『カカオ79%』164:迷子(2)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想164話】~残り21%の甘さ~

3年生になって一度橘とクラスが分かれた
それでも橘は私を見つけると
学校まで連れてってくれた
おかげで静かな学校生活が送れたけど
なんだかつまらないと思った

「な、なんか橘と仲良くしてたー」
「ああー」
新しく同じクラスになったクラスメイトが、それぞれに話をしている。
「おーい、サッカーやろう」
「いいよー!ボールは?」
「今週末ねー」
「春休みにシンセキの家行ってたけどー」
「うちはリョコーに行ってきたの」
「その服かわいい!」
「へへ、昨日ママがさー」

そのざわざわした教師の中で、天童さんは一人うつむいたまま席に座っていた。

…去年も一緒だったけど
つまらなくなった…かも
…………いや
私『つまらない』ということば使うのはじめてだ

天童さんは考える。去年は視界のどこかにいつも橘がうつっていた。

…見ていると『おもしろかった』…かも
じゃまた『見る』で『おもしろかった』になれる?

天童さんは周りをキョロキョロする。男子同士で話すクラスメイトや、女子で固まって話す笑顔の女子を見る。

確かにそれでつまらないという気持ちは晴れたが
何故か面白くはなかった

みんな…キラキラしてる

天童さんは家に帰った。誰もいないゴミだらけの部屋に
「ただいま」
と言う。ガタンとランドセルを降ろすと、洗面所へ向かった。顔を洗って、ボサボサで顔が隠れていた前髪を真ん中で分けておでこを出した。
「これで『キラキラ』…」

***

翌日。先生が言う。
「みなさん~今日は席替えです。一人ずつ前に出てクジを引いてください~」
天童さんは先生の話を聞きながら、一人自分の席でソワソワワクワクしていた。

今日いつもよりキレイに洗った!
新しい席…!

席替えが終わった。
「じゃ、当分はこの席で楽しくやって行きましょう~」
天童さんの席は、一番後ろの、隣が誰もいない席だった。

クラスメイトたちは、それぞれに話をしている。
「ねぇ、私が席替えてくれって頼んでセイカイだったでしょ?」
「う、うん」
「明日ミナミん家遊びに行っていい?」
「昨日帰り道でサナエと…」
「えーうそーあたしもいきたーい」
「モエちゃんしゅくだいやった?」
「うちの兄ちゃんがこれ貸してくれてさ」
「え、いいなー俺も一回やらせてよ」
「マツオカ来週さー」
「カジ君この前貸したペン返してよ」

それからも、私の周りは
とても静かだった

***

そして4年生。
橘と同じクラスになった。

「あっ天童だ!」
橘君が声を上げた。同時に近づいてきて、天童さんに向かって片手を上げた。天童さんはびっくりしていた。

「てかよく間に合ったね、今日!見かけなかったからまた迷ってるのかと心配してたんだよ」
橘君は言う。
「………もう…」
天童さんは小さな声で言いかけた。
「ん?」
橘君が聞き返す。
「な、なんでもない」
慌てて天童さんが言い、その場を離れた。

しゃべった…と橘君は思いながら振り返った。天童さんも歩きながら、しゃ、しゃべれた…と思う。

この頃の私はもう
家から学校までの道だけは
完璧に覚えることができていたんだ
橘が声をかけてくれた石垣も
猫が3匹並んでいたあの家も
曲がるところを間違えないように印としていた大きな木も
忘れるはずがない

天童さんは授業を受けながら考えていた。

もう迷わない…と言うと道アンナイしてくれないかも…
道を
『つまらない』と『おもしろい』を教えてくれた
私の名前を呼んでくれた

失うわけにはいかない
必死で後をついていたら
変なのに絡まれた

「橘のことりちゃん」
金髪の男子生徒が、ウィンクしながら天童さんに話しかける。天童さんは黙ったまま視線をやった。
「あれ?さっき喋れたよね」
男子生徒の隣にいたポニーテールの女の子が、男子生徒に言う。
「ちょっとやめてよ、変なポーズ!キモイ!無理してウィンクしなくていい」

「俺、橘の大大大シンユウのミツウラ、よろしくー」
男子生徒はそう言って、今度は反対の目を無理やりウィンクした。隣の女の子も、天童さんに話しかけてきた。
「ごめん天童さん。こいつ去年までは普通だったのに急にキモイポーズ出してきて…!目立ちたいだけだから気にしないで」
女の子は笑顔だった。

天童さんはフレンドリーに話しかけられたことに戸惑い、目を丸くしたまま固まっていた。
「てめぇミドリ!俺は噂の天童ってやつに挨拶してこうと思って」
「噂って何よ!シツレイじゃない!!」
ミツウラとミドリが話している。

そこへ、少し焦った様子で橘君が近づいてきた。
「ちょっとお前らそこで何してんだよ?!ごめん天童、こいつらに何かされた?」
橘君の登場に2人は驚く。
「ちょ、橘、その言い方傷つく!大大大シンユウの俺傷つく!」

天童さんは、橘君の問いにブンブンと首を左右に振った。
「こいつらは去年俺と同じクラスだったやつらなんだ。道に迷ってる天童のことたまに学校まで案内してるって聞いて気にしてたみたい」
橘君が説明する。

ミドリと呼ばれた女の子が、笑顔で天童さんに言う。
「せっかく同じクラスになったわけだからよろしくね、天童さん」
天童さんは、そんなミドリとミツウラのことを真っすぐに見つめた。

初めての『よろしく』が
初めての『友達』に
『友達』になれたらいいなと
思っていたんだ

その後、橘君とミツウラ、ミドリ、そして天童さんで並んで下校した。

***

ある日、天童さんは教室でミドリと二人で話してた時に、ミドリが橘君の話をしてきた。
「天童さんさ、本当はもう学校までの道覚えてるでしょ」
天童さんはビクッとする。
「だって橘君と一緒じゃなくてもチコクしないよになったじゃん。なら橘君にもそう言った方がいいよ。それで橘君はカイホウしてあげるの」

ミドリの言葉に天童さんが聞き返す。
「…カイホウ?」
「そう、橘君が毎朝天童さんのためにクロウしてたから、もうカイホウしてあげないと」
「クロウ…ツライってこと…?」
「そいうこと!」

ミドリの言葉に天童さんは少し考えこんだ。そして、
「…今はへんなところで迷ったりしないからつらくはないと思う」
天童さんの言葉に、ミドリの笑顔が凍りついた。

***

ミドリは別の女の子の友達二人と下校中、天童さんとの会話のことを話していた。
「あぁムカつく!!いつもいつも橘君の側でうろうろと…!」
とミドリ。
「ミドリちゃん、よく仲良しごっこしてられるね」
「私はちょっと怖いから近づきたくない」
二人の女の子の友達がそれぞれに言った。

するとミドリは、くるりと二人の方に向き直って言う。
「仲良しごっこじゃないよ。私は心から仲良くしようとしているの。怖いとか言わないでね」シツレイじゃない」
二人の女友達は困惑する。
「え、じゃ本当に友達になるの?」
「だって今ムカつくって…」
そんな二人にむかってミドリは言う。
「ムカつくけどいいの!だって可哀そうじゃない

その頃天童さんは、木の枝で、3匹の猫をじゃらしながら歩いていた。猫はイチロー、ジロー、サブローと名付けているらしい。そして天童さんは思う。

タチバナにありがとうって言わないと…

ToBeContinid

 

カカオ79%【感想(ネタバレ有)】

純粋な頃の天童さんが丁寧に描かれいました。両親や大人たちからは、何も教えてもらえなかった天童さんが、橘君やほかの友達と接する中でいろんな経験をしたり感情を覚えたりしたんだと思うと、少しだけホッとしました。

ただ、やっぱり教室の中には、周りの大人と同じように、自分たちとはちょっと違う天童さんとのかかわり方を、慎重に選んでいる子たちが大半で、それは仕方ないのかもしれないけれど、やっぱり天童さんの子供の頃はつらい小学生時代ですね。

最後の、ミドリの「可哀想」という言葉は、その後の天童さんが同情されることに対しての嫌悪感や過剰反応を考えると、引っかかっている言葉になっていきそうですね。

カカオ79%【ネタバレ/伏線回収班】

準備中

 

 

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