『カカオ79％』208:囲い(13)【あらすじ＆感想】

web漫画/カカオ79％【あらすじ(ネタバレ)＆感想208話】～残り21％の甘さ～

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翼は天童さんを兄の部屋に案内した。
「ここ一応兄の部屋だけど、ずっと海外で住んでて学生時代のものばかりだし、おっさん臭くはないと思うから…今じゃゲスト部屋的な感じ、当分はここ使ってね」
翼は目につく埃を払いながら言った。

二人の間には、終始、微妙な空気が流れていた。

「えーと他にトイレとかは…」
気を取り直して翼が言う。
「…以前来た時に覚えた」
天童さんが口を開く。

「あ、うん！そうだね！うちの親帰り遅いし、何でも自由に使っていいから、それじゃ今日は疲れてんだろうし…お休みー」
翼はそう言いながら、部屋を出て行きドアを閉める。

天童さんがドアを見ながらひと息つきかけるが、ガタンと再びドアが開いた。
「やっぱ」
そう言いながら、翼がドスドス入ってきて、ガシッと天童さんの手を掴んだ。

「今日は私の部屋で一緒に寝よう」
そう言って翼は天童さんの手を引いた。
「あ、いや、その前に夕飯か？そういやあんた何も食べてないんじゃないの？！」

「…何で」
天童さんが口を開いた。
「何でまたそんなに優しくする？」
俯きながら言った。

翼は振り返り、

またそれかい

と思いながらも、少し笑って
「……いや、まあ本当何でだろうね…、何度もひどい扱いされといて」
と返す。

関わるな？
ほっとけ？
今度は何言われるんだろう

翼はまじめな顔で天童さんの方に向き直った。
「ほっといて欲しけりゃほっとけない状況を見せるなって前にも言ったけど、今回とんでもなくほっとけない状況だったから…それだけだよ」
そして、少し顔をそらして
「やっぱここで休んだ方が気が楽ならこの部屋で…」
と言いかけて、再び天童さんを見て、彼女の涙に気が付いた翼は、戸惑う。

「…天童さん？」

な、泣いてる？
まさか…

天童さんが叫ぶ。
「テメェのことが大嫌いだ…！恵まれた家庭から生まれて周りから愛されて、それゆえに持っている能天気さとか明るさとか見ているだけで腹が立つ！」

「……知ってる」
翼は無表情で返す。

「それを知って優しくしてくるところを見ると吐き気がする！心に余裕のある奴らのその偽善が上から同情されるようでムカついて、押して押して押し出しても、ほっとけつったのにもしつこく付きまとって、優しくしといて、結局、離れていったくせに…」

翼はそれを聞いて唖然とする。
「じ、自分であんなにもほっとけって言ってたくせに…今だって」

「結局離れていくと知ってたから、結局私からは誰も彼も離れていくと知ってるから」
天童さんは言う。
「私は…優しくされるのが怖い。知らない時には何ともなかった、でも一度優しくされてしまえば、それを忘れることが出来ない」
天童さんは、小学生の頃の、橘君と、ミツウラと、ミドリとの四人で一緒に下校した時の光景を思い出していた。

天童さんの言葉を聞いて、翼は思う。

あー

この子は
ずっと

愛情を返される
ことなく生きて
来たんだ

自分の父親にも

あの橘君にさえも…

ToBeContinued