『カカオ79%』228:遊園地へ行こう(10)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想228話】~残り21%の甘さ~

228:遊園地へ行こう(10)

「何ぃ?」

遊園地のフードコート、サンドイッチ屋さんに並びながら、アリザワ先輩は素っ頓狂な声を上げた。アリザワ先輩のすぐ後ろに委員長がいて、先ほど、アリザワ先輩がジュースを買いに行っている間に、自分がリナ先輩に言ってしまったことの一部始終を話していた。

 

「田中…リナにそんなこと言ったのかよ。よく本人の前で言えたな。勇気あるわ」

アリザワ先輩が続ける。

「まあ実際そう言われても仕方のない振る舞いしてるけど」

 

「…言いすぎたと思っています」

委員長はうつむきながらも嫌悪感を顔に出しながら話す。

「でもすぐ男を乗り換えるし、気安くベタベタ触るし…松本先輩の行動は確かに問題があると思います」

 

アリザワ先輩は、委員長の顔を優しく見た。

「田中は真面目だなあ」

 

リナ先輩は、天童さんと二人で、席とりをしながら談笑していた。ちなみに橘君は、翼と勇のお出迎えに、お店の外へと出ていた。

 

「…先輩と松本先輩はお付き合いしていたと聞きましたが、何故お別れに?」

委員長が聞く。

そこ聞くんだ、まあいいけど」

アリザワ先輩は単刀直入な委員長に少し驚く。

 

「まさか…松本先輩に浮気されて捨てられたとか?!」

委員長は畳みかける。

「え?違う違う、君の中ではリナはそこまで成り下がってんのか。大体、付き合ったのもたったの一週間だけだし」

さらっとアリザワ先輩が応える。

 

「え」

委員長は驚く。

「あえて理由を言うと…お互い好きになれなかった」

アリザワ先輩はどこか遠い目をして言った。

 

「はい?」

委員長はわけがわからない。

「好きでもないのに付き合ったんですか?!」

 

「世に中にはそういう人達も多いんです。なんて純粋な」

「なんておぞましい…!」

委員長の反応にさすがにアリザワ先輩がムキになる。

「何つったテメェ」

 

「好きになりたくて付き合ったんだよ。リナは変なところあるけどいいやつだからよ」

アリザワ先輩が言った。

 

委員長は考える。

 

そうだ

俺の中で松本先輩は

 

後輩にいつも

先に声をかけてくれる

生徒会のいい先輩だった

 

委員長は以前、リナ先輩に

「田中君お疲れ」

と笑顔で声をかけてもらったときのことを思い出していた。

 

それが今じゃ魔女…

 

委員長は身震いした。

 

「今の狙い相手って君だろ?逆らうほど執着するぜ、あやつは」

アリザワ先輩が委員長に助言する。

「やかましくてしつこくてズレてるだろ、リナのアプローチ」

「尋常じゃないです」

委員長が同意する。

 

「必死なんだよ、相手を好きになりたくて」

アリザワ先輩は言うが、

「…それでも迷惑な部分は迷惑です好きにさせるのが先なのでは」

と言い切る。

「あらあ手厳しい、断られるのがあんまないからな」

 

並んでいた列が、カウンターまで進んで、飲み物などを受け取りながらも二人の話は続く。

「でも二つだけ言わせてもらうと、リナは男を乗り換えてるんじゃなく、ちゃんと相手に捨てられてから次のやつを好きになるんだ。その次が早すぎるってことはあるけど惚れっぽいやつってこと?」

 

アリザワ先輩の説明に、委員長は驚く。

「捨てられ…」

「あいつ自分から振ったことは一度もないから」

先回りして、アリザワ先輩が補足した。

 

「見た目派手だから大体の男はすぐ落ちるけど、長続き出来ずにすぐ振られてたんよ」

 

アリザワ先輩は、かつての自分のことを思い出しながら話していた。

『リナ、俺らさ、友達の方が楽しくやっていけそうな気しねぇか?』

『あら、そう思ったなら仕方ないね。いいよ?私は友達でも』

 

皆リナの気持ちが恋じゃないって気づいて

手をあげてたんだろうから

事実上

こっちが振られたと言うべきかもだけど…

 

リナが振られてることにしといた方が尻軽女にならねぇんだろうな

 

そう思いながら、アリザワ先輩は、自分のちょっとした失恋話を振り返った。

 

「そしてもう一つ。リナが人に気やすくベタベタするのは、あいつが単に外国育ちの長いハーフだからだろ」

アリザワ先輩は適当なことを言う。

 

「?!は、ハーフ…か」

委員長は真に受けて驚く。でも納得した。

「え、そう見えねえか?どう見てもそうだろ」

 

委員長とアリザワ先輩は、席取りをしていたリナ先輩と天童さんのところへ、買ったジュースやサンドイッチが載ったトレイを運んだ。

「まあここからの判断はご自分で」

最後にアリザワ先輩が言った。

 

「なにぃ?何の話?」

リナ先輩が聞く。

「これ、お前のおごりな」

委員長に尻軽女とみられていたリナ先輩のことをフォローしたアリザワ先輩は、何も知らないリナ先輩にそれだけ言った。

「は?」

リナ先輩は一瞬固まっていた。

 

リナの衝動的な恋愛の仕方には

田中のように対応するべきだったのかも知れないな

 

リナの告白に

深く考えず乗ってきたやつらが

俺も含めて

今のリナを作ったと言っても過言ではない

 

でも残念ながら

リナはいつだって

大真面目

 

自分のそれが

「好き」だと思っている

 

委員長は、リナ先輩を目の前に、アリザワ先輩が言っていたことを考えていた。

 

つまり…

やっぱ尻軽ってことじゃないのか

 

ジュースの乗ったトレイを持ったまま立ち尽くす委員長に、リナ先輩は不思議そうに声をかける。

「どうしたの?突っ立って」

 

その様子を見ていたアリザワ先輩は、リナ先輩の隣に座って、心の中で

 

頑張れよ田中

 

呟いた。

 

***

 

フードコートで席に着く4人、アリザワ先輩、リナ先輩、委員長と天童さんの前にやっと合流できた翼と勇が現れた。橘君が店の外まで迎えに出て連れてきてくれた。

「わーやっと合流出来た、お待たせ」

と言う翼は頭に、血の付いたメイドカチューシャを着けていた。そして、隣の勇も、おそろいの血の付いたメイドカチューシャを着けている。

 

翼が言う。

「いやぁ、ご迷惑をおかけしましたよ~、まさか入場してすぐ道に迷うとは我ながらバカバカしい。天童さんじゃあるまいし」

二人の姿に、アリザワ先輩、リナ先輩、委員長は思わずポカンと口が半開きになり、ディスられた天童さんだけ、小さく

「何だとこらぁ」

と言った。

 

ToBeContinued

 

カカオ79%【感想(ネタバレ有)】

リナ先輩とアリザワ先輩が以前付き合っていたことは、いままでにちょいちょい話題になっていましたが、どのように付き合っていたのかというのは、大きな謎でした。

 

二人、特にアリザワ先輩と仲の良さそうな生徒会長ですら、どうやって付き合ってたんだろう、って疑問に思っていたほどでしたが、今回、それが明らかになりましたね。

 

リナ先輩の特殊な性格、というか恋愛観はこうして作られていったのですね。周りに思われているような魔性の女という感じはあまりしないですね。むしろ、一生懸命恋愛をしているようにも見受けられます。なかなか上手くいっていないみたいですが。。。

 

リナ先輩、ちゃんと傷ついたりもしているのでしょうか。こう見えて、ものすごく傷ついていたら、なんだかいたたまれない、と思ってしまいました。

 

リナ先輩は、見た目とは違って、イケメンが好きだけど、女の子にもちゃんと優しい。そして、自分的な恋愛のルール(人の男は横取りしない)もきっちり守っていて、委員長は恐怖のあまり、リナ先輩の実態が見えなくなってはいたけれど、確かに委員長が思い描いているような感じではないことは確かです。

 

アリザワ先輩は、その辺りをちゃんとフォローしてあげていて、きっとリナ先輩に傷ついて欲しくないのだと思いました。アリザワ先輩優しいですね。適当なところもありますが。

 

アリザワ先輩の助言で、委員長の中でのリナ先輩の存在がどのように変化するか、今後の見どころかもしれません。が、リナ先輩を傷つけるようなことを言ってしまっているので、リナ先輩がさめてしまう可能性もありますし、委員長、まずここは、人として謝った方がいいのでは、という気もします。

 

 

 

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●リナ先輩とアリザワ先輩が付き合っていたことを話している回→『カカオ79%』114:ただのハーレム=修羅場【あらすじ&感想】

●リナ先輩とアリザワ先輩が付き合っていたことについて生徒会長と話している回→『カカオ79%』116:いつも夢を見るから【あらすじ&感想】

●リナ先輩とアリザワ先輩が付き合っていたことを生徒会長が不思議に思う回→『カカオ79%』189:囲い (1)【あらすじ&感想】

 

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