『カカオ79%』57:壁【あらすじ&感想】

スポンサーリンク
カカオ79% カカオ79%
スポンサーリンク

web漫画/カカオ79%【あらすじ&感想57話】~残り21%の甘さ~

 

57:壁

【あらすじ】

きゃあああああ!
どこかから聞こえた悲鳴に驚く委員長にびっくりした翼が、すぐ後ろにいた勇の顔面に後頭部をぶつけてしまう。謝りながら振り返ると、ぶつかったのが勇で、鼻血を出してしまっていた。

隣では、委員長が悲鳴の出所を発見し、
「血ぃぃぃぃ!!」
と叫んでいた。

その声にまた翼と勇も驚く。翼はとっさに勇の頬を両手で挟んでいた。

委員長の視線の先には、怒りで目が座っている天童さんがいた。勇よりも豪快に鼻血を出している。

「そっちが先に殴ってきたからここからは正当防衛で」
驚く委員長と固まる翼と勇。

翼は出会った時から、今までの、そして目の前の天童さんを思う。彼女の第一印象はどこか不思議な感じで優しそうな子だった。まだ知らないところが多いけど、思ったよりサバサバしててはっきり物事言う人だと最近気づいた。

そして今、天童さんは、女子生徒の胸ぐらをつかんでいた

「はあ?!ちょっと!あなたが先に腕を掴んできたからそれを振り解いただけ…」
「その手にぶつかって鼻血出してだろうが。どう落とし前つけてくれるつもり?」

相手は反論しながらもおびえている。天童さんが拳を振り上げたところで、翼が止めに入ろうと天童さんを呼びかけたが、それよりも早く動き出したのは勇だった。

「あのバカ女が」
翼は、えっと少し驚く。

勇が天童さんの腕を引っ張り、動きを制止した。
「おい、やめろ!何してんだよ。ここ学校だぞ?!お前鼻血出てるぞ?!」
天童さんはばっと勇に振り返ると、勇めがけて殴りかかってきた。天童さんの拳をすんでのところでかわす勇。

「おいやめろつってだろ。こーゆーの橘君に見られたら困るんじゃなかったっけ」
「橘は今日家族旅行で休みだ」
座った目のまま天童さんが答える。
「…かすってもないのに鼻血を出させるなんてこれが私の真の力」
「うっせぇよ!これ元から出してたやつ!てかお前も出してんだろうが鼻血」
天童さんと勇がやりとりしている横で、翼は、相手の女子に大丈夫?と声をかけていた。

騒ぎを聞きつけたのか先生が近づいてきた。勇は天童さんを無理矢理引きずりながら、
「翼!その人連れて来い!」
「逃げるに決まってんだろう」
翼は思わず言われた通りに、女子の首に腕を回し捕獲。先生の対応は、うまく委員長がごまかしてくれた。

***

全員が体育館へ行った後の人気のない校舎の廊下で、4人は座り込んでいた。まだ女子に敵意を向ける天童さんを勇は制止しながら、保健室に行くことを提案する。
「なんで私まで連行されないといけないのよ!?私は被害者だよ!」
女子が翼の首にしがみつきながら、言った。
「被害者が容疑者かは話を聞いてみないとな」

その女子が言うには、天童さんを心配して話しかけてやったとのこと。教室にいなかったから、道に迷っているのではと思い、そのまま朝礼だから一緒に体育館に、と誘ったら、バイトで休みの許可を取りに来ただけど断られた。

朝礼の後に、みんなで文化祭のことを決めるから、と言った彼女に天童さんは、興味がないと答える。

「ちょっと!天道さんの興味の問題じゃなくて役割分担とかあるから!橘が絡まないとやる気も出ないわけ?!他人のことをいつも散々無視してるくせに橘にだけ優しくしてそういうの橘にも迷惑ってことそろそろ気づいたら?」

「そんなのあなたが決めることじゃ…!」
翼は思わず反論するが
「あなた達もね、悪いこと言われる前にあんまり近寄らないほうがいいと思うよ。この元ヤンキーの人とね!」
「先生たちも目つけてるんだよ。人生の道で迷ってる迷子の迷子の天童さんつって!!」
という言葉の前に言葉を失ってしまう。

勇から解放された天童さんが、女子に向かって近づいていくが、 そこで勇が口を挟んだ。

「それが何」
元ヤンだろうがなんだろうがそれが何? こいつの態度も悪かったけどそっちも失礼な発言してるし、どっちもどっちだと思うんだけど」
「そう、その人がどんなに乱暴な人なのか知らないからそんなことが言える…」
「それはよく知ってるよ。すげーあぶねー奴ってことも」

思わず静止して、そして押し黙る天童さん。翼は勇のことを見ている。
「そんな奴のことを心配してくれたのか?すげえ優しいな、お前」
そう言いながら、勇は天童さんに傘をさし出した時のことを思い出していた。

女子が赤面した。

***

保健室。翼と勇と天童さん。

先生は体育館に行っておりいない。あの女子は、勇の言葉に赤面して逃げていったようだ。

鼻血の2人は、鼻を押さえながら会話をしている。

ふいに翼が話し出す。
「天童さん私ね、自分が幼馴染の荷物になってると思って距離を置こうとしたことがあるんだ。」
「そう言ったら橘君が、今までの思い出全部荷物になっちゃうからそんな言い方しないでって言ってくれたんだ」
「だから橘君は天童さんのこと迷惑だとか絶対思わないと思う」
天童さんは無表情のまま答える。
「…それ慰め?でも説得力ないんじゃないの?結局距離を置いている人に言われても
勇が、確かに、と思いながらも、横で黙っている。
「別に頑張って味方してくれなくてもいいよ、あの人の言った 言葉は全部事実だし」
「ああゆう風に見られるのも、言われるのも、慣れてるから綾野さんが気にすることは無い」

また壁を貼られる。

これは、明らかに、翼には関係ないと言う拒絶に聞こえた。

翼の頭の中に思い浮かんだのは、中学校の頃の愛ちゃんの言葉。
「余計なお世話よ もう全部…うんざりなの」

先程の委員長の言葉。
「誰の機嫌をそんなに伺ってるんですか?綾野さんって優しすぎますよ」

違う。失うかもしれないと思って何一つぶつかって見ようとしなかっただけ。

愛ちゃんの顔が浮かぶ
傷つけたくない

橘君の顔が浮かぶ
嫌われたくない

目の前の勇と天童さん 
失いたくない

と思って自分を守ってたんだ。でもそんなことどうでもいいと思ってしまうくらい、今、この頃壁を壊したいと思った。そうすると外の壁も強せる気がしたんだ。

「嘘。さっきあんなに怒ってたくせに。傷ついたくせになんでなんともないフリするの?」
「慰めてもらえばいいじゃん…私に」
勇は黙って聞いていたが、頑張ってるのはわかるけどその翼が可愛くて、必死で笑いをこらえていた。

「何の解決にもならない」
と天童さんは言い放つ。
「天童さんの気持ちが少し楽になるかもしれないじゃん!!」
「私だって!かばってあげたり、言い返してやりたかったのに…」
「なんでこいつだけ!!」
翼がちょっと語調を強めると、勇と天童さんが同時に反論する。
「かばってねーよ!」
「頼んでないよ!」
自己満だと指摘する天童さんに、翼はそれをあたり認める。
「そうだよ!私が慰めたいだけだよ!!」
「心配だから!!友達だから!!」

天童さんが静かに答える。
「…友達?そういえば頼まれただけ友達ごっこ」
翼が友達ごっこに不思議そうな顔をしていると、
「詳しくはそこの心配性の誰かさんに聞くが良い」
「それ、ここまでにしてもらう。これ以上勘違いされても困るし」
「悪いけど友達だと思ったこと1度もないんだ」
天童さんは、そう言うと、翼の制止も聞かずに、保健室を出て行ってしまった。

ベッドの上に腰掛ける勇は、翼の名前を呼びかけるが、翼を見て、息を飲む。

翼は勇のティッシュを持ってる手を手に取り、勇の顔を覗き込んだ。軟膏を手に取り、勇の鼻にやさしく塗る。そして、鼻の付け根に絆創膏を貼る。

静かな時間が流れていた。勇の伸びた前髪を、上に書き上げて、左手を構える。
「えっちょ…」
勇の心の準備が完了したかどうかはわからないが、その直後、ドゴーンというデコピンの音と勇のギャアアアアという叫び声が誰もいない校舎の廊下に響き渡った。

バタンとベッドに倒れる勇。勇のおでこと翼の中指腹は湯気があがっていた

「さて頼まれたってどういうことだ…?」
「説明しろよ。今すぐ」
 

To Be Continued

【感想】

天童さんの本性に度肝抜かれました。でも思い返してみれば、辻褄が合うことばかり。口が悪いのも、強引なところも、周りの人の反応も。それがむしろ、ヤンキーが恋をすると、変わるんだって、恋の力ってすごいなーって、逆の意味で思いました。

それから、ずっと話していなかった勇と翼がどさくさに紛れて会話しだしました。翼が勇と天童さんの心理的な距離が思ったよりも近いことを感じている時の表情が印象的でした。

仲良くなりたい翼と、壁を貼る天童さん。傷つく翼。傷つく翼は、勇に優しく手当てをしてキスをするかと思ったら、超弩級のデコピンをしてました。ある意味不意打ちでした。

 

【ネタバレ/伏線回収班】

★ここに注目★
・雨の日、泣く天童さんに勇が傘を差し出している
・天童さんは文化祭に興味はない

コメント