『カカオ79%』210:囲いから外へ【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想210話】~残り21%の甘さ~

天童さんが翼の家でお世話になることになった翌日は、よく晴れた、穏やかな朝だった。

勇と蛍と光が翼の家に来た。
「おはよう、こっちで一緒に朝食べようと思って来たんだけど…」
蛍が言う。勇は大きなサイズの弁当が入った包みを抱えていた。
「大丈夫?」

勇、蛍、光の視線の先には、寝起きの翼と天童さんがいた。天童さんはまだぼんやりしていて、翼は泣いた後の顔で、土偶のようなひどい顔をしていた。

ふと翼が、天童さんの顔は腫れていないことに気がつき、あれ?何で私だけ?と、驚く。天童さんは無言で、目をそらした。

翼と天童さん、そして一ノ瀬三兄弟の5人で玄関から、翼の家の廊下を歩く。
「翼ちゃん泣いたの?」
早速、蛍が聞いた。

「いや、昨夜色々話してたら天童さんがボロボロ…ヌオッ
翼が言いかけると、横を歩いていた天童さんが、翼の足を思い切り、ぎゅーッと踏んだ。

***

あの後、私達は夜遅くまで沢山の会話をした

ほとんど私だけが喋って
天童さんは聞いてただけだったけど

これも会話は会話

翼の部屋で、翼はベッドに入り、天童さんは、床に布団を敷いて寝ていた。
「中学の時に天童さんに似た仲のいい女の子がいたんだ
翼が言う。天童さんは布団の中から、翼のことを見上げていた。

「本当をいうと顔も性格も何もかも似てないけど、むしろ逆…私の中では何故か天童さんとあの子をずっと重ねてたんだよね」

翼はベッドで仰向けのまま語る。
「ずっと女の子の友達が欲しくて仕方がなかった。私…あの子の代わりを探していた気がするんだ。私と勇との共通の友達で、3人で居られる子

翼はかつての同級生や、現在のクラスメイトの顔を思い出していた。
「考えてみれば、仲のいい女の子達が全くいなかったわけでもないのに、誰かを探し求めていたよ」

「あの子の代わり…」
翼は少し遠い目をする。
「…いや、本当は勇とずっと友達でいられる安全装置を求めていたのかも知れない」

天童さんは、翼の話を聞きながら、いつかの勇の言葉を思い出していた。
『友だちになってくれよ。俺と翼の。だってお前俺のこと嫌いだろ?』

翼の話は続く。
「誰かが私たちの間にいてくれるだけで、簡単には今の関係を変えられないと思ってた気がする。その時に天童さんがバーン…!!」
翼が話しながら、天童さんの方に顔を出そうとすると、天童さんは、その顔をグーでバアンと殴ってしまう。

ベッドの上で起き上がって、顔を抑えて痛がる翼と、あ、つい、と拳を握りしめたまま、布団の上に起き上がっている天童さん。
「…ごめん」
謝る翼に、いや、殴ったのはこっちだから、と天童さんが小さく言う。

「天童さんの言った通り、私は天童さんのことちゃんと見てなかったんだ。脅迫のように無条件に優しくしてた。そんなの確かに気持ち悪いし、嬉しくもないよね」
翼は、ベッドの上に膝を抱えて座ったまま、膝の上に頭をのっけて天童さんの方を見た。
「ごめんね」

翼の謝罪に、天童さんは直接応えなかった。

「そのくせにあいつと仲良くなったらなったで妬いてたのか、めんどくさい女」
天童さんの言葉に、翼はガン、とショックを受ける。

「やっぱり何だかの理由があってからの私への執着だったんだな」
天童さんは、布団に横になると、くるりと翼とは反対側を向いてしまった。
「で、でもあれはきっかけなだけで、天童さんと一緒にいて楽しかったり、頭に血が上ったりしてた気持ちは本物だった」
翼はベッドの上から身を乗り出して慌てて言う。

「…テメエ本当に言えるようになったんだよな」
天童さんが布団の中で呟く。

「誰かの代わりとか、昔のやり直しとか、そんなんじゃない、天童さんのために考えて動いてた。じゃないとほっといてと言われてそのまま素直にほっとくという失態繰り返さないよ」
翼が言う。

「…今後も」
天童さんが口を開いた。
「ん?」
翼が聞き返す。
「もし誰かにほっとけって言われてもしつこくしぶとくウザったらしく付きまといなさいよ」
「…本当にウザかったのね」
天童さんの言葉に翼が呟いた。

「…あんたのそれは、人を救えるウザさなんだから」
天童さんの言葉に、翼は一瞬固まった。

「…ありがとう」
むこうを向いたまま、天童さんが言った。

「…!!~~!!~~~~!!」
翼の顔が輝き、目がウルウルする。

「うるさい、何の音も出していないのにもううるさい。顔が目がうるさい」
「もう一生離れない!諦めない!ほっとかない!ずっと付きまとうから…!下で一緒に寝る!」
「いや、私じゃなくて…今すぐ離れろ」

やっぱり一瞬怒らせたのかと思ったけど
怒ってはいないようでとりあえず安心

そして今日の朝になったわけです

***

翼が蛍に、天童さんに踏まれた足を、痛い、と言っていると、蛍が、
「野良猫でも飼い始めたと思って我慢しなさい」
と言った。

天童さんは、後ろを歩いてた勇からの、じーっという視線に気が付く。勇の顔を見ると、勇は、二位っと笑った。そして、天童さんにしか聞こえないくらいの小さな声で
「お前、本当は翼のこと好きだろ?」
と言った。天童さんが何か言いかけたその時、
「?どうしたの?突っ立って」
二人の様子に気が付いた翼が声をかけた。

勇は、にやにやとしながら
「いやまあ挨拶?」
と言う。
「何その気持ち悪い微笑み」

勇と翼が話していると、天童さんが無言でスタスタと翼に近づいてきた。
「ん?」
そして天童さんは翼に抱きついた。そしてぎゅーッと抱きしめる。翼も勇も、蛍や光も驚いた。

「今日もお前の部屋で寝る」
天童さんは翼に抱いついたまま言った。
「て、天童さん…?」
嬉しくて翼の声は震える。
「学校も一緒に行く。私から離れないっつったな」
天童さんは、翼に抱きつきながら、勇にこれ見よがしの視線を送る。

到来デレ期…!翼は顔を両手で覆って喜ぶ。
「…はい、二十四時間一生離れないことを誓います。てか誓いました」
翼の言葉に、
「いや、一生はいい」
と言いつつも抱きついたままの天童さん。

「テンメェ、離れろっ…!」
勇が天童さんに言う。

「わー」
と蛍は喜んでいる。光も一緒になって翼に抱きついた。

「昨日の涙ぐんだ会話で私たちはもうフォーリンラブ…!!」
震える声で言う翼にも、勇は
「ラブはおかしいだろ、ラブは!!」
とツッコむ。

「もう…男の嫉妬はみっともないってそろそろ分かって?勇にぃ」
蛍が言う。

翼に抱きついたまま、天童さんは、安心しきった顔で目を閉じた。

***

幼い頃の天童さんは、垣根の中から、かけられた声に対して、ゆっくり手を伸ばした。その手を受け止めようと、垣根の外からも天童さんに手が伸びていた。

ToBeContinued

カカオ79%【感想(ネタバレ有)】

翼の部屋で、並んで寝ている翼と天童さん。初めて天童さんが翼にお礼を言った気がします。それまでは、借りとかをすごく気にして、甘えるということは絶対してこなかった天童さんが、初めて翼の好意を受け入れてくれたように思います。紆余曲折ありましたが、本当に良かったな、と思います。

勇のにやついた顔もたまりませんね。勇への嫌がらせで翼に抱きついたようにみえましたが、最後、抱きついて、心地よさそうに目をつむっていて、本当に心から安心しているような表情でした。

一緒になって抱き着いてる光くんも可愛いです。あまり話さないし、いつも蛍のそばにいるだけの光くんですが、しぐさや行動が何かと可愛いです。

翼と天童さんが仲良くなって、勇はなんだかこれから苦労しそうな予感ですが、少し重たい話が一段落して、次回からはまたどんな展開が待っているのかと楽しみです。

まだ解決していないこともいくつかありますし。

・勇のピアノの伏線

・モブ男の名前の件

・愛ちゃんを探す件

・リナ先輩と委員長の件

・天童さんと橘君の関係

・天童さんのお父さんの件

・アリザワ先輩とアリスちゃんの件

思いつくままに書き出してみました。愛ちゃんの件で物語が動き出すと思っていたのですが、そのことは棚上げで、先に天童さんと翼の関係の件が解決しそうなことに驚いていました。

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・勇『友だちになってくれよ、俺と翼の』→『カカオ79%』46:ホトトギス【あらすじ&感想】

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