『カカオ79%』142:他人の事情【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ&感想142話】~残り21%の甘さ~

142:他人の事情

カカオ79%【あらすじ】

劇の1部と2部の幕間。舞台裏はバタバタしていた。
「次―!ジュリエットとティボルトの出番!早くー」
「ジュリエット髪飾り早く!」

委員長が、クラスメイトに肩を支えられながら、舞台裏に戻ってきた。
「委員長もう休めよ、十分頑張ったよ」
「保健室に運んだ方がいいかな」
そして、この後のことを考え、みんなが天童さんの方を振り返る。

…で

これがロミオになるのか…

「あ、あの、顔のところちゃんと出した方が…」
天童さんに恐る恐る話しかける生徒もいた。

***

舞台裏は、バタバタと雑然としていた。

「この場面さ、ちょっとこう変えて、ロミオの…」
「わかった、覚えとく」
脚本&ナレーターのモブ男と役者が打ち合わせをしている。
「水どうぞ」
「どうしよ、緊張する~」
「この木下げといて!」

どうも劇の2部を前にしてみんなの不安が増してる気がする文化祭の最中です。

翼は、1部があんあんだったから、と緊張した面持ちで周りを見渡した。
「!手伝う!」
翼は、作り物の大道具の木を運んでいた大道具係りの女子生徒に声をかけて、手を伸ばした。木の反対側を持つ。
「あ、ありがとう」
彼女は、突然声をかけてきた翼に、少し驚いたようだったが、すぐにお礼を言ってくれた。
「ううん、私も一応大道具係なのにごめん」

そしてそこには、自分の責任もある

「よっしゃー!2部も頑張ろうじゃない。1部も何とかなったし2部も何とかなるって!」
翼が、周りのクラスメイトに対して、少し大きな声を出す。
「そうだね、2部には盛り上がる場面も沢山あるし」
「なるようになれだな」
「思ったより受けてる気もする。笑い声とか聞こえてたし」
「ただバカにされてるだけかも(笑)」
周りのクラスメイト達も、次々に応えてくれる。

翼は、両手を握り締めて言う。
「そう!最後にキスシーンも…」
そして、赤面して気が付く。
「あれ?そう言えばキスシーンってどうするんだっけ。なんか修正するとか保留とか言ってて、練習の時には「ただ見つめる」で済ましてたね」

「いや、やるんでしょ!一番の盛り上がりだし」
「ぶっちゃけこの劇の見所はもうそこしかないんだから」
クラスメイト達のじーーーーーという線攻撃を感じ、翼は冷や汗をかく。

「これより「メガネロミオとジュリエット、そして…」の2部を始めます。皆さま席に…」
体育館に放送が流れる。

「き、気合入れるぞー!」
翼は、声を出す。
「おー!」
周りも応える。

先程からの翼の様子を、勇はジュリエットの姿で少し離れたところから見ていた。

自ら墓穴ほって…

ちょっとだけ呆れているようだ。ため息をつく勇の横には、全身タイツは脱いで、ロミオの衣装になった天童さんがいた。
周りの人達が常に笑顔でいてくれないと不安になる病気にでもかかったのか、見ているだけで疲れる」
天童さんが言った。
「そこが可愛いんだろうがこの無愛想娘よ」
勇の答えに、天童さんは少しイラっとしているようだ。

「委員長のことで色々責任感じてんだろう…だから何の気の迷いかは知らねぇけど…最後までよろしく頼むよ、メガネロミオ」
勇は気にせず言う。
「自分でやると言いだした以からには最後までやる。借りを返さないといけないから」
天童さんはそう言った。
「借り?何の?」
勇は怪訝そうに聞く。

翼はクラスメイトに促され、勇と天童さんの二人が話している舞台袖へスタンバイしに向かっていた。

「それにこれは自分のためでもある。私に悪くない状況だ」
天童さんは言う。

離れたところで、ウサギの着ぐるみ姿の橘くんが、両手を握りしめて悶えていた。ああ、どうか無事に終わりますように、と。

勇は、天童さんを見ながら考える。

?悪くない状況?こいつこんなに素直なやつだっけ?何か企んで…

…………あ?こいつまさか…あ…?

***

勇は、いつかの雨の日、バイト帰りの天童さんを傘に入れてバス停まで送って行った日に天童さんが言っていたことを思い出す。天童さんは、あの時、なかなか翼に告白しないヘタレの勇にあの提案をした。

「じゃ何とかしてよ!!」
「私たちが仲良くなって橘と綾野さんの気を引く」

***

そして勇は、ここしばらくの天童さんの言動と動機が繋がった。
「!お前まさかあの時の…?!」

「はーい、お嬢様出番よ」
話し込む勇をクラスメイトは強制的に連れて行こうとする。離れ際に勇が見た天童さんの表情は、泣き出しそうだった。天童さんのすぐ隣でスタンバイに入った翼も、その天童さんの表情を見た。

自分のやってることが無茶苦茶で

自己中なことだとわかってる

周りの迷惑なんて知ったこっちゃねぇ

私の優先順位一番のためなら

他は全部諦めていい

***

第2幕が始まった。モブ男のナレーションが始まる。
「パリス伯爵がロミオとジュリエットの結婚について語っていた時、ジュリエットは従兄弟であるティボルトに相談してましたー」
舞台上では、ティボルトとジュリエットが演じている。
「何?ロミオと結婚だと?ふざけてんの?ジュリエット?」

「彼は、モンターギュー家が大嫌いだったため、やはり反対。ジュリエットを責めはじめました」

客席では、
「あら、2部は何だか深刻な雰囲気ね」
と、驚きの声が上がっていた。

「お前が今やろうとしてることは、お前を愛しているこのキャビレットの人達を裏切ることなんだよ。ずっと君だけを想ってくれたパリス伯爵に悪いとは思わないのか?」
とティボルト。
「でもロミオを愛している私がこの気持ちを隠してパリス伯爵と結婚してしまうと、それは自分とパリス伯爵に嘘をつくことになるわ。それにロミオを傷つけて…」

***

翼は天童さんの横で、天童さんのことを考えていた。

天童さんのさっきの顔、一瞬だったけど何というか…泣きそうな顔だった

どうしたんだろう、勇と何か話していたように見えたけど

気になる気になる

でも聞けないでも聞けない

そう思いながらも、翼はチラッと天童さんの方を見る。天童さんは、真っ直ぐ前を向いていた。

***

舞台上では、ティボルトとジュリエットのシーンが続いていた。
「「愛」がすべての免罪符になると思ってんのなら大きな勘違いだ、ジュリエット」
ナレーターのモブ男は、冷たい視線で舞台上を見つめている。

「…私の知ってるロミオとジュリエットにはこんなセリフなかった」
天童さんが翼に呟いた。
「あ、これはリメイクしたものだから…」
翼は、急に話しかけられ、慌てて答える。翼は、天童さんがロミジュリの内容をちゃんと知ってることに、失礼ながらびっくりしていた。

そうよね、他の部分はともかくここの台詞回しは

…あいつの考えてることがより強くにじみ出る場面というか…

翼は、橘君の旅館で、モブ男と倉庫に閉じ込められた時にモブ男から聞いたモブ男の家庭事情を思い出していた。
「おかげで親は離婚、周り、親戚共には後ろ指をさされまくり。永遠の愛なんか存在しないと言っても結婚したからには義理と責任で家庭を守るべきじゃない?」

***

「それは…周りへの迷惑も考えずに何代にかけて揉め事起こしている家柄の人が言えることではないと思います」
と美しいジュリエット(勇)が言う。
「ロミジュリでそのセリフ言っちゃうと身も蓋もないからやめようか」
「あなたのセリフもだよ」

袖では天童さんに声がかかる。
「次、ロミオ出番です」

その言葉と共に、天童さんが、翼に、
「許してもらえると思って好き勝手やってんじゃねぇんだよ」
と言い残して、舞台上へと歩いて行った。

「ティボルトの言葉でジュリエットはロミオとの結婚をもう少し考えてみることにします。しかし悩んでいる間にも、悲劇が起きてしまうのです!」
と、ナレーション。

「こーれはこれは、モンタギュー家のロミオ君じゃないですか。本体はどうしたんですか。何見てんだよ、メガネの鼻パッドとるぞコラァ」
ロミオの横で、友人マキューシオが応酬する。
「ああん?お前それメガネかけれなくなるだろう。ふざけてんのか?それ死ぬぞ?メガネ死ぬぞ?メガネが本体に決まってんだろうがコラァ」

「道でばったり、キャピュレットVSモンタギュー、ビックマッチの始まりです!」
ナレーションがあおる。

「テメェら舐めんじゃねえよ、うちのロミオさん、マジパネェから、パネェットつったらパネェから。本体も倒して、その名前乗っ取った方なんだぞ?マジパネェか…ホゴっ…」
ティボルトが、腕を振り回した。シューという音とともに、ティボルトは斬られたようだ。
「おーっと最後まで言わせてくれない、キャピュレット家のティボルト、ロミオの友人マキューシオを斬る…!」
ナレーションが説明する。

「身も蓋もないこと言うから、あとうるさい」
とティボルトは剣をふきながら笑顔で言った。
「怖い!この男怖い!笑顔でジュリエットに説教してた時から怖かった…!そして、ここで親友の死を見てたまらずロミオ、ジュリエットの従兄弟であるティボルトを斬るー!!」
ナレーションに合わせて、天童さんもティボルトに剣を振った。

「テメェも何身も蓋もないこといってんじゃねぇよ。偉そうに言えば全部正解だと思ってんのかよ。誰かを必死で好きだったことはあるのかよ坊や」
天童さんが、突然話し出した。ナレーションがすかさずフォローする。
「急に語りだした!何とロミオが好きを語っています!やっと恋物語っぽくなってきました!でももう少し親友の死を悲しみましょうか」

観客は、一同、身も蓋もねぇ、と思っていた。最初からそうだったけど。

「この騒ぎで結局ロミオは永久追放を喰らってしまいます」

翼は、驚きの眼差しで舞台上を見ていた。勇は舞台上から、一番後ろで立ってみていた、ウサギの着ぐるみを着た橘君を見ていた。

橘君が、ウサギの着ぐるみのまま腕を組んで、舞台上を見つめていた。その表情は、何を考えているかわからない、そんな顔をしていた。

ToBeContinued

カカオ79%【感想】

勇が天童さんに翼のことをかわいいとのろけていました。テレもせず、さらっとこういうことが言えてしまう勇は、さすがですね。天童さんは、無言でスルーしてました。返す言葉がない感じですかね。勝手に言ってろ的な・・・。でも、翼の空回りというか、周りの顔色伺っているところに、天童さんはちゃんと気が付いていて、特に気合が入ってるから、勇に聞いてみた。天童さん語だから、文脈は批判しているように聞こえるけど、心配してることがわかり、ほっこりします。優しいですね、天童さん。

最後の橘君の表情、読み取れません。でも、橘君は天童さんの気持ちに気が付いているはず。そして、舞台上で言った天童さんの言葉。きっと受け取った上でのあの表情ですよね。。。橘君の闇も深いです。

天童さんの言う「借り」は何のことだろう。翼に対しての、自分のクラスの子に手帳渡すときに言ってくれたこと???を借りだと思ってるのでしょうか。今回、はっきりは分かりませんでした。

モブ男の考え方が反映されている劇のはずなのに、色んな人の過去や現在の状況とリンクする部分が多くて、関心しますし、混乱します。「愛は全ての免罪符になならない」という言葉は、実際はモブ男の母親に向けた言葉だとされていましたが、勇と翼に対しての言葉でもあり、必死で恋する天童さんも見過ごせない言葉でありますね。翼に対してと言うのは、事実だけ追うと、逆恨みの感じもしますが感情的な話です。

でも、実は、最初に「愛をすべての免罪符に」しようとしたのは、愛ちゃんも変わらないと思います。結果、翼に怪我をさせてしまった。その後の勇の対応やいじめの件は、確かにやるせない出来事でしたが。。。モブ男はその辺はどう思っているのでしょうか・・・

カカオ79%【ネタバレ/伏線回収班】

「!お前まさかあの時の…?!」のあの時の提案の話→『カカオ79%』89: 必死(4)【あらすじ&感想】

翼がモブ男から聞いたモブ男の家庭事情の話→『カカオ79%』64:旅行(3)【あらすじ&感想】

 

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