『カカオ79%』89: 必死(4)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ&感想89話】~残り21%の甘さ~

89: 必死(4)

【あらすじ】

バス停で、勇の傘に天童さんと二人で入りながら、バスをまつ。
「夏休み前、初めて翼と橘君が出会った日、…つまりお前と翼が会う約束をしてた日、もしかして本当はちゃんと翼に会いに行くつもりだったり…する?」
「肝試しの時にちゃんと翼に礼を伝えたと聞いてさ、その…以前いろいろと勝手なこと言ってて悪かった」
「あと、翼が怪我したこともちゃんと教えてくれたりして、助かったというか、まぁ感謝してるというか…」

雨であたりはぼんやりしていた。1つの傘を共有する2人の会話は続く。
「勘違いしないで。借りができるのが嫌なだけだから。困っていたのよ。私が橘より先に綾野さんの連絡先や存在を知っていたことが橘にバレそうになってたから。だからみんなに知らせて騒がせた。『連絡』しゃなく『怪我』に目をそらさせるために」
だから、と天童さんが続けるが、勇は、
「はいはいわかりました」
と話をさえぎってしまった。

天童さんは、一旦話は中断するが、すぐに
「これも全部どこかのヘタレがもったいぶってるから」
と言った。
勇はこれをには返す言葉がない。
「今日の借りもあるし、ひとつ提案がある」
天童さんが言う。
「私たちが仲良くなって橘と綾野さんの気を引く」

勇は、言葉に詰まりながら、天童さんの顔を見た。

驚きすぎて言葉にはならないが、勇は、俺とお前が?と指を振った。
「ふりをするだけ。そのぐらいは協力してあげるってことだから」

勇は、やっと言葉が出てくる。
いっぱい出てきた。
「いやいやいやいや。ないないないないないないないないないない。いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ。そんなことしたら翼のやつは絶対おめでとうつって喜ぶだけだから」

「じゃ、何とかしてよ!」

今まで淡々と話していた天童さんが、突然感情的になった。

下を向いて、歯を食いしばっている。

肝試しの時、橘君は足を怪我した翼をおんぶして崖下から助け出した。その光景が今でも脳裏に浮かぶ。

勇は背中に背負ったリュックサックの中にある、ブレスレットのことを思う。
「…俺だってこう見えて結構頑張ってんだよ」

雨が振り続いている。バスを待つ2人は、しばらく無言だったが、天童さんが再び口を開いた。
「もう否定しないんだ。綾野さんが好きと言うことを」
「そ、それは…!」
勇は焦るが、天童さんは意に介していない。

バスの影が見えてきた。
「今更否定されても困る。できることがあれば協力する。…いやせざるをえない立場。いつでも党を組みに来ればいい」
天童さんはそう言って、来たバスに乗り込む列に並ぶ。

勇が、そんな天童さんに、傘を持っていくよう言った。
「は?馬鹿にしてる?これ以上借りを増やせと?」
断る天童さん。勇はゴリ押しする。
「もってかないと橘君に全部ばらすぞ。俺はカバンの中にもう1個あるんだよ。バイトとか…いろいろあるんだろう。あんまり無理すんなよ」

親は物を盗んだり人を騙したりまるでクソのような人間たちだった

結局たくさんの借金と私だけを残して夜逃げ

生まれてずっと哀れみの視線を受けてきた

バスの座席に座った天童さんは、勇が雨の中をずぶ濡れで走っていくのを見ていた。

他人の優しさが、どれほど自分を惨めにしてきたことか

橘だけなんだ

私を認めてくれるのは

強いと言ってくれるのは

***

天童さんは旅行帰りの橘君へ渡すものがあり、家向かっている途中に、同じく旅行から帰ったばかりの勇と遭遇した。そして勇は、話をしているうちに、思わず天童さんの頭をポンと撫でてしまい、天童さんに振り払われた。その後、2人は、別れて、天童さんは橘くんの家へと向かった。

橘君の家の前で、天童さんは考える。

私は何もやらないできれいごとばっかり言う奴より、ずるくても必死のやつを応援した

一方、勇も、天童さんと別れてから、天童さんや、愛ちゃんについて考える。

必死だからと言って何をやっても許されるわけじゃない。天童さんにそう言い返せなかった。

やつのあの言葉に、少しだけ慰められてしまったから。

それに、旅行中に橘君が言い切った、特別な人は「不要だな」と言う発言。

橘があんな事言うから…!あの性悪女のことが健気にさえ思えてきて!

でも…俺はこれ以上ズルくはなれねーよ!

じゃあこれからどうすればいいか…

急に、ふとモブ男の後ろ姿が、頭に浮かんだ。
「夏目を探す?」
勇は一人、つぶやいた。

翌日、学校で、いよいよ文化祭の準備が本格的に始まった。モブ男が、台本が完成したから読み合わせをするよう促した。

委員長が勇に絡んでくる。ノリノリだ。

ロミオとジュリエットコンビだ。
「すでに心も体も重い」
勇はつぶやいた。

「綾野さん、あの…実は文化祭のことで頼みたいことがあるんだけど」
クラスメイトの女子が翼に声をかけた。
「頼みたいこと?」
翼は笑顔で応じる。
「うん、ちょーっとだけ廊下で話せる?」
廊下では、アイスの先輩、且つセーターの先輩が待っていた。

To Be Continued

【感想】

天童さんの一人に媚びない優しさに胸打たれました。勇は、翼が腕を怪我した時、一方的に愛ちゃんを責めたことに対して、心にひっかかりがあるようです。それが今回の天童さんへの言葉や行動につながっているのだと思います。そして、今なら、一方的に愛ちゃんを責めるのではなく、必死だった愛ちゃんに話せる言葉があるのだと思います。勇も、あの事件から前に進めていなかったのですよね。

天童さんに傘を貸して、濡れたまま帰った勇。そしてそれを、バスの中で見ていた天童さん。この勇の優しさでも、惨めな気持ちになっちゃったのでしょうか。自分のことを強いといった橘君に惚れる天童さんには残念ながら共感できません。今回勇はがんばったんだなぁと言っていましたが、そちらの方が、嬉しいと、私なら思います。
天童さんらしさというか、生い立ちも含めて、捉え方の違いといったところでしょうか。

【ネタバレ/伏線回収班】

・勇は天童さんに傘を貸した
・勇は愛ちゃんを探すとつぶやく
・天童さんの両親は夜逃げ

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