『カカオ79%』230:夏目(1)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想230話】~残り21%の甘さ~

230:夏目(1)

合流した10はショップを出た。

「ひゃー面白かった」

リナ先輩が言う。

 

「もう趣味は女装で良くね?」

アリザワ先輩が勇をからかう。

「黙れぼっち野郎、全然面白くねぇ」

勇はアリザワ先輩に応えると、リナ先輩にも応えた。

 

「もうぼっちじゃねえし!俺一応先輩なのに」

アリザワ先輩はいじけて見せる。

「偶数になったから俺もう寂しくないもん!」

 

そのやり取りに、モブ男が

「遅れてすみません~」

と笑顔で言った。

 

「キモいぞ言い方」

勇がアリザワ先輩に言う。

「ひどっ!」

 

***

 

ショップから少し離れたところまで来て、一同は立ち止まった。

「さてと、昼が過ぎてやっと全員が集まることが出来ました」

アリザワ先輩が仕切る。

「今が午後2時。これからどうする?みんなで移動する?」

アリザワ先輩は、スマホで時間を確認しながら言った。

 

「ちなみに皆の乗りたいアトラクションは?」

アリザワ先輩のその声に、リナ先輩は、

「バイキング!」

委員長は

「メリーゴーランド」

と答えた。声がかぶって、二人が顔を見合わせる。

 

その後ろで天童さんが遠慮がちに

「コーヒーカップ…」

と言っているのを橘君だけが聞いていた。

 

委員長はリナ先輩に向かって言う。

「バ、バイキングってジェットコースターと何の変りもないものじゃありませんか?!」

「失礼ねぇ、ジェットコースターはスピード、バイキングは重力を感じるアトラクションなのよ」

リナ先輩が反論する。

「まあまあ分かったから、乗りたいもん乗らせてやるから」

アリザワ先輩が仲裁する。

 

「どこも待機時間が長いせいで乗れる数は限られてる、だから各自乗りたいもん乗り終えたら観覧車の前で集合ってことでどう?」

アリザワ先輩が仕切る。

「てことで今から乗りたいもんごとに分かれてください」

 

メリーゴーランドチームには、アリザワ先輩、翼、天童さんのクラスメイト、委員長が集まった。

「あれ?先輩メリーゴーランド?」

翼がアリザワ先輩に聞く。

「俺は意外と繊細なんだよ」

 

バイキングチームには、リナ先輩、勇、村上さん、モブ男が集まった。

「は?ゴリラはこっち来いや」

勇がメリーゴーランドチームの翼に言う。

 

コーヒーカップチームには、天童さんと橘君が集まる。注意マークが点灯した。

 

おもむろに天童さんが、メリーゴーランドチームに歩いてきて、翼の背中にピタッとくっついた

「あれ?こっちでいいの?」

と翼。

「同じ回るもんだし」

翼の背中で天童さんが言う。

「いやスピードがちげぇだろう」

アリザワ先輩が突っ込む。

 

一人きりになってしまったアリザワ先輩は、一瞬間をおいて、

「じゃ俺はバイキングだね、混ぜて混ぜて」

と勇の方に近づいてきた。

 

「……さあ!楽しもうじゃないか!」

アリザワ先輩が、何事もなかったように手をたたいて、明るい声を出した。

 

翼が勇の視線に気が付いて顔がこわばる中、それぞれのアトラクションに別れていった。

 

***

 

メリーゴーランドに並びながら、アリザワ先輩と翼、天童さんが話をする。少し前では、委員長と天童さんのクラスメイトが話をしていた。

「天童さん何で橘君と一緒に行かなかったの?」

翼が天童さんに聞く。

「そうだぞ、いいチャンスだったのに」

アリザワ先輩も言う。

 

天童さんは少しうつむきながら静かに話す。

「………今日は橘のためにここへ来たわけじゃないから、二人で気まずいよりは皆で騒がしい方がいい」

 

それを聞いたアリザワ先輩と翼は、手を口元に当てて、嬉しそうな顔をした。

「聞きました、先輩?私達と一緒にいたいって…!」

「てんどっち、楽しいのか…俺らと遊園地へ来て、楽しくて仕方がないのか…」

 

「言ってない」

天童さんが思わず怒った声を出す。

 

「ところでテメェは何でこっちにいるんだ?」

天童さんが翼に聞く。

「あれ?そういやそうだな、もしかして大魔王って絶叫系苦手?その設定似合わないぞ?」

翼は、少し表情を曇らせてこたえる。

「別に…メリーゴーランドに乗りたかっただけだから」

頭の中には、モブ男の後姿が思い浮かんでいた。

 

***

 

はああああー、と勇があからさまに暗い顔をしてため息をつく。

 

バイキングに並んでいる列。勇は橘君と横並びで、話しながら列に並ぶ。

「普通…一緒にいたがるもんじゃないかね、好きな人とは、意味が分からね…」

勇の言葉に、橘君が

「じゃあ天童ももう俺について心残りはないと言うことかな」

と言った。

 

「いや、それはない」

勇が即座に否定する。

 

「橘の方はどうだよ、天童にさ…けられて、胸が痛いか?」

「まあ人として少し傷ついたけど、それよりもさっき天童の髪の毛を握った時…」

橘君が言うと、勇が続きが気になるように

「お?!時?!」

と合いの手を入れた。

 

「『あ、もしかして中学以来一度も髪切ってないのかな』と思った」

橘君が遠い目をして言った。勇は思わず手で顔を覆った。

 

それだけ?!告ってきた女子の髪の毛握っといて感想がそれだけかよ!君はそれでも男子ですか?!」

勇が言う。

「うん、それだけだった」

 

橘君の返事に、勇は絶望の表情を浮かべるしかない。

それだけだったんだ」

橘君が続けた。

 

「後ろの二人!何こそこそしてるの~?愛しの彼女達と離れて寂しいのは分かつけど列は進もうね?」

リナ先輩が注意した。気が付くと、前を行く3人、モブ男と村上さん、そしてリナ先輩たちとの間にスペースが出来てしまっていた。

付き合い立てだからって熱々すぎるの見ると少し嫉妬しちゃう

リナ先輩が言う。

 

「あれ?綾野さんとはやっぱり付き合ってるの?

ここぞとばかりにモブ男が口を出してくる。

「あちゃー、内緒にしてたっけ?」

とリナ先輩。

 

「そうだけど、なんか文句でも?」

勇がモブ男を真っすぐに見て言った。

「夏目君」

 

それを近くで聞いていた、以前から勇のことが好きだった村上さんは、心がズキンとなった。橘君は二人の表情を見ていた。

 

「へぇ、俺の新しい苗字覚えててくれたんだ、気に入ってるんだ、その名前」

モブ男が不敵に笑う。

 

その感情は

恋とも同情とも

違い…

 

未だに名前をつけられていない

 

ToBeContinued

 

 

カカオ79%【感想(ネタバレ有)】

ついに、モブ男回に突入してしまったようですね。このバラバラな10人を仕切ってくれるのはやっぱりアリザワ先輩ですね。いてくれて良かった。

 

乗りたいアトラクション、リナ先輩と委員長、見事に別れました。この先、委員長が恋に落ちて、リナ先輩と付き合いだしても、なかなか趣味を合わせるのは大変そう…な気もします。生徒会の仕事とかで、なんやかんや楽しい毎日は遅れそうですけど、ことごとくいろんなことが合わなさそう。それでも、真逆の性格、環境の人と付き合うのは、成長にもつながるし悪くないと思うのですが、この二人は、何気に自分の意見も強いタイプなので、大変そうですね。…片方だけが手を焼くというパワーバランスにはならなさそうなので、いいかもですが…。

 

そして、実はカカオ79%に出てくる登場人物の中で、一番つかみどころがわからない(と私が思っている)橘君。天童さんの髪を触って、それだけだった、と言っています。が、この「それだけ」って、どういうことなのでしょうか。二つの意味にとれます。勇が捉えたように、女の子の髪を触っても何もときめかなかった、という意味。そして、中学のころから伸ばしっぱなしの髪、散髪代を節約してることに気が付いたが、『可哀想』『自分が何とかしてあげたい』という今まで持っていた同情の感情がわかなかった、という意味。後者だったら、橘君の今までの感情から変化があるようで、まだ、天童さんに希望があるのではないかと思ってしまいます。

 

翼にすり寄ってくる猫みたいな天童さん。かわいいですね。アリザワ先輩や翼が感動してしまう気持ちがよくわかります。

 

勇は、バイキングチームに自分の意志で行ったのですが、翼に合わせる、という気持ちはなかったのでしょうか。翼はおそらく、勇について行きたいという気持ちよりも、モブ男を避けたいという気持ちの方が勝って、メリーゴーランドチームに行ったのでしょうけど。。。そしておそらく、勇について行った村上さん。

 

ただただ自分の乗りたいアトラクションを優先した、アリザワ先輩、リナ先輩、委員長。いろんな気持ちが交錯したチーム編成でした。勇、また拗ねてしまうかしら……。

 

ああ、そして、二人が付き合いだしたこと、モブ男にバレてしまったよ。モブ男からの害は、翼よりも勇へ行った方が、まだ、心揺さぶられたりの影響が少なさそうだから、このチーム編成で良かったのかと思います。けど、きっとこのままでは終わらない…。

 

 

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