web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想262話】~残り21%の甘さ~
262:迷路(4)
降りしきる雨の中、凪が歩き出したので翼は慌てて後を追う。
「ちょっと…!何で無視して行っちゃうのよ。ねぇちょっと待ちなって!」
翼は語気を強める。
「アンタが駅へ来いって言ったんでしょうが!」
「それで返事してやったじゃん。一ノ瀬に会ってないって。それを確かめたかったんじゃないの?」
凪は振り返りながら、やっと答えた。
「もう一つの質問の答えを聞いてない!アンタから見た愛ちゃんは元気かって聞いてるんだよ。どうしてここまで私達の事に関わってくるの?愛ちゃんに頼まれて?それとも愛ちゃんから私達の話を聞いて許せないと思ったから?アンタから見た愛ちゃんはやっぱ私達とのことで苦しんでいて…弟として見てはいられなくて動き出して…いや、そもそも私達がこの学校で出会ったのって偶然?」
翼はまくしたてた。
凪は何かを言いかけるが、くるっと後ろを向いてまた歩きはじめた。その凪の様子に翼がキレた。
「何でそこまで愛ちゃんのために頑張るの?!姉弟とは言え、お母さんの再婚相手の連れ子でしょう?ここまで詳しく事情を知ってて深く関わろうとするなんてちょっとおかしくない?!」
そして翼は、とどめの一言を口にする。
「アンタもしかして愛ちゃんのこと好きなの?!」
「はあ?」
凪がこたえる。
「…何?図星?もしかして私達にヤキモチ焼いてただけ?」
あれ?反応ある?と思いながら翼は続ける。
凪はもう一度翼の方を振り向き、乱暴に自分の傘をガッと翼の傘にぶつけた。
「分かった、そんなに気になるなら全部教えてあげる。ついでに夏目愛にも会わせてやるから付いてきて」
凪が言う。
「えっ?!今から」
思わぬ展開に翼は驚く。
「ただし、朝帰りする覚悟でね」
「は?朝帰り?!」
翼はもう一度驚いた。
***
というわけで、凪と翼の二人は電車に乗っていた。ゴトンゴトンと電車の音が響く。二人は少し離れて座り、凪は足を組んでいる。
「ねぇ…これどこまで行くのよ、愛ちゃんの住んでるところってどこ?もう一時間も電車に乗ってるんだけど」
行き先を知らない翼が聞く。そして何の返事ももらえず。
何が全部教えてやるだよ
一言も喋らないじゃない
翼は怒りながらも、凪についていった。
電車3回乗り換え、
ある駅に到着した頃にはもうすっかり真夜中でした
電車を降りて駅を出ると駅の灯りが消えた。
ここに愛ちゃんが…?
翼は辺りを見回す。すごく田舎の雰囲気だ。
さっきのもしかして終電?
相変わらず、雨はザーザーと降っていた。
「ねぇ切符代はいーから、この後のタクシー代払って」
凪は翼の方を向き、無表情で言う。
「えっまだ移動するの?」
もうお尻が痛いのに、と翼は思う。
雨の中、山の中に通っている真っ直ぐな道路をタクシーが走る。
「あのさこんな夜中に尋ねるのは迷惑じゃないかな」
タクシーの後部座席で、翼が凪に言う。
「別にあの女はそんなの気にしないから」
凪は窓の外を向きながら答える。
「あの女ってアンタのお母さん…清水…さんのこと?」
「そー」
「愛ちゃんはその新しいお母さんと自分のお父さんと暮らしてるの?どうしてアンタは一緒に暮らさないの?」
翼が聞くと、今まで車窓を眺めていた凪が翼の方を向く。
「あの女と一緒に暮らせと?冗談じゃない。本家に馴染めないからって夫も子も捨てて逃げ出した女だ」
「じゃあアンタは何で夏目の苗字を受け継いだの?お母さん達と家族になるためじゃないの?それともやっぱり…愛ちゃんが好きで、イデデデ」
翼がそこまで言うと、凪は翼の頬を片手で握るように潰した。
「もっかいそれ言うとこのド田舎の山奥に捨てて帰るよ」
凪は話す。
「前にも話したと思うけど、俺は母の浮気で両家の親戚から色々言われてるめんどくさい立場になってんだよ。だからそこから自由になって一人で生きていくために新しい苗字を選んだだけ」
翼は何も言わなかったが、心の中で考える。
本当かな
そのためだけじゃない気がするのは…
私の気のせい?
凪はあの時のことを思い出していた。
凪の母親は黒い服を着て、たばこを吸っていた。凪も詰襟の服を着ている。
夏目に…
「俺の苗字も夏目にしてよ」
お母さんは凪の方をチラッと見た。
***
部屋の中でタバコを吸ってた凪の母親、愛ちゃんが清水先生と呼んでいた女性は、スマホに着信が入ったのに気が付いた。
今日はベージュの服を着ている。
画面を確認してから
「はい、夏目ですが」
とたばこを消しながら電話にでた。
ToBeContinued
カカオ79%【感想(ネタバレ有)】
準備中
カカオ79%【ネタバレ/伏線回】
カカオ79%【次の話し】
カカオ79%【前の話し】
コメント