『カカオ79%』58:爆発【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ&感想58話】~残り21%の甘さ~

 

58:爆発

 

【あらすじ】

われかけたメガネを拾う天童さん。翼のことを考えながら塀をよじ登る。翼は、自分のことを心配だから、友達だからと言っていた。何も知らないくせによくもあんなことが言えたもんだな、と思った。無条件で他人に優しいなんて信用できない。

今まで元ヤンだったこと、両親のことで、散々周りに陰口を叩かれた。それでも、かわいそうだから優しくしてあげよう、と言われたりました。橘以外は。

中学の頃、ヤンキー仲間とつるむ天童さんに、橘君は屈託なく話しかけてきた。再会の時だ。

私に慰めてもらえばいいじゃん、といった翼。元ヤンだろうが何?とかばってくれた勇。お願いだからこれで仲直りして、付き合うなりなんなりしてほしい。

塀から天童さんが飛び降りると、目の前に担任の先生が立っていた。職員室でアルバイトの許可証に印鑑をもらう。担任は、この後の文化祭の会議には参加できないのか聞く。

天童さんは面接なので、と。先生は仕方ないなぁ、とでも言いたげにため息をついた。

「お前らの歳でしか楽しめないこともたくさんあるからそういうのも大事にしたほうがいいぞ」
天童さんは素直に返事をした。

「あと、問題起こしたらバイト全面禁止だ」
これにも素直に返事をするが、破れているメガネと制服のブラウスに着いた時で、説得力がなかったのか、先生は、もう一度言った。
「全面禁止な」
そして先生は、傘を持っていない天童さんに、適当な傘を貸した。天童さんはこれにも素直に応じた。

***

保健室の翼と勇。

勇は、天童さんに言われた「やり方間違えてんじゃない?」を思い出す。

勇が何か言い訳をしようとするのを聞かず、翼が聞く。
「頼んだ?」
はっとする勇。
「ほんとにあんたが頼んだ?」
「…頼んだ」

厄介な宝物。ゆっくりと傷つけないように見守ろうとした決心は汚い欲望と焦りでいつの間にか消え去ってしまった。

翼が保健室を出て廊下を走りだした。
「翼!待って…!」
「ちょっと話を…!」
捕えようとする勇の手を翼は払った。
「夏休み中は全力で避けるんじゃなかったっけ?」
追いかけてきた勇は息を切らしながら応える。
「天童のやつにお前の友達になってほしいと頼んだのはその避けてる間のお前が心配だったからだよ」
「今日全然避けてないじゃん」
「登校日だから」

一瞬翼が固まった。そしてそこから、勇を蹴り、校舎の外へ。雨が降っていることも、パンツが見えそうなことも気に留めず、一心不乱に勇を蹴る。
「ふざけんなよてめえこら!!人が真剣に悩んでんのになめやがって!!」
勇はひざまずいている。

「あんたがちゃんと考えて会いに来いって言うから、こっちも全力で避けてたのに何太々しくちょっかい出したり話しかけたりしてんだよ!!」

「私が頭抱えて悩んだのもの達を、そうやって一瞬でどうでもいいことに…!」

いつの間にかあんたの方が、私より天童さんと仲良くなってるし、どうすればいいのかわかんなくて、頭真っ白の時に答えは自分が出すから会いに来いとか偉そうなこと言うし、全部覚えてたくせに、起きてたくせに知らないふりして、そのくせにタイミングよくばらして人をバカにするし、どうすれば私たちの関係を壊さずに行けるかヒヤヒヤしてたらなんともない顔で軽くキスなんかするし…!」

勇がそこで立ち上り、翼に近づいていった。
「軽い気持ちでキスしたことなんか1度もない」
翼は勇を見る。

勇も翼を見つめている。

「一度…つってあんたやっぱりどっちも覚えてたんだね…!!黙って覚えてないフリしてなかったことに…」
翼がそう言いかけて、自分が勇に、なかったことにしてください、と言っていたことに気がつく。あの時、勇は、翼がそう言うと思って、先になかったことにしてくれていたのだ。

「俺が今日話しかけずに黙っていたら、お前は夏休み終わるまでずっと避けるつもりだっただろう?」
「このままなかったことにするつもりだったじゃん」

翼は、先ほどよりは冷静な目で勇を見ている。

つまりこいつがずっと、先に悪い結果を全部予想して予防線を張って…自分の方へ向かう道だけを残して…ずっと私が見えないフリをして逃げてきたから

翼は思い出す。

家族のいない勇の家に泊まると言って、帰るように言われたこと。

肝試しの時、怪我をした翼を簡単に背負った勇。

1度目のキス。

2度目のキス。

小学生の頃のバレンタイン。勇が花をくれたこと。

こんなに変わってしまった私たちを

必死に知らせようと

ずっと

叫んで

叫んで

思わず泣きそうになる翼。

多少傷つけてもいい、自分で俺の方へ転がってくるように、そう思ってしまった。

勇は泣く翼を目の前に、少しだけ話を戻す。
「…ごめんでも天童のやつああ言っても絶対本心じゃないしむしろ前のことを結構気に入って…」
「天童さんに好かれてないのは自分でも気付いてる」
「自分が嫌われていることがぐらいわかるっつってんだよ!!てめえゴミの妖精なめんなよ!!最後大魔王に進化するからな!?」
勇はゴミの妖精のくだりは、なんのことかわからない。が、胸ぐらを掴んできた翼の迫力が伝わっている。

「私は…確かに1人でろくに友達も作れない馬鹿な奴だし、無神経なことひどいことあんたにもさんざん言ってきたやつで自分の見たくないものは見えないフリして逃げてきたくそな奴だけどそれでも自分の人生、自分の気持ちが自分で考えて自分で答えを選ぶよ!!あんたが全部決めてくれなくていい!!天童さんの本心は自分で確かめる!!」

「…今私を寂しくさせてるのは天童さんじゃなくてあんただよ…」

翼はつかんだ胸ぐらの、手はそのままに、勇の胸に顔をつける。勇は、何も言えない。

「いっぱい、傷つけちゃってごめん。でもやっぱりこんなに変わってしまったのが寂しいんだ」
「一緒にじゃれあって笑いあって話してたのが心地よくてそれが全部なくなるんじゃないか不安怖くて」
「なのにあんたと天童さんがすごく仲良くて、まるで私たちを見ているようで」
「寂しくて寂しくて」
「…そこは私のいた場所なのに」

「私の」
「勇なのに」

そう言うと翼は、びっくりして、勇の襟をぱっと離す。勇も驚いた顔をしている。

翼は悔しそうに奥歯を噛み締める。
「女の子じゃない私はもういらないのか?!」
それを聞いた勇は、思い詰めた表情する。

後ろの廊下から、生徒たちの声が聞こえてきた。勇が、腕を翼の頭に回し、自分のほうに引き寄せた。2人は完全に外に出てドアを閉めた。行き交う生徒たちは、2人には気がつかなかったようだ。

***

天童さんは校舎を出て、先生から借りた傘をさす。先日、勇に、傘に入れてもらったことを思い出す。

***

ドアの外で、勇と翼が抱き合っていた。

 

【感想】

言った後にびっくりしていましたが、翼が「私の勇」と言っていました。好きとか恋とか男とか女というのに抵抗はあれど、素直にやきもちとか独占欲とかがあることに気がついた感じでしたね。

ずっと避けたり、思ったこと言えなかったりしてきたけれど、不器用な翼が勇に言いたいことを言えて、ぶつけられて、泣きそうになりました。

翼の話を聞く勇の表情もせつなげで、翼が大事で大事で仕方がない感じが伝わってきて、最後、お互いが互いを抱きしめてくれて、本当によかったです.

 

【ネタバレ/伏線回収班】

★ここに注目★

・ゴミの妖精は大魔王に進化
・雨の日、勇は天童さんに自分の傘を差し出している。

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