『カカオ79％』222：遊園地へ行こう（4）【あらすじ＆感想】

20分前

橘君が困ったような、戸惑っているような表情で天童さんの前に立つ。天童さんも何とも言えない表情で橘君のことをじっと見つめた。

そこに、アリザワ先輩が現れる。

「やほー！遅くなって悪い！現地集合って待ち合わせ場所を探すのに時間がかかるんだから、学校あたりで合流していけばよかった…」

と言いながら、集まっている面々の顔ぶれを見る。

橘君と天童さん、そしてその横に、微妙な雰囲気の翼と勇の四人がいた。

あれ…？

一緒に行かなくてよかった気がする

アリザワ先輩はとっさに思った。

「ヤッホー！お待たせ～私の愛おしい薫くんはどこ…」

と言いながら、リナ先輩が合流する。

「…あら？」

どうしたのこの空気

と思いながらも、リナ先輩は片手をあげる。勇の横に座り込んでいたアリザワ先輩が、よくぞ来てくれました、と片手をあげた。

「何これ、何でこんな思っ苦しい空気なの？」

リナ先輩がアリザワ先輩に聞いた。

「知らない…超怖かった…」

アリザワ先輩は、膝を抱えて涙を流していた。

「亮が何かやらかしたわけじゃないよね？」

リナ先輩の問いに、アリザワ先輩はこたえる。

「俺普通に待ち合わせ場所に5番目についただけだから！」

「あらそうエライね」

そこに、委員長が合流する。委員長は、アリザワ先輩とリナ先輩が話す様子を遠めに眺めながら近づいてきた。

「あら薫くん！遅かったね、一緒に来れたらよかったのに～」

リナ先輩が委員長に声をかけた。

『元カレにアドバイスを受けよう』

翼はそう言って委員長を遊園地に誘った。

元カレとはアリザワ先輩のことだ。

そして

現在

村上さんとボブカットの二人が合流した。これだけ人数が集まっているのに、しーんとして、寒々しい雰囲気だった。

＊＊＊

遊園地。周囲は楽しそうな雰囲気だった。

パァン、と天童さんが翼の脇腹をグーで殴る。

「いでっ…！」

「どうして橘がここにいるんだよ」

天童さんが翼に至近距離で聞く。

「しまった、勇が橘君を誘ったことを天童さんは知らないんだった」

翼がハッとして言う。

「は？自分の恋愛もうまく出来てないやつが余計なことするんじゃねえよ」

天童さんが言う。

「しまった、今の考えだけで止めるつもりが口で喋っちゃった」

翼が言う。

そこに、明るいアリザワ先輩が声をかけてきた。

「ほーら、こんなに離れてちゃ迷子になっちまうぜ、二人で何こそこそ話してんの？つか私服だと皆雰囲気違うね？」

「先輩…！」

「おう」

翼がアリザワ先輩の方を向いた瞬間、勇の視線に翼はビクッとする。

「大魔王どうした？」

翼は慌てて、

「いや、あのおっしゃる通りでーてことで前に合流します」

と言いながら、シューンと前の方へと移動していった。

「何だ？」

残されたアリザワ先輩は、天童さんに聞いた。

「あんた何がしたいの？」

天童さんがアリザワ先輩に聞く。

「え？遊園地で楽しく遊びたい」

アリザワ先輩がトボケタ顔で言う。

「ガキかよ」

天童さんが問う。

「じゃなくて、あんたあいつのこと好きなわけ？」

＊＊＊

少し前では、橘君と勇が話し込んでいた。アリザワ先輩と二人で話す天童さんを、橘君が時折、振り返りながら見ている。

「気になるか？」

勇が聞く。

「…気になる」

橘君は素直に答えた。

「あんな後にいられると、天童ならちょっと目を逸らした隙に迷子になりかねないのに…」

ため息交じりに言った。

保育園の先生か

勇は思った。

「いやいや…よーく見てみ橘、天童が他の男といちゃついてるのを見てムカついたり気分が悪くなったりしねえか？」

勇が諭すように言った。

「もう少し自分の気持ちに正直になるんだ、お前は優しすぎて他人の気持ちを先に考える癖がある」

「お前の気持ちはどうだ？」

ToBeContinued