『カカオ79％』86: 必死(1)【あらすじ＆感想】

web漫画/カカオ79％【あらすじ＆感想86話】～残り21％の甘さ～

86: 必死(1)

86: 必死(1)

【あらすじ】

勇は自分の部屋のベッドで横になりながら、旅行中の出来事を思い返していた。布団の上で翼に言われた言葉。
「愛ちゃんとちゅーしてるの見た…」
そしてモブ男の名前、夏目くん。

考えてはいるが空腹でお腹が鳴り出して、考えがまとまらない。ご飯を買いに出かけようとすると、リビングで抜け殻となっている蛍に、蛍と光の分も頼まれた。

＊＊＊

時刻は夕方だった。横断歩道で勇は天童さんに会った。天童さんも勇に気がついた。
「なんだヘタレか」

旅行の帰りの夕方、一気に疲れが押し寄せてきた瞬間であった。

そのままスルーして勇の前を通り過ぎる天童さんに、勇が思わず突っ込む。
「おい、無視かよ!」
「私たちが仲良く挨拶を交わすほどの仲だったっけ?」
天童さんの返しに、勇は思わず納得してしまう。

勇と天童さんが会ったのは、登校日の保健室で、天童さんが翼に
「悪いけど友達だと思ったこと1度もないんだ」
と言って以来だった。勇が頼んで友達のふりをしてたとバラした時だ。それでも少し話をすると、天童さんは、旅行から戻ってきた橘君の所へ、渡す物があって向かっていたらしい。

案の定、真逆に向かっていたので、勇は結局送っていくことになった。
「…借りは、これで全ての借りはチャラにしてあげる」
と天童さんが言った。

「して、あげる?俺、何かお前に借りたもんあったっけ、オカシイなハハハ」
と少し茶化しながら勇が答える。
「なんた、人が一肌脱いで手助けしたことをなかったことにするつもりか」
「ああそういえばすげー手伝ってもらったな。おかげでスゲーことになっていたし、超感謝してるぜありがてぇハハハ」
勇は少しテンションがおかしいようだ。

そんな事は気のせず、天童さんが、どういたしまして、と言った。
「弱みを握られてたとは言え、実際助けてもらったわけだし、その借りはちゃんと返すつもりではあったから、馬鹿みたいな願いを終わらせてやったんだ」
淡々と言う。

勇は少し驚いた顔をした。
「翼に友達宣言された照れ隠しかなと思ってたけどもしかして俺のために…!?」
「どっちでもないわ、バカバカしくて見てられなかっただけだから。　あれは誰にも得がない状況だった。　あのままいたって綾野さんと私が本当の友達になれるわけでもなかったし、　お前がズバリ告白するようにも見えなかったし、上辺だけの平和、空っぽだけの関係が続いていただけだと思う」

2人は並んで歩いて行った。

だからそれってつまり俺と翼のことを考えてのことじゃね?

こいつもしや猛烈なツンデレ?

勇は思ったが、それは口には出さなかった。
「そうだな、悔しいけど前も言った通り俺のやり方間違ってたんだ」
「翼を思ってのことに見せかけて、結局全部、自分自分のためだった」
「ありがとう、お前のおかげ気づけたことだし、翼とも何とか会話できたし…その…巻き込んで悪かったな」

天童さんは黙って勇の話を聞いていたが、勇の謝罪を聞いて、少しだけ目を細めた。
「…別に。礼を言われることでも、謝られることでもない。お前は利用できるものがあったから利用しただけ。その分必死だったから」
「必死な人は必死な人を悪く言えない」
「私は、何もやらないで綺麗事ばかり言う奴よりずるくて必死なやつを応援したい」

天童さんがそういうと勇がさっと体の向きを天童さんの方向へ向けた。天童さんもそれに気が付いて、勇の顔を見上げた。勇は天童さんを見ながら言う。
「翼が…お前が俺に似てるから気になるとか言ってたけど、そっか、俺じゃなくて…あいつに……」

そして、勇は左手で天童さんの頭をポンとなでた。
「お前も本当、いっぱい耐えて頑張ってきたんだな」

天童さんは頭を勇にポンとされて、少しだけ目を見開いた。

＊＊＊

天童やっぱ強いよ

いっぱい頑張ってるね

笑顔の橘君の顔が浮かんだ。

先日、雨の日、勇にあんまり無理すんなよ、と傘を渡されたことも思い出した。

To Be Continued

【感想】

実は翼が結構背が高いからですが、天童さんは意外と小さくて可愛いです。勇と2人で並んで歩いていても、勇の半袖くらいの身長で、口は悪いけれど、女の子らしくて、ビジュアル的に翼とはまた違う味わいがありました。

愛ちゃんと天童さん、方向音痴なところが似ていますね(笑)おそらく愛ちゃんと重ねて、そんな天童さんの頭を今まで頑張ってきたんだな、と言う勇は、あの時の愛ちゃんについて、今は、どう思っているのでしょうか?

当時は、愛ちゃんの恋に必死な行動が、翼の怪我と言う結果に結びついてしまったことで、相当、愛ちゃんに怒りをぶつけてしまいました。今ならもっと冷静の捉え方をしているのでしょうか。前に天童さんが、翼と橘君を会わせないようにと、翼を振り回していた時は、結構怒っていましたが、今回の天童さんの必死さを称える行動から、勇の考え方も変わってきたし、愛ちゃんへの気持ちの変化も、少しだけ垣間見ることができます。

それにしてもツンデレの天童さん、素はものすごい優しいんじゃないでしょうか。