『カカオ79%』155:違う空気の中で【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ&感想155話】~残り21%の甘さ~

155:違う空気の中で

カカオ79%【あらすじ】

「あなたに綾ちゃんのことが幸せに出来るのかしら?」
愛ちゃんが言った。勇が振り返ると、愛ちゃんが、勇を見ながら、挑戦的な目でほほ笑んでいた。
「………夏目、…悔しいなら奪い返しに来なよ」
愛ちゃんの表情から笑みが消える。
「悪いけど俺はもう遠慮しないで行くから」
勇が言うと、愛ちゃんは寂しげな表情に変わっていく。

***

ガタン、と翼が開けた扉の音に、勇はびっくりして目が覚めた。ハッとして、翼の顔をみる。ここは、翼の家の玄関の前。文化祭2日目の朝のことだ。
「あれ?!な、なんでここにいんの?あんたん家の前でまってればいいじゃん」
翼が驚いている。そして不思議がった。
「?、何?何かあるの?」

勇は翼の顔をじーと見つめた。翼は勇の顔を不思議そうに見た。

…まじか、突っ立って夢見てたのか俺、昨日あんま寝れなかったとはいえ

勇は、手のひらで顔を覆った。
「でー、なんでここにいるのよ」
「あ?迎え」
翼の問いに答える。
「迎えって…家からうちまで歩いて30秒の距離ですが」
翼が呆れて言う。
30秒早く会いたいじゃん
そんな翼に、勇は平然と言ってのけた。

ドサッ。
翼は思わず、持っていたカバンを地面に落としてしまった。そして赤面する。

文化祭2日目。

こ、こんなもんなの?と、カバンを落とした姿勢のまま翼が固まっている。勇は、そんな翼を見ながら、照れてる照れてる、と喜んだ。勇が翼の手を取ろうとすると、翼はその手をペッと払った。
「い、家の前ではくっつくの禁止、ママや蛍達に見られたらどうすんのよ」
赤くなってプンスカ言って、先に歩き出す翼の後ろ姿を、勇は優しい目で見つめた。ゆっくり目を瞑る。

勇の頭の中には、勇の部屋にある黒いランドセルと、翼の部屋にある赤いランドセルが思い浮かんだ。それから、机の上にあるブレスレッドの箱。小学生のバレンタインデーで、翼に渡した花壇の花。驚いた顔をした、あのころの翼。

勇はゆっくりと目を開けた。

俺の、彼女

前を行く翼も、勇のことを考えていた。

この関係に

やっと名前をつけることが出来た

昨日の夜の

震えと

温もりと

鼓動の速さを

引き継いで…

リナ先輩の元へ

***

勇と翼の二人は、生徒会室の扉の前に並んで立っていた。
「い、一応、委員長は大丈夫って言ってたけど、もしリナ先輩がやっぱあんたと一緒に文化祭回りたいと言ってきたらそうするのよ」
「…このためにこんなに朝早く来てんのかよ」
翼の言葉に、勇がぼやく。ちなみに、現在朝7時だ。
「返事は?」
翼が右手のこぶしを握りしめた。

「昨日は行くなーとか言ってたくせに、あの時は可愛かったのに」
勇はブツブツ言いながら、ドアにもたれかかった。
「き、昨日は昨日!今日は今日!十分勝手なことしでかしたから!」
2人がそんなやり取りをしていると、後ろから声をかけられる。

「あら?」
勇と翼が振り返ると、そこにリナ先輩がいた。
「!リ、リナ先輩…!」
「おはよーお二人さん~、委員会の人よろ早いね。こんなところで何してるのかしら」

翼は、とっさに勇の後頭部を押して頭を下げさせた。勇は、
「ぬっ」
と言う。
「あ、あの!き、昨日はその、す、すみませんでした!こいつが…えーと、いや、実は私がこいつに、それがその………」
頭を下げながら、二人は前に視線を持って行くと、目の前には、嬉しそうなリナ先輩と、メガネをしていない、少し照れてキラキラした顔の委員長が腕を組んでいた。

「オホホホホ、いいのいいの、ミスフラワーのことでしょ?今日一日薫君に付き合ってもらうことにしたから大丈夫~」
リナ先輩が笑顔で言う。コンタクトの委員長も、リナ先輩の横で少し照れたような表情をしていた。
「お、おはようございます、綾野さん、一ノ瀬君」

委員長に姿に、勇と翼は驚いた。
「誰?」
と勇。
「い、委員長、何故リナ先輩と一緒に…」
と翼。
「え?あのメガネの委員長?」
勇は、委員長と聞いても、まだピンとこない様子。

***

勇と翼の2人は、人通りの少ない階段の2人並んで腰かけて、話しをする。
「はあああ~、びっくりしたぁ、まさかあんたの代わりに委員長がリナ先輩に付き添うことになっていたとは…リナ先輩完全にあんたからターゲットを委員長に変えた感じだったよね、なんか焦って損した気分…」
翼がぼやく。
「俺的には超助かるけどな、あの人苦手だ」

先程、生徒会室で二人は、リナ先輩と委員長の仲睦ましい姿を見せつけられてきた。
「ごめんねー生徒会の仕事、一緒にやってくれる~?」
とリナ先輩が言えば、
何と!お安い御用!得意分野です
と言いながら、委員長はサングラスをカチッと上げた。
「…その前にまずサングラス外そっか」
リナ先輩はどうやら委員長の目に惹かれているらしい。

翼は、勇の横で考えていた。

…本当は勇と付き合うことになりましたーと報告(?)するつもりだったんだけどね、委員長にも、リナ先輩にも。

翼はスマホの時計を見た。まだ8時にもなっていなかった。ちらっと勇の方を見る。勇は、伸びた前髪を、そろそろ切るか?と、いじっていた。それから、もうネクタイを外そうとしている。

彼氏…これが私の彼氏…ね

ふむ~さっきまでは少し緊張してたんだけど

こうしているといつも通りって感じなんだね

そりゃそっか

何年も一緒に過ごしてきたんだし

付き合うことになったからって

何かが大きく変わるもんじゃないんだよね

翼が勇を見ながら考えていると、ネクタイを緩めていた勇が翼の方を向いた。翼はビクッとする。
「な、な、何よ」
「いや、熱い視線を感じたので」
勇は冷静に答える。
「は?!そ、そんなに見てないから!!」

翼は、くっそ見すぎた、と悔やみながら、大げさに顔をそらした。
「きょ、今日どうすっかなーと思っただけで…」
「どうするかって?」
勇が聞き返す。
「今日って昼まで外部の人は入れずに文化祭続けてて、その後売上げランキング発表してクラス別に打ち上げって感じだから…私たちは昨日劇も終わったし暇じゃん」
「じゃ一緒に校内回る?」
「え、一緒に…」
勇の誘いに翼は赤くなるが、すぐに現実を考えてしまう。

『あれ?何で二人一緒に回ってるの?!』
『付き合ってんの?!』
『昨日彼女いないって言ってたのに!!』
『まさか委員長のこと身代わりにして?!』
『は?!あんた彼女じゃないって言ってたよね?!』
『なんであんたが独り占めしてるのよ?!』
『ふざけんじゃないわよ!!まさか付き合ってるとか言わせないから!!』

「まわ…や、やめよう…」
翼は考えるだけで疲れる。
「…何そのすげぇ嫌な表情」
勇は不満そう。
「嫌だよ!あんただって昨日大勢の前で彼女いないつっといて私とフラフラしてるとあれこれ言われて困るじゃん!教室戻ることさえも私は怖いです

翼の言葉を聞いた勇の明らかに不満そうな表情を見て翼は、しまった、言いすぎたと思う。しかも勇は、翼が根に持ってるし、と言う顔をしていたので、翼は慌てて取り繕うとする。
「あ、いやだからつまり…せっかく付き合うことになったんだし、ふ、二人でいようよ…?」

勇の表情が変わった。端正な顔立ち。翼は赤くなる。
「何い?!」
翼は、鼻息を吹き出して驚く。
「自分で言っといて驚くなよ」
勇は冷静だ。

勇は翼のことを抱き寄せた。
「許す。ゴリラの口からここまで聞けるとは」

「いちいちくっつかないで欲しいんだけど」
勇の腕の中で言った。
「いいだろ、付き合ってるんだから」

疲れる・・・感情労働が半端じゃない

全然いつも通りじゃないし

慣れねぇ・・・!!

翼はそう思いながらも勇に聞いてみます。
「そういうもんなの?」
「そういうもんだよ」

翼は勇の腕の中で鼓動に気がつく。
ドクン
ドクン
ドクン
ドクンドクン
ドクンドクンドクン

最初は自分の心臓の音かと思った。

あまりにも早くて大きなそれは

だんだん自分のと重なって

誰の心臓の音なのかわからなくなってきてー

ドクン ドクン ドクン
ドクン ドクン ドクン

嘘だ・・・何これ
テニスフルセットで全力出した時より脈がうるさい
まさか・・・私いつもこんなに大きく鳴らしてたわけ?
なんで今まで気づかなかったの?

息が・・・
苦しい

さっきとは
全く違う空気を
吸っているみたい

勇が翼の様子に気がついて、自分の身体から翼を離す。
「あ、悪い、息苦しかった?」

翼が勇の手首にたまたま触れて、そのまま勇の脈をとる。
ドクン ドクン ドクン

よかった
私だけの音じゃなかった・・・

翼はそう思って、また少し顔が赤くなる。

こいつは気付いてんのかな?
自分の心臓の音がこんなに早く動いてるってこと

そのくせに何か清々しい顔してムカつくな
私と一緒にいて嬉しいの?

ドクン ドクン ドクン ドクン

「手がどうかした?」
勇が不思議そうに翼を見ている。

ドクン ドクン ドクン ドクン
勇の脈が鳴っている。

「・・・か、可愛い・・・かも」
ボソッと翼が呟く。

もしかして頑張って何ともない顔してるとか

翼は勇の顔を見つめた。
勇は固まっている。

「え・・・?か・・・かわ・・・俺?」

勇に言われて、翼ははじめて自分が思ったことが口に出てしまっていたことに気がついた。
翼は慌てて、勇の手を両手で取って言う。

「つ、つまりあの・・・私、あんたのこと大事にするから・・・!!」

勇の脳内で、愛ちゃんにくすっと笑われた気がした。

「・・・それ、こっちのセリフだ・・・馬鹿野郎・・・俺に言わせろよ
勇は両手で顔を覆う。
翼は顔をそらした。
「どっちでもいいでしょ」

変わった空気の中で
変わった私たちは
これからどうなるのかな

翼が座っている階段に置かれたスマホがメッセージを受信した。
画面には

「夏目:写真を送信しました」

と出ている。

to be continued

カカオ79%【感想】

勇が夢?妄想?の中で愛ちゃんという壁を乗り越えてるような感じがしました。勇にとって愛ちゃんは、正直そんなに壁になってるわけではなかったような気もしていたのですが。。。

むしろ、翼が愛ちゃんという友達を失って、勇という友達たちを失うことに躊躇していた、または、愛ちゃんが好きな勇(と翼は思ってる)と自分が恋愛関係になることに対して躊躇している、つまり、翼にとっての大きなトラウマが愛ちゃんだと思っていました。

でも、あまり他人のことを気にしない勇にとっても、遠慮する相手というか、前に進めない大きな壁となっていて、いつのまにか無意識に翼と共通認識になっていたのですね。

相変わらず照れてる翼は、可愛くなくてカワイイです笑30秒早く会いたかったと言われて、こんな甘い会話なのに、カバン落として固まっちゃうところ、翼らしいですね。でも、少し前だったら、こんな時、翼はもっとゴリラ顔になっていたように思います。恋に目覚めて、翼のゴリラ顔、ちょっと減ったかな???と思う今日この頃です。

それにしても勇はいちいち美しい顔しています。翼を愛おしそうに見ているシーンもステキです。

ずっと2人のシーンが続けばいいのにな、と思ってしまいます。翼はすぐに周りに振り回されちゃうし、いろいろ気にしちゃうし、勇は自分の人気とかに無関心で、そのせいで周りが翼を攻撃していても気がつかないし。。。でもこれからきっと2人の関係も徐々に広まっていって、やっぱり翻弄されてっちゃうのかな。とりあえずモブ男が絡んできそうな感じでしたね。。。最後。。。

今回は、勇と翼がラブラブしはじめて、見所たくさんでしたが、私が何気にツボだったのは、翼と勇の2人が、今日もメガネをしていない委員長と会って、メガネをしてない委員長の変わりっぷりに新鮮に驚く翼と、誰?って委員長とすら認識できてなかった勇の反応が面白くて、、笑っちゃいました。

カカオ79%【ネタバレ/伏線回収班】

●翼と勇が交換した赤と黒のランドセル&バレンタインに勇が翼に花を贈る話話→『カカオ79%』38:花色バレンタイン(小5)~ランドセルの色は~【あらすじ&感想】

●勇が翼にホワイトデーでブレスレットを贈る話→『カカオ79%』27.5:Valuable【あらすじ&感想】

●直したブレスレットを翼に渡す勇→『カカオ79%』38:花色バレンタイン(小5)~ランドセルの色は~【あらすじ&感想】

●文化祭を勇と一緒に校内回ることを楽しみにする翼の話→『カカオ79%』91:わくわく【あらすじ&感想】

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