『カカオ79%』78:夏の風と音と匂い(13)-バレンタイン-【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ&感想78話】~残り21%の甘さ~

78:夏の風と音と匂い(13)-バレンタイン-

【あらすじ】

「警察です!履歴から見て連絡しました…!この携帯の持ち主のお友達ですか?!」
愛ちゃんの携帯に電話がかかってきた。

「事件…腕を…」
「………カフェから救急車…」
勇は、すべての会話が聞こえなかったが拾えた単語から状況を判断して、血相変えて愛ちゃんを置いて走りだした。

救急車のされると音が聞こえてきた。していたマフラーは、解け落ちてしまったが、勇は構わなかった。

「翼…!」
勇が息を切らして、カフェにつくと、翼がストレッチャーに乗せられて救急車で運ばれていくところだった。周りには野次馬がたくさんいて、紛れて愛ちゃんや中島も勇を追ってきていた。

翼の左腕からはおびただしい血が流れていた。
「翼!翼…!」
勇が翼の名前を呼ぶと、震える翼がうつろな目で勇のことを見た。

「ゆー…」

翼はつぶやくようにそういった。

***

「日常生活に差し支えはありません。ただ選手としては今後難しいかなと」
翼の両親が、病院で説明を受けている。

「最初あまりにも抵抗がなかったので油断していたと警察がー…犯人は浮かれている雰囲気が気に食わなかったらしく…誰でもよかったけど特に幸せそうに空を見上げていたのが目に止まったとか…」
「いろいろと残念な事件ですね」

兄の空にも、電話で連絡がいった。

***

雪の降る中、病院の外で勇と愛ちゃんは向かい合っていた。愛ちゃんは勇が落としたマフラーを持っていた。
「どの面下げてここへ来た?」
勇は無表情で言った。ビクッとしながらも、愛ちゃんは翼の状況を尋ねようとする。

愛ちゃんの言葉を制して、勇は愛ちゃんに怒りをぶつける。
「二回も嘘ついてくれたな」
「翼はずっとそのカフェにいたと、カフェの人と中島に聞いた。でも夏目はツリーのところへ向かってると言ったよな」
「それは…!」
愛ちゃんも口を開くが、勇は聞く気がない。

「俺たちが…!一緒だったら」

雪が降る。

息が白くなる。

「腕が…あんなことになるまでは至らなかったかも…しれないのに…」

そう言うと、勇は両手で自分の顔をおおった。

***

病室でベットで横になりながら、翼は虚ろな目でテレビを見ていた。
「今日は、この前アイドルとしてデビューして周りを驚かせた伝説のテニスプレイヤー京一さんに来て頂きました」
「負傷のせいだとはいえ、あっさり引退してしまったことで、ファンから残念と言う声が…」
司会の人が京一の紹介をした。

京一もそれに答える。
「選手でいることだけがテニスを愛する方法ではないと気づいたんです。残りの人生を楽しむことが僕の今までの人生だったテニスとファンの皆様への恩返しだと思って頑張りたいと…」
翼は思わず右手のテレビを画面に伸ばしていた。

***

勇は泣いていた。
「ごめん…なさい」
愛ちゃんが勇に言う。
「引き延ばしにしかならないってことはわかってるよ、でも気持ちを伝えようとするあなたを…止めたかったの…!」

勇は思わず顔を上げた。
「は…そんなことで?ざけんなよ、状況考えろよ。はっ…なんで?俺がどうしようがお前には関係ねぇだろうよ!!」
語気も強くなっていた。

「…好きだから」
そして愛ちゃんは、なにか言葉を続けた。

勇は、無表情で、目を見開いたまま、それを聞いた後、しばし間が開いて、そして
「そんなことどうでもいい」
と言った。

愛ちゃんの目には涙がたまっていた。
「お前は自分の気持ちだけのために、翼の好意を利用したんだ」
「軽蔑する」
勇はそう言うと、愛ちゃんに背を向いて、歩いて行った。

***

入院している間、愛ちゃんからの連絡は一度もなかった。

2月。
「つーばさちゃん!学校行こー!って…何やってんの」
朝、蛍が迎えに来た。
「ほーたーるー、制服着れない」
翼の腕はまだ包帯がグルグルで、普段は首からも吊っていた。翼はブラウスに左腕をうまく通すことが出来ずに、蛍に助けを求めた。

翼はようやく退院が出来て、バレンタインの今日、事件後、初登校となった。毎年バレンタインは蛍と一緒にチョコを作っていたが、今年は蛍が1人で翼の分も作ってくれた。

制服を着て、学校へ行く支度が済むと、蛍は翼にラッピングされた赤と青のチョコの包みを1つずつ、翼に渡した。
「それよりこれ。頼まれたやつ」
「お!悪いな、一人でいっぱい作らせちゃって。ありがとう。助かったわ…」
お礼を言う翼と、屈託無く優しく接する蛍。

家の外で待っていた勇に、翼は後ろから、シューンとバレンタインの包みを差し出す。翼のカバンは、蛍が持ってくれていた。
「はよー、そしてハッピーバレンタイン、チョコくださいと言ってごらん」
勇は若干びっくりしながらも
「…まいど、元気そうで何より」
と応える。そして、昨日同じやつもらったし、と言っている。

学校へ向かう。翼のカバンは、勇が持ってくれていた。

歩きながら、本当は三年生になるまで休みたかった、という翼に、退院する日まで暇で死にそうーつってたくせに、と蛍があきれる。

「でも翼ちゃんまだ完治してるわけじゃないから無理しちゃダメだよ?」
と蛍から注意される。
「リハビリのことは空にぃが調べてくれると言ってたし、そん時までちゃんと元気にならねーとな」
と勇も。
「そーだね、またドッキリ帰国されないように気をつけないと」
空は連絡をした次の日に、飛んでくるかのように帰ってきたのだ。

***

勇から、愛ちゃんはちゃんと学校には来てると聞いたから会いに行けばいいと思っていた。

愛ちゃんのクラスで、もう一つのバレンタインのチョコを、翼が愛ちゃんに渡そうとすると、断られた。「え?もらえない…って?あ、もしかして手作りダメ系?でもこれ私じゃなくて蛍が作ったから絶対美味しー」
「違うの」
愛ちゃんは下を向いて翼とは目を合わせてくれない。
「…私にはこれをもらう資格がないの」

すると中島が横から話に入ってきた。
「そうだよね、ないよね資格」
「ぶっちゃけ言うと、綾野さんの怪我ってあなたのせいでもあるから。見たのよ私。綾野さんが危ない目にあってる時、一ノ瀬と二人でいたよね? 綾野さんの居場所を知っていながらも、一ノ瀬に嘘までついてふ・た・り・きり」
「ちょっとそれどうかと思うけど、ね?皆」
急に振られたクラスメイトたちは、ザワザワしている。

翼は慌てて否定しようとするが、中島の取り巻きの女の子が、声を上げる。
「そ、そのやり方はずるいよ」
以前、職員室の外で立ち聞きしていた子だ。
「夏目さんの両親のこと…夏目さんとは関係ないと思ってたけど、これじゃ…」
「え、何、両親のことって?」
翼は止めようとするが止まらない。
「両親の不倫でこの学校へ、逃げるように転入してきた…そうでしょ、夏目さん」

周囲は、ざわざわヒソヒソしている。中島は腰に手を当てて、ほーと言っている。

愛ちゃんは、ガタンと席を立つと、走って教室を出て言ってしまう。立ったはずみで、翼が渡しそびれたバレンタインのクッキーが床に落ちた。

教室を出るとき、戻ってきた勇とすれ違う。
「愛ちゃん…!」
翼は呼ぶが、愛ちゃんは止まってはくれなかった。

その日から三年生になるまで

愛ちゃんとは会えなかった

情けを知らず

桜が咲く

 

【感想】

救急車へと運ばれていく、ストレッチャーに乗った翼が、勇を見て、「ゆー」と呟いた時の表情が、今まで見たことのない位、心を閉ざした顔していました。『痛い』でも、『怖い』でも、勇を見て安堵するわけでもありませんでした。

そしてそんな時に、京一と出会って(テレビ越しですが)いたのですね。実はかなり初期の段階から、京一は翼の話の中で登場していましたが、なんだろう?とちょっと違和感を感じておりました。

あまりストーリーに関係してこないし、イケメンとは思えないし(笑)、でもしつこく出てくるし(ポスターとか)。ギャグ要員かと思っていたので、こんなところで、翼を救っていたなんて思いもしませんでした。

そして、勇と愛ちゃんのやりとりは、見ていて本当に辛かったです。勇が愛ちゃんを許せない気持ちもわかるし、
愛ちゃんが、謝りたいと言う気持ちも充分伝わります。確かに愛ちゃんは、勇の気持ちを無視して、2人でいることを優先していたのは、どうなの、と思ってしまいますが、中学生だし、翼の事件は1度翼の無事を確認した後の不可抗力だったし、翼も、2人でと勧めていたし、仕方がなかったのかなとは思います。

2ヶ月の入院は結構長いし、まだ腕を固定していて、本当に大怪我でしたね。でも、腕はともかく、気持ちの部分は、見た感じ元気そうでほっとしました。

チョコレートを代わりに作ったこともそうですが、さりげなく、翼のいつもの黄色いカバンを蛍や勇が代わる代わる持ってあげていて、自然にサポートしている感じが、家族みたいでほっこりしました。

でも愛ちゃんの学校での立場の人間関係は悪化してしまいましたね。中島は、翼が大好きだから、正義感も働いていたと思います。でも集団って怖いです。

愛ちゃんも、手作りチョコをもらう資格がないとかでは、翼が困惑するだけだと思います。ラインやメールなり、言葉なりで思うところを説明してあげて欲しかったです。

 

【ネタバレ/伏線回収班】

愛ちゃん「好きだから」のあと、勇に何かをいっている。
その後勇は「そんなことはどうでもいい」

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