのは男性です。
悲しみが多いほど人に優しくできると言っていたのに、やさしさは臆病者の言い訳だとも言っています。きっとこの男性のいいところは、優しいところなのでしょう。そして、悪いところもまた、優しいところなのではないのでしょうか。
悪いところが優しいところといってしまうと、ピンとこないかもしれません。言い換えれば、決断力が無く優柔不断だったり、男らしさが無く、女々しかったりするのでしょう。
はじめて愛した あなたのために
飾りもつけずに 贈る言葉出典元:贈る言葉
男性にとって女性は、初めて愛した人だったようですね。飾りもつけずに、とは、男性が女性に贈る言葉は本心を言うのでしょう。
これから始まる 暮らしの中で
だれかがあなたを 愛するでしょう
だけど 私ほど あなたの事を
深く愛した ヤツはいない出典元:贈る言葉
初めて愛した「あなた」と男性は、きっと一緒に住んでいたのでしょう。「これから始まる暮らし」とは、女性が男性のもとを去ってから始める、新しい暮らしです。
このことから、二人は頻繁にデートする恋人同士、とかではなくて、一緒に生活をしていた仲だということが伺えます。
自分のことを「ヤツ」と表現していることから、やはり、「私」は男性であることがわかります。この男性は、別れてしまうけれど、今後出会うであろう他の男性と比較しても、自分が一番女性のことを深く愛している、と言っています。
遠ざかる影が 人混みに消えた
もうとどかない 贈る言葉
もうとどかない 贈る言葉出典元:贈る言葉
この影は、「あなた」の人影です。ついに女性は、男性から離れて去ってしまったのです。贈る言葉は最後まで言えなかったようです。
贈る言葉【タイトル考察】
主人公の男性は自分を振った「あなた」に、言葉を贈ろうとしています。
しかし、彼女への想いが溢れてきて、途中でうまく伝えることができなくなります。そして、結局は彼女は行ってしまい、言葉は贈れないのです。聞き手は、伝えられなかったことはわかるが、伝えようとしていた贈る言葉がとんな言葉なのかわからないままなのです。
つまり、歌の初めから終わりまで、贈る言葉を伝えようとしているのです。
贈る言葉【データ】
歌:海援隊
作詞:武田鉄矢
作曲:千葉和臣
1979年に発売された海援隊16作目のシングル曲である。武田鉄也が主演するテレビドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)第1シリーズの主題歌。レコード売上が100万枚を超える大ヒットとなった。
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