web漫画/カカオ79%【あらすじ&感想92話】~残り21%の甘さ~
92:複雑な気持ち
【あらすじ】
「翼、俺はお前がパリス役を断ってほしい」
夜、勇宅で、翼は蛍に手伝ってもらいながら、台本の読み合わせをしていた。
「ねぇジュリエット、あのビックジュリエットが何か言ってるけど聞いた?」
翼は蛍に話しかける。
「パリス様、どうかお気になさらず。あなた、私のコンパチのくせになんと無礼な」
蛍ものる。
「誰がコンパチだ。どっちかって言うとてめぇがコンパチだろうよ」
と勇。
「えー!?翼ちゃんそんなにいっぱい任されてるの?」
話を聞いた蛍が、驚きの声を上げた。
「信頼されてるってことよ」
とすまして言う翼に、
「なめられてるだけだろ」
と勇がすかさず言う。
「あんたこそなめないでくれる?私の体力。全部やれるから!」
「俺がなめてんのはお前の演技力だ。なんでそんなにやる気満々なんだよ」
勇の問いに翼の目がキラキラしだした。
「え?そりゃ…文化祭…だから…」
勇は翼から溢れ出るワクワク感、ドキドキを目の当たりにした。
「何よ、頑張って悪いのかよ」
「そんなんじゃないけど-…お前さぁ、みんながやりたくない面倒なことを全部自分に回されたとは思わないか?」
勇の言葉に、翼はキョトンとしている。
「勉強の時間が減らされるとか、他にやることが多いとかで適当にサボる奴らもいるんだよ。お前がバカみたいに全部やるとか言い出すから、みんなあれもこれも…意欲溢れるのはいいけど、自分に負担がかかりそうになったら遠慮もしろってこと。そうやって浮かれていると、できることも…」
勇は、説教しながらも、翼の表情に気がついた。
先ほどまでの笑顔が消えていた。
勇が、言葉が出ないでいると、翼はぱっと踵を返した。
「ごめん夕食は家で食べる」
翼が出て行ってしまうと、蛍が勇に向かっていった。
「今のは勇にぃが悪い。『心配だから無理しないでほしい』それぐらい素直に言えないの?」
***
勇は、翼宅の前で座り込んでいた。
やっちまったぁ-
あそこまで言うつもりはなかったのに…
妹には追い出されるし…
蛍は、夕食を6段の弁当箱に詰めて、勇に持たせた。
「ちゃんと謝って、一緒に夕食食べてきて!!」
まるで、喧嘩した兄妹を仲直りさせるお母さんのようだ。
…でも、今翼のところに行くと2人きり…だよなぁ…
旅館で、俺、夏目のこと…と勇が切り出した時、あの時、結局最後まで言ってないし、ちゃんと説明しないといけないこともわかってる。でも…
翼が怪我をした日、病院で愛ちゃんが勇に言った言葉。そして、モブ男の名前。振り返った夏目くん。
あの瞬間の瞳が
お前に全てを話す資格なんてない
と言っているようで
警告…のようだ
でもそんなわけねーだろうな…偶然苗字が一緒なだけで。それをあのタイミングで俺が知っただけで…あいつと夏目はきっと何の関係もないだろうな…
「必死だからって何をやってもいいわけじゃねんだよ…」
勇はぼそっとつぶやいた。
くああああぁああ!!
家の中から、ものすごい叫び声が聞こえてきた。勇は、驚く。
ゴリラが暴れ始めたか。
「だ、だから、自分の誤りはちゃんと…謝罪しないと…な」
インターホンを鳴らすと、翼がドアを開けた。
「その…すいません…でした」
勇が素直に謝る。翼は無言のまま勇を見つめ、勇にもたれかかった。ちょっとした抗議のようだ。
「晩飯…食おーぜ、持ってきたから」
***
リビングで、翼は文化祭の準備で、緑の画用紙を葉っぱの形に切っている。チョキンチョキンと作業しながら勇と話す。2人はソファーに隣同士で座っていた。
「自分がいろんなところに突っ込んで、たいして役にも立たず、むしろ迷惑かけちゃう確率の方が高い人間てことわかってるよ。正直これはキッツーと自分でも思ってるけど、頼ってもらえて私は嬉しかったから心配しなくていいよ。でもありがとな」
勇はそんな翼を黙って見つめていた。
…もしお前がそんな性格じゃなかったら
夏目に会うことも腕を怪我することも
俺たちの間が難しくなることもなかったかもしれない
とまで思ってしまうあたり俺は最低なのかもしれない
でもこいつはもともとこういう奴だ
「でもさぁ、あんただって世話焼きじゃん」
不意に翼が言った。
「あんただってめんどくさがりながらも、誰か困ってるところ見て見ぬふりできないじゃん。なのに誰が誰に説教なのか」
「は!?俺がいつ!?」
翼は、いつかの日直の件を持ち出してきた。
「今もそうだし…あ!昔いたじゃん、あんたのクラスに!いつも日直サボっていた子!あの時も結局1ヵ月も日直一緒にやってたし」
「あれはあーしないと、もっとめんどくさくなりそうだたったからだよ」
勇は反論する。
「そう言いながらも結局やっちゃってるくせに〜愛ちゃんの時だって…」
翼は自分で言っておいて、自分でびっくりしてしまう。
そして言葉に詰まる。
「………いろいろ…気を遣ってくれてたし…」
翼がしどろもどろになりながら、旅行の時の愛ちゃんの話を、勇の口を塞いだことで、まだちゃんと聞いていなかったことを思い出す。
そのことを翼が切り出そうとするが、勇の返答にかき消されてしまう。
「俺は、結局、全部自分のためのことをやっただけだ。お前みたいに他人を思っての
お人好しさんじゃねぇんだよ。俺は自分のことで必死で、周りなんかあんまり見れないやつなんだ」
そして、勇がぶつぶつと、俺はどうせずるくて嫌な奴だけど、と、ネガティブな思考を唱えていた。手は、チョキチョキ葉っぱを切っている。
翼は、そんな勇、うざいんだけどと思いながらも、
「…勇もしかして何か凹んでる?」
と声をかけた。
勇は真横に座る翼を見た。翼と目が合う。
「いや、何か今日余計うざいなと思って…」
勇はそうなのかも…しれないと、うざいのあっさり認めた。
ソファーで並んで座る2人は、向き合って話をする。
「どうしたの?大丈夫?」
「翼あのさぁ、さっき俺が言い過ぎたのは悪かったと思う。でもやっぱりさぁ、パリス役やめてくれない?」
「…なんでそこまで反対するの?他に何か理由でもあるの?」
勇が少し沈黙して、台本を手に取った。そして、
「…キスシーンがあるんだよ。パリスとジュリエットの」
と言った。
翼は目を丸くする。
聞こえてきた言葉に対して、理解が追いつかない。
「え?パリスとジュリエットの何…」
と言いながら、ソファーに座ったまま後ずさりしそうになり、ソファーの上に無造作に置いてあった家電のリモコンのスイッチを後ろで手で押してしまう。
扇風機の電源が入ってしまい、今まで切っていた葉っぱたちが舞い上がる。
慌てて葉っぱたちに手を伸ばす翼の横で、
勇は冷静に、翼の向こう側にあるリモコンに手を伸ばして、
扇風機のスイッチを切った。
翼と勇が接近していた。
その時翼が、なぜその夢を思い出したのかはわからないが勇が消えるかもしれない夢を思い出していた。
葉っぱが舞う短い間でいろんなことが頭をよぎるった
これからまた逃げたらあの夢のように
あの時みたいに
勇が消えるかもしれない
勇と翼は、もうほとんどキスしそうな距離にいた
翼が頭の中で自問自答する。
じゃぁ逃げなかったら?
どうなるの?
進む?
進んでいい?
いつまで避ける気?
まだ話を聞いてないから…
そんなの今から聞けばいい
ちゃんと考えるって言ったじゃん
じゃあ考えてよ
今どうなの?
どんな気持ち?
翼が勇の顔を見た。手で、勇の腕を掴む。顔はどんどん近づいてくる。
「…あ……」
うまく言葉が出てこない。
あれ?てかさっき
パリス(翼)とジュリエット(勇)のキスシーンがあるから
私に役を諦めて欲しいと言ってたの?
To Be Continued
【感想】
蛍、さすがですね。「心配だから無理しないでほしい」それぐらい素直に言えないの?」と兄に正論を即座にえてしまうところ、頭の回転早いですよね。そして夕食を6段の弁当に詰めてあげちゃうところ。gjです!!
翼、やっぱり性格いいですね。勇が素直に言えなかった言葉の真意も、ちゃんと汲み取っていて、凹む勇のことを心配してあげられるのなんて。葉っぱが舞い上がるところの表
現、最高でした。絵が綺麗。。。本当のキスと、劇中のキスをめぐって、2人の捉え方にまたすれ違ってしまうの???
【ネタバレ/伏線回収班】
・パリスとジュリエットのキスシーンがある
・勇は愛ちゃんに言われたことを気にしている
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