『カカオ79%』162:招かざる客(3)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想162話】~残り21%の甘さ~

「じゃ・・・早く元気になって、また学校で」

そう言って翼は階段の方へと歩き始める。
「おい!!翼・・・!」
と、勇が翼に声をかける。

お粥が入ったバッグを渡されて、天童さんは立ち尽くしていた。目は、帰ろうとする翼を追っていた。その瞬間、天童さんは、渡されたお粥の入ったバッグを振り上げた。思いっきり翼の方に投げつけようとしたが、天童さんの振り上げた腕は、ガッと勇が右手で掴んで止めた。

「落ち着けヤンキー女!後で後悔するようなことはするな!
勇が天童さんに言いながら、お粥のバッグをもう一度抱えさせた。
「捨てんなよ、捨てんなら中身はちゃんと食ってから捨てろ。俺らからってのが気にくわねえのなら蛍からってことでいいから」
勇は言いながら、天童さんの様子に、この荒れ具合…まさか、と考えていた。

「そして早く正気を戻せ。そしたら橘と何があったのか、愚痴ぐらいは聞いてやるから」
勇は、持っていたコンビニの袋も天童さんに持たせた。話している間に、翼はアパートの階段を下まで降りていた。天童さんは、勇から顔をそらして、ひどく傷ついた顔をしていた。

…やっぱりこいつ橘に…?

「じゃー、しっかり食ってやすんどけよ」

***

勇は先に行く翼の後を追いかけた。
「翼」
翼は前を向いたまま反応しない。
「おーい、ゴーリーラ―!泣くなってー」
と勇が言うと、翼がガン泣きした顔で振り返った。
「泣いてない!!」

「泣いてんじゃん、何で嘘つくの」
振り返った翼は、勇から少し視線を外しながら話し始める。
「天童さんに嫌われてるのはとっくに知ってたし、今日だって門前払いされる覚悟で挑んだわけだし、だから…」
翼は、話しながら、中学の頃、愛ちゃんに拒絶されたあの日の放課後の教室の光景を思い出していた。

拒絶される
衝撃と痛み

でもその後そこで手を放してしまった後悔の方が
辛いって分かっているから

「うわあああああ!やっぱムカつく!!あの元ヤン!!」
翼は突然、頭を振って大きな声を出す。
「ちょ、夜!夜だから!叫ぶなって!!」
勇が慌てて諌める。

「本当は少しは友達になれたんじゃないかなって、最近思ってたんだ…っだから、何を言われようがこっちが諦めないでいればいつか心を開いてくれるんじゃないかって、そう思って…」
翼はしゃがみ込んでそう続けた。勇もいっしょにしゃがむ。

そう思って
ずっと私の気持ちばかりを
一方的に押し付けていたのか…

心の底から私の顔なんか見たくみなかったかもしれないのに
しつこくしつこく
付きまとって

あの拒絶は本心じゃなかったんだ
って答えを天童さんからもらいたかったのかもしれない

ああやっとわかった
愛ちゃんへの手掛かりが見つかったのかもしれないのに
勇に知らせるのが怖かったり
どこか躊躇していたのは

私、愛ちゃんに会いたくなかったんだ

一度拒絶された私が
しかも勇のことが好きになって
その挙句付き合っているというのに
今更私に愛ちゃんと会う資格なんてあるのかな

「私、もう天童さんとも終わりなのかな」
翼は、声を上げて泣き出した。

勇はそんな翼の泣き顔を見つめる。

「とも」ってやっぱ夏目のこと思い出してんのか
…橘とヤンキー女の間に何かあったのかもしれないと聞いた時に
気付くべきだった…

そしたら今日ここへ来るのを止めたはずなのに

勇は、翼の手を取って立たせた。
「…あいつ相当熱あるっぽかったからきっと正気じゃなかったんだよ。元から口の悪いやつだったし今日は元ヤンがヤンしただけの…」
勇は、別れ際の天童さんのひどく傷ついた表情を思い出した。

夏目の拒絶は本心じゃなかったに決まってる
そしておそらく
天童も…

***

天童さんのアパート。お粥の入ったバッグとコンビニの袋を布団の上に無造作に置いて、天童さんは布団の上に座り込んでいた。目はうつろだった。文化祭でもらった黄色い風船が一つ、部屋に浮かんでいた。天童さんはカーテンの隙間から、外をみた。夜、だ。

幼いころの天童さんは、ゴミ袋や脱ぎ散らかった服が散乱した部屋で、布団の上に一人座り込んでいた。窓の外からは、日の光が差し込んでいた。赤と白の風船が一つずつ、部屋には浮かんでいた。

幼い天童さんは、風船の紐を両手でつかんだ。そして、一人呟く。
「…………家族…」

幼い天童さんの表情はうつろだった。

to be continued

 

 

カカオ79%【感想(ネタバレ有)】

天童さんのやり場のない怒りと辛さが痛々しいですね。文化祭で橘君と天童さんに何があったかを知らない翼たちには、このタイミングで2人揃って天童さんのアパートに押しかけたことは、善意こそあれ一切の悪気はありませんでした。
でも、一緒にいったことで翼と勇はうまく行ったことを天童さんが察したこと、そして、天童さんをフッた橘君が翼のことを好きかもしれないということ(少なくとも初恋の相手)、そのことを天童さん自身が知っていることが、天童さんの翼への暴言とおかゆを投げつけようとした行動に繋がったのだと理解できます。
でも、今まで人のことなんて気にも出来なかった勇が、ちゃんと天童さんの状況と気持ちを察していて、フォローしてくれていて、ホッとしました。それまで幼馴染に片思いしていたというところで同じ立場だったことや、天童さんのバイト先で起きた出来事で天童さんの過去を少し知ってしまったっているというところで、翼よりも気持ちの距離が近いようですね。「愚痴ぐらいは聞いてやるから」と言った勇は、今や天童さんの一番の友達であり、理解者なのではと思わずにはいられません。
でも、翼がこんなにも傷ついているのは、過去の愛ちゃへのトラウマがあったわけで、そのことは天童さんは知らなくて。天童さんは登校日以来、それなりに翼のことを拒絶したり遠ざけてようともしていたわけで。2人とも不器用だし鈍感ではあるけれど、悪意はないからこそ、辛いですね。
今回の最後からすると、次回から、どうやら天童さんの過去編が始まりそうですね。家族のこととか、壮絶な過去を持っていそうで心配ですが、今までベールに隠されていた部分もありますし、橘君との幼馴染みとしての関係とかもわかるのかなかと思うと、楽しみでもあります。

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