web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想229話】~残り21%の甘さ~
229:遊園地へ行こう(11)
ガタンと音を立ててプリクラが出てきた。翼と勇が並んで撮影されている写真もあれば、二人がキスしている写真もばっちりあった。
「キャー」
と悲鳴を上げる翼の横で、おっいい感じ、と嬉しそうな勇。
「言ったよね!写真消さない代わりに一つ言うことを聞いてくれるって」
翼がプリクラを握りしめながら震えて言う。
「もちろん何でも聞くさ」
勇はとびっきりの笑顔で答える。
翼は、お化け屋敷の出口でもらった、血の付いたメイドカチューシャを勇の前に差し出した。
「今日1日、死んでも外すなよ」
翼の言葉に、勇は、あ?と言ったままの表情でフリーズした。
「え」
と勇が言っているうちに翼にカチューシャを着けられ、
「え」
「え」
と何度か言っているうちに、逸れていた他のメンバー、アリザワ先輩、リナ先輩、委員長、天童さん、橘君たちと合流したのだった。
***
「ワハハハ!何だその変なカチューシャ」
二人でおそろいのカチューシャをしているところを見て、アリザワ先輩が大笑いする。
「お化け屋敷でもらったんス、可愛いでしょ」
翼がこたえる。
「さすが大魔王、美的センスもこの世のもんじゃねぇな」
アリザワ先輩は、勇をじっくりと見て、親指を立てながら
「……うん可愛い」
と言った。
「潰すぞ」
勇が言う。
「え~いいな、私も欲しい~」
リナ先輩が言う。
「マジかよ」
アリザワ先輩が驚いている。
「ショップで他のも売ってるみたいだからご飯の後で見に行きましょう。
「あっ天童も欲しいって。ほらワクワクしてる」
橘君が、あまり表情の変化のない天童さんの方を見ながら委員長に言った。
「マジかよ」
アリザワ先輩が突っ込む。
「あれ?そういえば村上さん達は?」
翼が聞く。その横で、勇は大きな口で大きなサンドイッチを頬張っていた。
「彼氏君、やけ食いはダメだよ、なんて大きなサンドイッチ買ってきたんだ」
アリザワ先輩がニヤニヤしながら言う。
「あっ通常サイズです」
「村上さん達はもう一人誘った人の出迎えに行ってるよ」
翼の問いには橘君が答えた。
「えっまた誰か来るの?」
翼は把握していなかった。
「遊園地は偶数に限るな」
アリザワ先輩が低い声で言う。
「ううああうああああ(そこだけ気が合うじゃねえか)」
勇がサンドイッチを頬張りながら同意する。
「あっ水を取りに行った天童さんが迷子になってる!奇跡!」
翼が少し離れたところでウロウロする天童さんを見つける。
「すごいよね室内で」
と橘君。
「何自慢げにしてんだよ、橘、早く連れてきてやりなよ…」
勇が少し呆れながら、橘君を促した。
リナ先輩が、両手をグーにして胸の前で合わせた。
「あーゆーの売ってないかしら、迷子防止のやつ」
「おい、それ迷子じゃなくて犯罪者、そのポーズやめろ」
アリザワ先輩が突っ込む。
「迷子防止ワイヤーのことですね」
橘君はリナ先輩に理解を示した。
委員長が考え込みながら、提案する。
「…………なら…こうして移動するのはどうでしょう」
翼、勇、アリザワ先輩、リナ先輩、橘君がそれぞれ、天童さんのロングヘア―を握り締めた。
?!
「なになに?」
「犬の散歩?」
周囲にいた人がヒソヒソと話した。
天童さんが怒った顔になり、紙を差がだてて、怒りを翼だけに向けた。
「何で私に?!」
翼が跪きながら悲鳴を上げた。
それぞれが思う理由を口にした。
「強く握りすぎたのかしら」
リナ先輩。
「一番近かったからじゃね?」
と勇。
「同じ迷子だからじゃね?」
とアリザワ先輩。
「良い方法だと思ったんですけどね」
委員長がぼやいた。
「何分析してんだよ!見てないで助けろ!!」
翼が叫んだ。
そんな天童さんと翼のやり取りを見ながら、アリザワ先輩と勇は思わず涙を拭いた。
「仲良くなったね」
「うんうん」
橘君は、手に残る天童さんの髪の毛の感触を確かめるように、その手をじっと見た。天童さんの髪がなびく。
「さあそろそろ移動しましょーショップどこ?」
「そこ真っ直ぐです…」
翼が案内する。
「村上さんは?」
歩きながら翼は委員長に聞いた。
「まだ合流出来てないから先に遊んどいてと先ほど連絡が」
***
…正直
このメンバーで
こんなに楽しめるとは…
翼はショップでお土産を見ながら思っていた。
リナ先輩は、アリザワ先輩に触覚つきのヘルメットを被せて
「キャハハ」
と声を出して笑っていた。
「一ノ瀬これどう?」
橘君が、白い覆面マスクを勇に勧めるが
「俺はこれを外した瞬間死ぬんだ…」
と、メイドカチューシャを着けていることを死守していた。
委員長と天童さんは似たような黄色い飾りを頭に付けて、お互いを誉めあっていた。
「天童さんその選びなかなか…!」
「テメェもやるじゃねえか」
天童さんが頭に飾りをつけたまま、ピロピロ吹き戻しのおもちゃを口にくわえて吹く。その姿を見て、リナ先輩が大喜びし、アリザワ先輩が吹き出した。
勇が何気なく取った顔だけのマヌケなぬいぐるみを、橘君が見て、委員長ものぞき込んでいる。
「妹達にお土産を…」
勇が説明していた。
翼はその光景を眺めながら、こぶしを握り締め、涙しながら喜ぶ。
やばい
超楽しくなってきた
勇との仲直りも出来た?し
天童さんも楽しみにしてるし
いい感じじゃない?
翼が一人、心躍らせながら顔を上げると、目の前に素敵なものがあった。翼の目が輝く。
「勇さん」
翼が勇を呼ぶ。一同が一斉に翼の方を見た。
それぞれに驚いた顔をしていたが、勇は衝撃を受けた顔のまま固まった。
?!
「これどうかな、あんたに」
翼が手に持っていたのは、翼と勇がしている血の付いたメイド服のカチューシャとセットの、メイド服本体だった。
「死んでも着ねぇ」
勇が言う。
***
「はああ、やっと着いた」
ため息をつきながら、3人がお土産のショップの入り口に着く。村上さんと、天童さんのクラスメイトと、そしてモブ男だった。
「遅れたくせに変なところで待ってるし、あんたのせいで何時間無駄にしたのか…」
村上さんがモブ男に言う。
「ごめんごめん~」
モブ男は軽く笑いながら謝った。
「何か中すごいうるさい」
天童さんのクラスメイトが、ショップの中から聞こえてくる大声に気が付いた。
「一ノ瀬君達まだここにいるかな」
「もう一度連絡してみたら?」
村上さん達3人が言いながら、ショップに入ったその瞬間。入口正面の試着室から、血の付いたカチューシャ、メイド服を着た勇が怒った顔をしながら出てきた。
最前列で笑いをこらえた顔をしている翼。勇を見ながら興味深そうにメガネに触れる委員長。勇の上着を持つ橘君。スマホで勇の写真を撮影する天童さん。そしてお腹を抱えて笑うアリザワ先輩とリナ先輩。
急に入ってきた3人。状況がわからず、衝撃を受ける村上さんと天童さんのクラスメイト。そして、勇を見てニヤリと笑うモブ男。
ToBeContinued
カカオ79%【感想(ネタバレ有)】
ここでか、と思ってしまいました。ここでモブ男と合流。。。
せっかく、ここ数日ギクシャクしていた勇と仲直りが出来て、天童さんをはじめ、みんなが笑って盛り上がってきたこのタイミングで、モブ男と合流です。しかも翼や勇は、合流するのがモブ男と知らないわけで、心の準備もしていません。雰囲気が一転してしまうのでしょうか。
橘君も天童さんも委員長も、自分のことで精いっぱいそうだし、アリザワ先輩のフォローの気持ちはリナ先輩に向いていましたし。それでもキャパオーバーってことはないことを願いますが。。。大事件は起きて欲しくないですし、翼の心をかき乱してほしくもないです。
もう少し、このカチャガチャした楽しい感じを見ていたかった、というのが本音です。特に、天童さんが何気にすごく楽しそうで、ワクワクしていたり、お土産見ながら委員長と話していたり、勇のメイド姿を写真に収めていたり、楽しそうにしてくれていてホッとしました。
次回、モブ男が猛威を振るうのでしょうか。。。
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