『カカオ79%』163:迷子(1)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想163話】~残り21%の甘さ~

天童さんの回想。

私の親は世間で言う
「クズ」そのものだった

ボサボサの髪に赤いランドセルを背負った天童さんは、俯いて歩いていた。
「聞きました?あそこのご両親、かなり荒れてるみたいよ」
父親はお酒ばかり飲んで母親は毎日別の男と遊んでるらしいって
「あらまぁ…それで子供は大丈夫なのかしら」
「それが毎日この辺りを何時間もうろついてるらしいんですって…」
大人たちが噂話をする。

「うわっ、天童クッサ!その服以外ないのかよ!」
教室でクラスメイトが天童さんを指して口々に言う。
「お前、今日チコクしたんだって?まさか道わかんないの?」
「あはははバカでしょ、それは」

近所でも
入学したばかりの小学校でも
いい扱いはされなかった

「ほら飯」
缶ビールを片手に持った父親に、袋に入ったままの食パンを放られる。天童さんはそのパンを両手で拾い上げた。

家に帰ったところで
扱いは変わらず
それが当たり前の日常だった私の前に
橘が現れたのは
小学校2年の夏が始まる頃だった

***

よく晴れたある日、ランドセルを背負った天童さんは、黒いランドセルを背負った同じくらいの歳の少年とすれ違った。すれ違いざまに少年は振り返る。子供のころの橘君だ。

「おーい」
橘君が呼ぶ。天童さんは振り返らない。
「おーーーーい」
もう一度呼ぶが、天童さんはそのまま行ってしまう。橘君はダッシュで来た道を引き返した。そして、天童さんの赤いランドセルを後ろから叩いた。天童さんは驚いて振り向く。息を切らしながら、橘君は言う。
「ま…待って、きみ…ど、どこ行くの?が、学校…そっちじゃなくて逆…!」

「俺、同じクラスの橘!君は天童さんだよね?話すの初めてだ~」
学校へ行くまでの道で、橘君はにこやかに話しかけてきた。
「いやあ、毎日遅刻してるからどうしたのかなと思ってたけど、まさか本当に道がわからなくてだったとは!」
天童さんはうつむいたまま、返事をしていないが、橘君は構わず話を続けた。
「そういうの、ホウコウオンチって言うんだって。学校から家が遠いの?俺ん家と一緒の方向なのかな」

その頃の橘は
少々うるさかった気がする

そして今と同じく
周りにはいつも人がいっぱいだった

学校に近づいてくると、周りにはクラスメイトが増えていき、橘君は声を掛けられる。
「よっ橘、はよー」
「おはよ、橘、昨日の新刊読んだ?」
「橘君おはよ」
「橘-!宿題やってる?」

そして橘君のすぐ側にいた天童さんに驚く。
「えっ、何で天童と一緒?!」
「たまたま!」
橘君は笑顔で応えた。
「えー」

***

教室で噂を聞きつけた男子のクラスメイトが、橘君は橘君ににやにやしながらからかう。
「ウェーイ橘~、今日、天童と一緒に来たんだって~?!」
他の男子もそれを聞いて吹き出す。遠巻きに、不穏な空気を感じ取っているクラスメイトもいた。橘君は一瞬、びっくりしたような顔をしたが、すぐに屈託のない笑顔を向けた。
「そうだよ!学校の前で会ったから一緒に来たの!」
あ…そう…とからかった男子はにやにや顔のまま、表情がはりついてしまう。
「それより昨日兄さんにこれ買ってもらったけど…」
橘君が話題を変えた。
「えっマジかよ!これ『パンチパンチ筋肉ウサギ』の新しいやつ…!」

初めてからかわれずに済んだ
そしてこの日がきっかけだったのか
周りが私になんか構う暇もなく騒がしかったせいか
橘の目を気にしてか
橘といるところで私が絡まれることはなくなった

その代わり、
橘本人に絡まられるようになったけど

「あっ、天童!そっちじゃなくてこっち!」
少し離れたところから、橘君が天童さんに声をかけた。

またある時は、隣を歩く天童さんが急に角を曲がり、橘君が驚く。
「えっ?!何で一緒に歩いてて違う方向にいっちゃうの?!」

橘君はいつでも天童さんに笑顔で話しかけてきた。
「天童ってすごいね。俺ここまで道に迷う人初めて見た!」
天童さんは答えない。
「これから見かけたら学校まで一緒に行く?」

天童さんは塀の隙間に入って行くこともあった。
「待って、どう見ても違う…」

バサバサバサと音を立てて木々の間を行ってしまうこともあった。
「え?!」

そして全く違う方向に走って行ってしまうときも。橘君はその度に驚きながらも、天童さんを呼び止めた。

どういうつもりで
私の道しるべを申し出たのかは
わからないけど
ただ単に学校までの道を案内してもらうだけだった
そのやりとりが

初めて
他人の親切というやらを味わう私には
程よいぐらいの心地よさで
随分戸惑っていたと今は思う

ToBeContinid

カカオ79%【感想(ネタバレ有)】

予想通り、天童さんの過去編が始まりました。が、予想以上のヘビーさです。ネグレクトだった天童さんの家。愛されてこなかった、中学のころから一人暮らし、など、確かに伏線はありましたが、思った以上でした。
そして、今のように強くない天童さん。方向音痴は健在でしたが、何を言われても俯いたままの姿が痛々しいです。

少年時代の橘君は、今よりずっと優しくて、天童さんが弱かったからかもですが、このニコニコした少年が高校生になると、天童さんにテニスボールぶつけて木から落とすようになるとは、その間の関係性の変化が気になりますね。

ただ、愛情も友情も親切も知らない子供の頃の天童さんが橘少年に恋をするには十分過ぎる環境ですね。

 

カカオ79%【ネタバレ/伏線回収班】

準備中

 

 

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