web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想172話】~残り21%の甘さ~
「翼ちゃん」
ベッドで布団にくるまる翼に向かって蛍が声をかける。
「つーばーさーちゃん」
呼んでも起きない翼に対して、業を煮やした蛍は、翼の掛布団をひっぺ替えした。
「いい加減起きてよ、もう昼過ぎよ?文化祭も終わって休みの日だからって寝すぎ…」
起き上がった翼の顔を見た蛍は、言葉が止まった。翼の顔が、目を中心にボンボンに腫れていたのだ。
「え、翼ちゃん泣いたの?!失恋でもした?」
驚いて問う蛍に、横に来た勇が言う。
「してねえよ」
***
身支度をする翼の部屋をいったん離れ、勇と蛍は翼宅のリビングルームに座って話をしている。
「もうー、勇にぃさぁ、女子の寝床にズカズカ入ってくるとかデリカシーなさすぎよ」
勇はテーブルに肘をついて、無表情のまま答える。
「だからお前を先に入らせただろうが」
そんな勇に蛍は、にやにや顔をして言う。
「まあでも彼女の部屋だし別にいいか~」
勇は何も答えない。
「キャァァ、否定しなとかいやらしい~」
蛍は言いながらも、目には見えないハートを飛ばしていた。
「お前楽しそうだな」
無表情の勇に対して、蛍は笑顔で言う。
「楽しいに決まってるじゃない。ずっとこうなるといいなと思っていたことが叶ったんだもん。勇にぃのこっちが恥ずかしくなるぐらいの片思いこじらせてる姿をもうみなくて済むと思うと…よく頑張ったね」
蛍は涙を拭く真似をして見せた。
「ああもううっせぇな」
「嬉しいやら羨ましいやら~」
と蛍が言うので、勇はまじまじと蛍の顔を見た。
「……お前…」
そこに翼がリビングルームに入ってきたので、蛍はガタンと立ち上がった。
「あっ翼ちゃん顔洗ってきた?氷で目を冷やそうよ」
席を立った蛍を見ながら、勇は呟く。
「あいつ…まさか男できたんじゃねぇだろうな。どこのどいつだよ」
翼が、ダイニングテーブルの今まで蛍が座っていた席の向かい側に座った。勇は、腫れた目で、しゅんと座る翼を何も言わずに見た。
ヤンキー女のところで散々言われてから二日目
翼のやつはずっと元気のないままだ
まあ誰しも面と向かってああいわれると落ち込んで当たり前だろうけど
こいつは夏目のこと思い出して二重でダメージ食らってんだろうな
蛍は、キッチンから氷を包んだタオルを用意して持ってきてくれた。
「はいこれ目に当てて。本当どうしたの?何かあったの?」
翼は何も言わずに、蛍からタオルを受け取って目に当てた。
夏目は…違うんだよ
お前のことを拒絶したんじゃねぇんだけど
俺からは何も言えない
ヤンキー女は…
あれから天童の具合を伝えるついでに橘に聞いてみた
勇は、天童さんのアパートから帰った後、橘君と電話で話した。
「橘、聞きたいことがあるんだけど…答えたくなかったら答えなくていい、お前…ヤン…天童と何があった?」
少しの間の後、橘君は答えた。
「天童に告白されて断ったんだ」
「…やっぱりか」
ああ、翼を連れて行ったのはまずかったな
「ごめん、だから天童の体調は心配だったけど見舞いには行けなくて…あれ?もしかして一ノ瀬って天童の気持ち気づいてた?」
橘君に聞かれ、勇はごまかす。
「ま、まあ何となく」
「…これも答えたくなかったら無視していい質問なんだけど、天童の気持ちをことわったのはまだ、翼のことが好きだから…か?」
勇からの質問に、橘君の口元は少しだけ微笑んだ。
「断ったのは天童を恋愛対象として見たことがないからだよ。以前話したことがあるよね。俺は特別な人を作る気はないって。天童は大事な友達なんだ」
…とかわされたわけだから
ふられた直後、その橘が
「初恋かもしれない」
とまで言っていた翼の顔だけは
見たくなかったんだろうなと今じゃ理解できる
察してあげられなくて悪かったな、マジで
ヤンキー女に翼を受け入れてもらうことはもう
難しいのかもしれないな
***
「ねえ翼ちゃん朝ごはん…いやもう昼ごはんよね。昼ごはんはどうする?私はこの後、光の友達が遊びに来るからその時に一緒に食べるつもりだけど、せっかくだし勇にぃと出かけて食べたらどうよ?」
蛍の翼への提案に、勇は横でイラっとする。
テメエが言わなくても自分で誘えるっつーのこの生意気なクソガキ
「出かけて…いい顔?私」
翼がおもむろに、目に当てていたタオルを外して、勇と蛍の方を向いた。
「あははは、何か簡単に用意しとくからお家で食べてね」
と蛍。
「ピザでもとるか」
と勇。
***
蛍が帰って、しばらくしてから、翼は冷やしていたタオルを目から外して勇の方を見た。
「おー、大分マシになったじゃん、やっと人間の顔に戻ってきたな」
勇は、テーブルの上にお皿やコップなどを用意しながら言った。
「人間の顔じゃなくて…すいませんでした。見苦しいものを見せてしまって…生まれて…生きてて…すみません…」
翼は俯く。
「どんだけネガティヴになってんだよ。天童はさ、今日の昼からバイト出てるって。
翼は『天童』という言葉に身体がギクッと反応する。
「土井と渡辺に偵察に行かせた、体調もそこまで悪くは見えないらしい」
勇の言葉に、翼はほっとした顔をした。
「それと橘に聞いたんだけど、俺らの劇が終わった後、天童に告白されて断ったらしい。要するに俺らはタイミングが悪かったってこと。一人になりたかったのに俺らが邪魔しちゃったのかもしれないな。取り乱すのも当然…」
勇は橘君との電話の話をそのまま翼に伝えた。
「ちがうよ、そんなんじゃない。私が…行ってはいけなかった、私の顔なんか見たくなかったんだろうに…」
こいつ…もしかして橘のこと気づいて…
勇は翼の話を聞きながら思った。
「天童さんが一番辛い時に私は何もできない…何もやっちゃいけないなんて、クソ虫だぁ、私クソ虫だぁ、うあああ」
そう言って翼は泣き出した。
「まあとりあえず落ち着けって。それ以上泣いたら二度と人間の顔に戻れないかもしれねぇぞ」
勇は翼をあやすように背中に手を回した。
「せっくの休日なのに出られないしよ」
「…出るってどこへ?」
翼が聞く。
「デート」
そう言って勇は、顔を上げた翼の頬を両手で包んだ。
「…で」
翼は勇の言葉を反芻しようとするが、途中で止まり、固まったので勇が続きを引き取ってもう一度言う。
「デート」
それを聞いた翼は、オロロロロと瞬く間に石化し、砂を吐いた。
「おいフザケンナよその反応、傷つくぞ」
「あのお?ヤンキー女ショックでお忘れかもしれないけど俺ら付き合い始めたんで、俺彼氏なんで」
「ご、ごめん、あまりにも聞きなれない単語を耳にしたもので、何か色々ぶっ飛んだ」
勇は突然喚きだす。
「なのに彼女は俺のこと眼中にもないし、周りの空気重くなるから幸せオーラも出せないし、出番もこねえし!!」
勇は翼の両肩に正面から自分の両腕を回した。翼と勇の顔が近い。
「…俺は他人を…友達を大事にして、自分のことのように気にかけるお前の優しいところ好きだよ。でもたまに、その思い入れが強すぎて…俺のこと、そしてお前自身のことも見えなくなるんじゃないかと不安になる」
勇はそういと、翼の頬に優しいキスをした。
「だから…」
ピンポン。
その時突然、家のインターホンがなった。
「すみません、デリバリーピザでーす」
いい雰囲気だった勇と翼はそのまま固まる。
ピンポン
ピンポン
「誰だよ、ピザ頼んだやつ」
勇がイライラしながら言った。
「あんただよ、しかも5枚も」
翼がすかさず言う。
ToBeContinid
カカオ79%【感想(ネタバレ有)】
久しぶりに、翼と勇と蛍が見られて、なんとなくホッとしました。天童さんの壮絶な過去と失恋の話から、私ももうすっかり忘れていましたが、2人は晴れて恋人同士になったところだったのでした。そして、早々に蛍にバレてしまったところでしたね。
ニヤニヤしている蛍は、私の気持ちと同じです(笑)ってきっと何人もの読者が思っていることでしょう。
翼は天童さんこことで頭がいっぱいでした。
カカオ79%【ネタバレ/伏線回収班】
準備中
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