『カカオ79％』76:夏の風と音と匂い（12）ークリスマスー【あらすじ＆感想】

ふweb漫画/カカオ79％【あらすじ＆感想76話】～残り21％の甘さ～

76:夏の風と音と匂い（12）ークリスマスー

76:夏の風と音と匂い（12）ークリスマスー

【あらすじ】

世界は真っ白で

はしゃぐ翼と重なる足跡

雪の積もる音と

赤く染まるお互いの頰と耳と手

俺たちだけが取り残されたようなこの真っ白な瞬間
「翼･･･俺･･･ずっと前からお前のこと･･･」
勇は自分の拳を握りしめた。
「ずっとす…！」

振り返る翼と目があった瞬間、勇の喉から、言葉が消え去った。

いい返事をもらえると期待してたわけじゃないんだ。

でもこれはあれだ。

覚悟が足りなかったと言うのか？

振り返った翼の表情は、先ほどまでの笑顔はなく、

困惑と不安、そんな表情をしていた。

なんて顔してくれてんだよ

断られたらその先は？

「何？」
向き合う2人の間に、沈黙が流れ、勇は言葉に詰まっていた。

「綾ちゃん･･･！」
勇の背後から、翼のマフラーを持った愛ちゃんが、翼を呼んだ。

2人の注意は愛ちゃんへ。
もう冬休みだから、マフラーを持ってきたと息を切らす愛ちゃんに
「わああごめん！真逆なのにわざわざ･･･！」
と翼はお礼を言った。

「うんん、間に合って･･･よかったよ」
と言う愛ちゃんは、実は勇が翼に告白しようとする
タイミングを見計らって声をかけていた。

＊＊＊

翼が家に帰ると、翼のママが誕生日プレゼントを翼に渡してくれた。

今までガラケーだった翼に、スマホをプレゼントしてくれたのだ。ママはクリスマスイブは、翼は勇の家で過ごして、クリスマスの夕方には自分は戻ってくる、と言った。それでも翼はママに大好き、とお礼を言った。

ずっと前からお前のこと･･･

と言った勇。

その後、愛ちゃんが帰ってからも、何も言わなかった。まさかとは思うけどもしかしたらあれは･･･いやでもそんなわけが･･････と頭の中で繰り返す

だってちゅーしてんだぞ？愛ちゃんと？ありえないし。

もしかしてやっと愛ちゃんの話をしてくれる気になったとか？

考え事をしながらも、翼は早速、スマホでみんなに連絡をする。

スマホへの返信は、兄の空からが一番早かった。好きです、というハートのスタンプだった。

次に勇からだった。

そして愛ちゃんからも返信が来た。
「綾ちゃん、クリスマスのことで少し相談したいことがあります」
「私のわがまま聞いてもらえませんか？」
翼はスマホの画面をじっと見ていた。同じ頃、勇や愛ちゃんも、それぞれ自分のスマホの画面を見ていた。

＊＊＊

クリスマスイブは、翼と勇と蛍と光の4人で過ごした。勇と翼はテレビゲームに夢中になり、そしてそのまま寝てしまった。
「誰が負けるか・・・」
と寝言を言いながら、よだれを垂らして眠る翼を勇は眺めていた。
「昨日のこと全く気にもしないのかよ、ひどいやつだ」
そう言って、寝ている翼の頰を人差し指で、むにゅっと突っついた。でも昨日言ってしまってたら、今日、こんな風には過ごせなかっただろうな。

明日、雪が降ったら

今度こそ伝えるよ

どんな嫌な顔をするのかな

＊＊＊

翌朝。勇は翼にプレゼントを渡した。勇が引くぐらいに翼は大はしゃぎしていた。

今日は愛ちゃんと３人でツリーを見に行く約束をしている。早く出てこい、と急かす勇に対して、翼は、寄りたいところがあるから、先に行って欲しいと言う。
「どこ？夏目と合流して一緒に行けばいいだろ」
「えーと一人で・・・行きたいな」
「夏目にちょっと遅れると連絡しとくから俺も一緒に･･･」
と食い下がる勇に
「て、てめぇのプレゼント買いに行くんだよ！よ、用意する暇がとれなくて」
と翼は焦って言った。

よぉし、作戦成功、これで2人きりにしてやったぞ。

翼はカフェで1人、飲み物を飲みながら、勇と愛ちゃんのことを考えていた。
「一ノ瀬くんと2人でいられるタイミングを少しだけ･･･」
というのが愛ちゃんがら相談してきた、聞いて欲しいわがままだった。

愛ちゃんって、恋愛のことになると積極的になるのね。カップルになって戻って来るかもしれないのね。

ここまで勇からの説明は全くなし。この寂しさはそこからも来てるんだと思う。

翼は、勇からもらったプレゼントの箱を開けた。

HAPPY　BIRTHDAYのメッセージとともに、プレゼントはリストバンドが入っていた。

2人と合流したら、笑顔で言おう。

そういえば自分の誕生日だからって、まだ言ってないや。

メリークリスマス。

HAPPY　BIRTHDAYのメッセージカードを裏返すと、そこには、Merry Christmas書かれていた。

＊＊＊

小声で、死ねと何度も呟く変な男が、
クリスマスの街をフラフラ歩いていた。