『カカオ79%』227:遊園地へ行こう(9)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想227話】~残り21%の甘さ~

227:遊園地へ行こう(9)

「ちょっと薫くん大丈夫?」

ジェットコースターからおりた委員長は、ズンと白目を剥き、口から魂が抜けだしていた。その魂の口からも魂が出ている。

 

オエーと壁に向かって言っている委員長にリナ先輩が声をかける。

「だから無理して乗る必要ないって言ったのに…」

 

そんな二人に、アリザワ先輩は

「俺自販機から飲み物買ってくる」

と言いながら離れて行った。

 

リナ先輩は壁にもたれる委員長の背中をなでなでとさする。

「気持ち悪かったら吐いちゃっていいのよ?歩ける?肩貸そうか?」

 

先を行った三人を追うように天童さんと橘君も歩いていた。階段を上りかけたその時、天童さんの膝がガクッと外れ、後ろに倒れそうになる天童さんの両肩を橘君が両手で支えた。

「天童…!」

 

トン、と天童さんの背中を橘君は胸で受け止める。天童さんは思わず橘君を見て、橘君も天童さんの顔を見た。

 

背中をさすられる委員長。

 

そして、プリクラ機の中で抱きしめられる翼。

 

それぞれの恋心が盛り上がっている遊園地。

 

***

 

「今朝はごめん」

翼を抱きしめながら勇が言う。

「そして俺のためにこんなに可愛い恰好してきて、必死に謝ろうとしてくれてありがとうよ」

 

「べ、別にあんたのためじゃ…!」

翼が言いかけるが、勇が翼の口にチュッとキスをして、翼は思わず黙る。

 

何とも言えない表情を浮かべながら

「…そうですね、テメェのためにこんな分厚い化粧までして…でもあんたの言った通り、スカート短すぎて動きにくいわ」

と、泣きながら言う。

 

素直に…

今日だけでも素直に

 

翼は自分に言い聞かせる。

 

「あーやばい、このままこのゴリラ連れて今すぐ抜け出したい」

勇が翼をもう一度抱きしめた。

「ここ動物園じゃなくて遊園地」

翼は思わずつっこむ。

 

「…帰ったら、二人でいっぱい出かけようよ、私も…無神経なことして悪かったし…注意するから、だから…黙って目も合わせずに無視すんのは本当勘弁してよ。あんたにそれされたら本当…どうすればいいか分かんないんだよ」

 

翼が話すと、勇がちゅっとおでこにキスをした。

「…聞いてる?」

翼が顔を上げると、目の前には優しく微笑む勇がいた。

 

翼は鼻水を垂らしたまま、じーんと泣き出しそうになる。翼は勇に抱き着く。

 

こんな笑顔

いつぶりだろ

 

こんなに触れるのも

久しい気がする

 

ダメだ

もうどうでもいいと思ってしまったよ

 

返事してないしこいつ

 

冷たくしといて甘やかすとか

飴と鞭かよ

 

そこにハマっていく自分が怖い

何年も前から始まっていた

このタチの悪い習慣から

 

抜け出せられる気がしない

 

「そっか、俺が目も合わせてくれなくて寂しかったのか、それはよかった」

勇の言葉に翼はイラっとする。

 

「…本当によかったよ」

勇は翼を抱きしめながら、ボソッと、もう一度言った。

 

・・・あれ?

でも結局今後はどうするん…

 

パシャリ

 

翼が考えようとしたときに、撮影の音が響いた。

『これで撮影は終わりだよ~落書きコーナーで写真を選んでね~』

実はずっと撮影は続いていて、キスしたり抱き合ったりしているところもずっと撮られていた。

 

?!

 

「キャー」

事態を把握した翼が絶叫した。

 

***

 

ジェットコースターを下りて気持ち悪いとダウンする委員長の背中をさするリナ先輩の手を、委員長が振り払った。

「…あんまり馴れ馴れしく触らないでください」

 

「え~?なになに?薫くんもしかして照れてるの?かわい…」

リナ先輩は満面の笑みで切り返すが、

「男に軽々しく触れないでください!尻の軽い女だと思われていいですか?!」

と委員長が言い、リナ先輩の笑顔が凍り付いた。

 

その様子を少し離れてみていた橘君と天童さんも一瞬固まる。

 

委員長は、焦る。

 

ま、まずい

言いすぎた

 

仮にも女性に

それも先輩に

 

でも

そう思われても仕方ない行動をしているのは事実だから

 

いやでもやっぱり

言いすぎた

 

「おーい」

そこに、ジュースを買いに行ったアリザワ先輩が戻って来た。

「自販機が見当たらなくてとりあえず屋台から適当に買ってきたぞ。つかそろそろ昼飯にしようぜ、そっちも混んでるかも知れないし、ほれ、二個買ったからてんどっちーも飲めよ、ふらついてたろ」

 

「あ、ありがとうございます」

委員長はアリザワ先輩からジュースを受け取る。天童さんも、もらったジュースを素直に飲んだ。

 

「あれ?どうした?この雰囲気、何かあったか?」

アリザワ先輩が察して聞いた。

 

委員長がちらッとリナ先輩を見る。リナ先輩は委員長の方を見ており目が合う。

 

「別に何もなかったわよ、お昼どこで食べる?そこで皆と合流しよー」

リナ先輩が、アリザワ先輩の肩に手を置きながら言った。

「薫くん」

リナ先輩に呼ばれて、委員長はビクッとして飲んでいたジュースを吹き出す。

 

「さっきの言葉、私なら気にしてないから。だって、実際そうだもんね」

アリザワ先輩の肩に手を置いたまま、リナ先輩が笑顔で言う。

 

キャーっと青くなる委員長を、橘君と天童さんは少し離れたところから眺めていた。

 

***

 

そのころの翼と勇は、

「消せ!その恥ずかしい写真を今すぐ無に帰しなさい!」

と暴れる翼を片手で押さえながら、勇は落書きをしていた。

「こんのヤロウ、こんな時だけ本気で力使いやがって、離せよテメェ!」

翼が叫ぶ。

 

ToBeContinued

 

カカオ79%【感想(ネタバレ有)】

委員長、口から出てる魂の口からも魂が出ちゃってましたね。芸が細かくてかわいいです(笑)

 

さて、リナ先輩と委員長ですが。委員長の気分が悪いついでに、つい、きつい言い方をしてしまった委員長。委員長は決して人付き合いが得意なタイプではなく、今まで友達も少なく、女性とも気軽に付き合ったりというのもしてこなかったわけで、そんな委員長が追い込まれて、ついきつい口調になってしまうって、仕方のないことだと思います。すぐに言ってしまったことを後悔もしています。ただ、不器用すぎて、その後悔に対し、リナ先輩にフォローの言葉を伝えることも出来ずにいてますけど…

でも、リナ先輩はそんな委員長に対して、大人の対応&一枚上手な対応。さすがです。このことによって、逆に委員長が追い込まれてましたね。

 

そしてアリザワ先輩は、誰にでも面倒見が良いというか、優しいですね。リナ先 フラットな接し方ができるところが素敵です。

 

そして、洞察力も健在ですね。委員長とリナ先輩の空気を察する力、そして察した上で、堂々と何かあったか?と聞けちゃうところ。さすがです。

アリザワ先輩のこういう能力が、なかなか本心を表に出さずにごまかせてしまう翼には必要で、よい相談相手になってくれているんだと思います。勇は、よしとしていませんが。

 

今回、たった数コマだけでしたが、ふらつく天童さんを支える橘君。よかったです。二人の表情もよかったです。

 

翼と勇は、しばらく二人きりでほったらかしにしておきたいです…。

 

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