『カカオ79%』143:そして、ロミオ【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ&感想143話】~残り21%の甘さ~

143:そして、ロミオ

カカオ79%【あらすじ】

橘君の旅館で、あのオレンジ野郎に、この劇の話を初めて聞いた時、ロミジュリをそんな風にも思えるんだと思いながらも、あいつの考えに同感した。

翼は旅館で、モブ男と倉庫に閉じ込められながら、話したことを思い出す。
「ロミオを選ぶと友達と家族を裏切り傷つけることになる」
「永遠の愛なんか存在しないと言っても、結婚したからには義理と責任で家庭を守るべきもんじゃない?愛が免罪符になれるとでも思ったのか」

文化祭で劇は続いている。モブ男のナレーション。
「従兄弟の死と愛するロミオとの別れで悲しむジュリエット。そんなジュリエットに、今度は両親からパリス伯爵との結婚が命じられます。そしてロミオとジュリエットの結婚で両家の和平を図っていたパリス伯爵にとって、それは意図せずもジュリエットを手にするチャンスではと悩み始めます」

パリス扮する翼がジュリエットに言う。
「俺が…彼女を幸せにすればいいんだ、ロミオのことは全部忘れるくらいー」

そのセリフを言いながら、翼は自分の気持ちを考えていた。

自分の気持ちのためだとは言え、

誰かを傷つけちゃう勝手をするのは間違っていると思ったから

そして怖かった

自分も勝手をやっているのではないかと…

自分の気持ちの変化が、行動が、

変化が誰かを

愛ちゃんを

傷つけてしまうのではないかと

でも

と、考えながら、翼の脳裏には、愛ちゃんや、村上さんの顔が浮かんだ。

劇は続く。ナレーションが入る。
「でも、悲しみで苦しんでいるジュリエットを見て、やはりロミオとジュリエットが結ばれるべきだと思い直します」

客席は、そんなパリスの評価が上がる。
「何ていい男…」
「可哀想に」

舞台上には、天童さん扮するロミオがあらわれる。翼パリスが、天童ロミオに言う。
「ロミオ!必ず何とかして見せるから、俺を信じてくれ…!確かに君のことは憎いけど…俺は何よりもジュリエットに幸せになって欲しいんだ、そのためなら何でもするさ…!」
ナレーションも解説する。
「絶望していたロミオに希望の兆しが見えた瞬間です。なんていい男だ、パリス伯爵…!でも言わば恋敵のロミオにどうしてここまでしてくれるのか、パリス伯爵…!」

天童ロミオは、翼パリスに向かって、とんでもないことを言う。
「は?このヘタレが」

ナレーションがすかさずフォローする。
「自分の気持ちよりもジュリエットの幸せを選んだその崇高な犠牲に感動…!そして罪悪感すら感じるロミオです!!でも今はパリスを信じるしかないロミオ、何の抵抗も出来ず追放されます」

舞台裏で見守るクラスメイト達は、モブ男のナレーションに感心していた。
「すげーな、夏目のフォロー」
「ナレーションでなにもかもごまかしてる」

天童ロミオは、クラスメイトの手によって、強引に舞台袖に下げられた。翼は、パリスじゃなくて天童さんに自分が怒られてるような気がして、何故だろうと思いながらも涙目になっていた。

そっか、天童さんには考えらんないことなんだろうな

自分の気持ちを諦めて幸せを祈る…的な

橘君のことそれぐらい…

理性なんか保てないほど

今ならわかる気がする

じゃ私は?

今の私は…

翼は、勇とつなげなかった手を思い出す。

舞台は続く。翼パリスの台詞。勇リエットを前に、毒の瓶を手に持っている。
「ジュリエット、よく聞くんだ。この毒を飲んで死んだふりをして、ロミオとこのヴェロナから逃げるんだ」
勇リエットは言う。
「パリス伯爵、私はあなたを裏切るつもりです。どうしてここまで助けてくれるんですか?」

「それはジュリエット、あなたを愛しているからです」
翼パリスは、頬を赤くして言う。勇リエットの頬も赤くなる。見ている観客たちは息をのむ。ナレーターのモブ男も、舞台上の様子を見ている。客席側にいたリナ先輩は、えー?!ずるい~?!と、翼がまるで、抜け駆けしたような反応をする。客席にいた蛍は、わー知ってた、と。その横で光もパチパチと手を叩いていた。
「練習の時にはいつもどもってちゃんと言えたことないとこなのに…」
舞台袖のクラスメイトたちも、頬が赤くなっていた。客席側にいるうさぎの橘君は、腕組みをしたまま、表情はわからない。

「え…」
赤面して、翼パリスを見つめる勇リエット。そこに、ナレーションが入る。
「パリス伯爵、長らく秘めていた気持ちをようやくジュリエットに伝えるが、ジュリエット、すげなく断ります。ジュリエットの心の中にはロミオだけ!!申し訳ない気持ちはあるものの恋はない!断然ない!!ありえない!脈なし!幼馴染以下でも以上でもない!」

そのナレーションを聞いた勇リエットは、固まり、石のようになってしまう。
「じゃ、じゃーロミオには俺から伝えておくから」
翼パリスはそう言って舞台上から去った。

翼からの愛の告白の余韻を、モブ男のナレーションでつぶされた勇リエットは、もらった薬をやけくその顔で飲んだ。

あいつ絶対わざとだろ、覚えてろよ、クソが…!!

ナレーションが続ける。
「複雑な気持ちでパリス伯爵からもらった薬を一気飲みします。この薬は、一定時間以上仮死状態にしてくれる薬らしーです。そしてジュリエットは、長い長い眠りに落ちます」

客席からは拍手がわいた。
「私ちょっとキュンときちゃった」
「私も…!パリス伯爵応援したくなっちゃった、ロミジュリなのに」

翼が舞台袖に戻ると、興奮気味のクラスメイトたちに出迎えられた。そして、それぞれ小声で声をかけられた。
「綾野さん…!!凄かったよ、練習の時にはあんなにおどおどしてたのに…!」
「私もドキッとしたもん!」
「かっこよかった!」
「ちゃんと言えたね!」
「盛り上がって来たしこれで行けるじゃんね?!」
「客の方も反応あったよね!?」

うおおおおお、ヤベェ、何かすげぇ力入れて言っちゃった

翼は、クラスメイトには直接返事はしなかったが、赤面し、心臓はバクン、バクン、バクンと鳴っていた。そして、舞台袖を奥に進むと、翼は、ふと、同じく舞台袖にいる天童さんに気が付く。

そう、今考えても、天童さんも

色々好き勝手やってくれたけども

狙いはともあれ、迷う私の後を

押してくれた形になってんだよね

翼は、天童さんのアパートで、殴られた時のことを思い出していた。

この劇に出てくれたのも

ロミオ役を演じて、

勇のことが好きなフリの延長を狙ったんだろうけど

それだけじゃない気もするし

だから

今度は私から…

翼は、舞台袖の壁に寄りかかっている天童さんに、近づいた。そして、ピースをしながら言う。
「言えた」
天童さんは、少し驚いた顔をしていた。翼は、そのまま続ける。
「もう、ヘタレとかバカとか言わないでね。煽るのも十分間に合ってますから。違う人のこと好きな振りする茶番もやめましょうよ。その代わり、私が天童さんを手伝い、慰めます!!」
翼は、必死に言い切った。

***

舞台上は暗くなって、準備中だ。客席からは、小声で話が聞こえる。
「残り後少しだね」
「キスシーンとかないのかな」

舞台袖では、勇リエットが、準備をしていた。
「ジュリエット、毒薬の瓶ちゃんと持っててね」
とクラスメイトから確認をされる。

天童さんは、先程の翼の言葉に怒って、反論する。
「はあ?ふざけんな、誰のせいでこの苦労してんだと思う?劇のセリフでやっと言えたくせに偉そうにすんじゃねえよ、クソが…!!」
翼は、天童さんに胸ぐらを掴まれて、すこし慌てる。周りのクラスメイトが、天童さんの声の大きさを恐る恐る注意した。
「ちょちょっ、し、静かに…!」
「客に聞こえるから…!」
天童さんは、構わず周りを威嚇する。
「同情するなら金よこせよコラァ、なめんじゃねえよ」
翼は退散、天童さんは、他のクラスメイトに、
「ロミオさん!出番だから…!こっち早く!!」
と促された。

「ちくしょうやっぱ…」
天童さんは、翼の方を見ていたが、翼が退散したあと、下を向いて、ぼそっと言う。
「来るんじゃ…」

翼は、少し離れたところから、そんな天童さんを見つめていた。

***

もうすぐ、舞台上の準備が整って、幕が開く。舞台袖では、クラスメイトが天童ロミオに動きの説明をしていた。
「ジュリエットのところへ近づいて、顔を見つめててね」

客席では、ロミオとジュリエットのストーリーを知っている人が、隣の人に話しかけていた。
原作ってここでロミオがジュリエットにキスして自殺するんだよな」

そしてモブ男は、ナレーターを務めながらも、舞台袖の様子を見ていた。

フーン?

パリスからロミオになっちゃってるじゃん

思ったより早く忘れてくれちゃってるのね

あの時までにはまだ随分気にしてたみたいだったけど

モブ男は、夏休みの旅行で、翼が浜辺で、愛ちゃんと呟いたことを思い出していた。

天童雫…

結構有名な元ヤンキーの彼女が

一ノ瀬のことを本気で好きなのかどうか…

は関係ない

最後はもっと盛り上げていかないと…

そう思いながら、モブ男はマイクを握った。

ToBeContinued

カカオ79%【感想】

劇の内容が、それぞれの考え方や過去とリンクしていたり、マッチしていたりして、ただの劇じゃなくなっています。整理しながら読むと大変ですが、面白いですね。

翼の、
「あなたを愛しているからです」
は必見ですね。劇だと分かっていても、いい表情をしていますし、勇にも伝わっていますね。モブ男に邪魔されてしまいましたけど。劇じゃなくても見たかった、というのが本音ですが。勇が女装中なので、なんとなく締まらない笑

天童さんが、辛そうで。翼は何とかしたいと思っているけど、天童さんは、翼の助けは望んでなさそうです。天童さんの、やっぱ来るんじゃ…の後は、来るんじゃなかった、と続くと思いますが、それは、アリザワ先輩に向けられた一言ですよね?

アリザワ先輩は、外で奮闘しているっぽいですが、このあと、なんか絡んでくるのでしょうか。橘君ともテニス部の関係か何かで知り合いっぽいですし。。。

とりあえず、今回もキスシーンはまだみたいです!!

カカオ79%【ネタバレ/伏線回収班】

旅館の倉庫で翼に話すモブ男の話→『カカオ79%』64:旅行(3)【あらすじ&感想】

天童さんの部屋で、殴られる翼の話→『カカオ79%』106:恋する乙女たち(5)【あらすじ&感想】

浜辺で愛ちゃんと呟く翼の話→『カカオ79%』62:旅行(1)【あらすじ&感想】63 『カカオ79%』63:旅行(2)【あらすじ&感想】

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