web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想209話】~残り21%の甘さ~
「私は…優しくされるのが怖い。知らない時には何ともなかった、でも一度優しくされてしまえば、それを忘れることが出来ない」
天童さんは、小学生の頃の、橘君と、ミツウラと、ミドリとの四人で一緒に下校した時の光景を思い出しながら翼に言った。
「だから、どうせすぐ離れてくんだったら最初から優しくなんかすんじゃねえよ」
翼は、涙を流す天童さんを目の前に立ち尽くしていた。
「愛してもらえるかも知れないと勘違いしたくねえんだよー」
天童さんが叫ぶ。
自分の気持ち次第で
優しくしたり距離を置いたり
この半端な優しさが
天童さんを傷つけた
ほっといてという言葉が
こんなにも切実なSOSだったのに
翼は天童さんにゆっくり手を伸ばす。
「どうすれば」
そして両手で天童さんを抱きしめた。
「どうすれば私が天童さんのこと心から心配してて好きだと信じてもらえるの?」
翼の目からも涙が溢れてきた。
「どうすれば…」
「…私を」
天童さんの目からも、止めどない涙が溢れている。
「…諦めないで。私がどんなクソなやつでも、あんたにどんなにひどいことを言っても同じくひどいことを言ってもいいし、怒ってもいい。ストーカーみたいに付きまとってもいいから…私を見放さないで」
天童さんは、翼が自分と距離を置くことを決めた後、すれ違った時にスッといってしまった時のことを思い出す。
「そうすればいつか…」
自分を抱きしめる翼の腕を、天童さんもぎゅっと握る。
「あんたのことを好きになれるかも知れないから…」
「うん」
翼はうなずく。
「だから…」
「うん」
翼はうなずきながら考える。
天童さんを囲っている垣根は
高くて分厚くて
誰一人、入れてやくれないかもしれないけど
だからこそ
寂しかったであろうこの子に
続けて声をかけてあげるべきだってことを
今になって
気づく
翼は大きな垣根の真ん中にうずくまる幼い頃の天童さんを想像する。
『ねえー』
垣根の外側から、翼が呼ぶ。
『ここにいるからー!』
勇も橘君もアリザワ先輩もいる。
そうやって君を囲う声が増えて
その声が新しい垣根になったら
いつか
そこから安心した君が出てくる日が
くると信じて…
翼の想像の中の幼い天童さんが、垣根の中で振り返った。そして、呼びかけに応じて、垣根の隙間からこちらの様子を伺っている。
***
翼の涙は止まらない。天童さんの頭をなでた。
「ス、ストーキングやめて、ご、ごめん。私が…ずっと見守っていれば、今日だって…っ…こんなことにはならなかった…っだろうに」
二人は抱きしめ合う。
「もうこれからは一生…付きまとうから」
翼の言葉で、天童さんの目に光が宿る。
「…さすがに一生は…ちょっと…」
***
翌日。よく晴れた、穏やかな朝だった。
勇と蛍と光が翼の家に来た。
「おはよう、こっちで一緒に朝食べようと思って来たんだけど…」
蛍が言う。勇は大きなサイズの弁当が入った包みを抱えていた。
「大丈夫?」
勇、蛍、光の視線の先には、寝起きの翼と天童さんがいた。天童さんはまだぼんやりしていて、翼は泣いた後の顔で、土偶のようなひどい顔をしていた。
ふと翼が、天童さんの顔は腫れていないことに気がつき、あれ?何で私だけ?と、驚く。天童さんは無言で、目をそらした。
ToBeContinued
カカオ79%【感想(ネタバレ有)】
天童さんの号泣しながらの思いの吐露、それはまさに、囲いから出てきている兆候だったのではないでしょうか。沢山すれ違ってしまった二人ですが、今度こそ、きっといい友達になれる気がします。
結果論ではありますが、翼は、一度天童さんと距離を取ろうとしたからこそ、天童さんの心により近づけたのかなと思います。それまでは、翼も天童さんの言葉に傷ついていたし、まさに雨降って地固まる、ですね。
天童さんに関しては、お父さんのことはまだ解決していないですし、橘君とのこともこれでおしまいってことはなさそうですし、アリザワ先輩も絡んできそうですし、勇についても、どう思っているかはわかりませんが、翼と3人、友だちになっていくの???でしょうか。
垣根の周りで天童さんに呼びかける描写に、翼、橘君、勇、アリザワ先輩が描かれていたので、これからも交流がありそうな予感です。
最後、翼の泣いて腫れた顔、前回も天童さんのことでそのような顔になっていましたね。天童さんも泣いたのに。しれっとしている様子が可愛いです。
カカオ79%【ネタバレ/伏線回収】
天童さんと距離を置くことを勇に伝える翼→『カカオ79%』197:優先順位(1)【あらすじ&感想】
以前、泣きすぎて顔が腫れる翼→『カカオ79%』172:休日【あらすじ&感想】
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