『カカオ79%』97:答え合わせ(2)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ&感想97話】~残り21%の甘さ~

97:答え合わせ(2)

【あらすじ】

勇の姿を見つけた翼は、店内に入れず、閉まってしまった自動ドアを、アリザワ先輩はもう一度開けた。
「おーい大魔王、何やってんの?入んねーの?」
挙動不審な翼に、アリザワ先輩は、いろいろ察した。

そして、翼を無理矢理店内へと引きいれた。
「ほら早く入りな、大魔王ちゃん」
先輩の手は、翼の肩に回して、トンと背中を叩いた。2人の様子を見て、勇がむっとした顔をする。

その顔を見て、アリザワ先輩は全てを察した。

「あいつだろ?泣いた原因」
アリザワ先輩が言った。翼の表情を見て、
「当たり?」
と聞く。
「…無駄に鋭いですね。その上しつこいし厚かましいし」
翼が言った。

2人は向かい合わせに座っていた。ジュースやハンバーガーを食べながら天童さんのバイトが終わるのを待つのだ。

天童さんは、ものすごく嫌そうだった。
「じゃあせめて他の場所で待ちません?ここは私にとって棘の中なのです。アイアンメイデンの中なのです」
翼は、勇や天童さんの視線を思い出しながら行った。

どういうこと?
と先輩は一応聞いてみる。
「幼馴染みで、何年も家族みたいに過ごしてて、…喧嘩はしてもここまで気まずくなる事はなかったのに…こんな…顔を合わせるだけで慌てて気まずい感じになって…この間やっと少し落ち着いた感じだったのに、またこんな……いや、あんな昔から結局友達だと思ってたのは私だけで」
アリザワ先輩は翼の話を聞きながら、ちらっと後方に座る勇の方を見た。後ろ姿しか見えないが、4人で何やら話をしている。

「それで?裏切られた気持ちになった?今まで騙された気がして?」
アリザワ先輩の言葉に翼はうつむく。
「いや、そこまでは…」
「言ってみー、俺は部外者だ。壁に向かって喋ると思って」
翼は話し出した。
「その気持ちが全くないとは…言えません」
「で?他にどんな気持ちがする?顔合わせると」
翼は心臓の音がドクン、ドクンとなっているのが自分でも聞こえた。
「…き…まずいです。顔見るのが恥ずかしい」
「で?」
「怖くなります。私が間違えたらこの関係を永遠に失うかもしれない…」
「なんでそう思うの?」

アリザワ先輩がどんどん核心に迫る。
「ずっと…見てきました。恋がからむと二度と友達には戻れない。だから何度も気づいてないフリをして、でも一緒にいられなくなることだけは嫌だから……」
「嫌だから?」
「自分の気持ちに自分で確信が持てないのに、引き止めて、無理矢理合わせようと……そうやって合わせていくといつか、私も同じ気持ちになれるんじゃないかな…と言う-」

無責任だ

一方、勇、モブ男、委員長、橘君の4人も、向かい合って座って、ハンバーガーを食べていた。

モブ男が耳をすませて、アリザワ先輩と翼の会話を聞こうとするが、遠くて聞こえない。
「ここじゃどんなに静かにしても聞こえませんよ。あれでしょう。文化祭のことで会議してるだけでしょう。文化祭実行委員長の先輩と一緒って事は。それに天童さんに用事があって来た感じだし」
委員長が、キッズセットのおまけを食べようとしながら言った。
「だから、決してデートじゃないと思いますよ、一ノ瀬くん」

勇は大きな口を開けて、ハンバーガーをほおばった。
「うん」
そして委員長の言葉にうなずいた。
「なんともないふりしないでいいから!さぁこのロミオの胸で泣いていいですよ、ジュリエット…!」
委員長が感情的に言うが、勇はしれっとしている。
「いや、別にいいから。あんまり気にしてないし」

それなのに、
「ああ、手繋いでる」
モブ男が言った途端、勇は、ガタンと立ち上がり、後ろを振り返る。
「…ように見えたけど違った」
と再びモブ男。

勇は着席しながら、
「最近、こーゆー自分が凄く嫌っていうか、恥ずかしいっていうか、こんなんだから私今までずっと翼と周りを振り回してきたんだなと…少し反省した」
と言った。

モブ男も、今回ばかりはやりすぎたと謝る。委員長が少し照れながら、
「一ノ瀬くん…!何か少し成長した感じですね…!」
といった。

「でもそれってそんなに悪いことかな。 振り回さないと振り向かせないじゃん。それが恋愛じゃないの?」
橘君の名言に一同はときめいた。

天童さんは、バイトを終えて出てくると、アリザワ先輩と翼が2人の会話で盛り上がっていたので、アリザワ先輩の真後ろの席に座って待つことにした。

2人は天童さんに気がついていない。

「あのさぁ、大魔王様。まずなんで確信が持てないのか言ってみ。さっき言ってた否定的な?感情たちのせいで?大魔王は恋ってなんだと思ってんだ?キラキラしててドキドキするだけの美しいハッピーな気持ち?そんな1次元的な気持ちなら、誰も恋愛で苦労しねーよ?」
天童さんは、後ろでソファーに沈み込んで隠れながら、2人の話を聞いている。
「そんなの自分でも知ってます!だからこんなに悩んでんじゃん!でも、恋愛感情だと思って先へ進んだら、本当はそんなんじゃなかったら…!家族とか友情とかとしての情とかだったら…!」
「あ、そこは大丈夫。結婚して何年も何十年も経てば結局、情で過ごしてるもだから」
アリザワ先輩がしれっと答えた。

「そんな無責任なこと…できません。私は自分が傷つけた親友の為にも、勇のことが好きなのに諦めるしかなかった人たちのためにも、間違った選択をしちゃいけないって」

「じゃ断れば?」
アリザワ先輩が言った。
翼の表情が固まる。

「1番無責任なのが何か知ってる?放置、そして空頼み」

「はっきり拒絶の意思を示せば、まあぎきちなくはなるだろう。でも時間が過ぎていくと、全部過去になって、やがて彼も今度こそちゃんと彼女を作って、恋愛するんだろうな。手をつないで、頭を撫でて、くだらない会話を楽しんで、抱きしめたり、キスをしたりながら、好きだと言ったり」

翼は勇との日々を思う。

手をつないだり、

頭を撫でられたり、

抱きしめられて、

キスをされて。

「君じゃない、違う女の子に」
アリザワ先輩は続ける。
「大魔王は連絡しづらくなるんだろうな。残念ながら異性同士の友達ってそういうもんだから…」

アリザワ先輩の話を聞きながら、翼は、目に涙を溜めて、そして溢れ出した。
「ほんと、よく泣く、これじゃ俺が泣かせたように見えるじゃんかよ」
アリザワ先輩は少し呆れながら、そして、少しだけ優しい顔つきになった。
「複雑な感情ほどシンプルに考えるのが1番だってこと知ってる?」
「へ?」
翼が涙を拭きながら先輩の話を聞く。

「友達、女、男、周りの人、責任感、愛情、恋愛、全部放り出して、同じホモサピエンスとして彼のことどう思う?」

アリザワ先輩の後ろで、天童さんは、身動きせず話を聞いている。

勇はハンバーガーにかぶりついていた。

 

口にすると二度と

取り返せない気がして

ずっと閉じ込めていた

「…好きです」

翼が言った。

 

【感想】

なかなか、店に入らない翼の反応を見て、翼の幼なじみが店内に入ることを察し、翼の肩を触ったときの反応から、勇、モブ男、橘君、委員長の中から、幼なじみが勇であることを割り出したアリザワ先輩の洞察力と頭の回転の速さ、さすがです。

短い言葉でどんどん、今の翼の気持ちを引き出していて、最後、ついに、好きです、という言葉まで引き出してしまうなんて、さすがですね。

しかし、今回のMVPは、名言を残した、橘君ではないでしょうか。

【ネタバレ/伏線回収班】

・橘「あれ?アリス先輩と一緒?」
→アリス先輩と言う呼び方
→橘君の知っている先輩→テニス関係者?
・アリザワ先輩「同じホモサピエンスとして彼のことどう思う?」→「…好きです」

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