『カカオ79%』71:夏の風と音と匂い(6)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ&感想71話】~残り21%の甘さ~

71:夏の風と音と匂い(6)

【あらすじ】

愛ちゃんが翼宅の玄関で、菓子折りを手に挨拶している。
「今回はお招きいただきありがとうございます。ふつつかな者ですがよろしくお願い申し上げます。これつまらないものですが…」
翼も勇も笑いをこらえている。
「お、おかしいおかしい。その挨拶おかしい」
聞くと、クラスメイトの家に上がるのは初めてで、継母である清水先生がこうするように言ったとのこと。
赤面する愛ちゃんに、翼はますますときめいた。
「クラスメイトじゃなくてと・も・だ・ち!」

あの日以来、夏目さんは私の誘いを断らなくなった。「弱み」って言われたけど、お家の事情を知られたことを弱み握られたと思っていたのか。まだ困った顔をする時も多かったけど、一緒にいることが増えて行く中で、重なるのは時間だけじゃないと私は知っていたし信じてたから夏休みの間、いっぱい誘って、いっぱい遊んだ。

思ったより夏目さんは、感情表現豊かな面白い子だった。

ある時は、勇と翼と愛ちゃんで、愛ちゃんのお父さんの誕生日プレゼントを買いに行った。
「恨んだりはしないの?お父さん…とあの先生のこと」
勇が愛ちゃんに聞いた。
「…お母さんは私が生まれた後すぐに亡くなったと聞いたの。周りから何を言われようが独り身で私を育ててくれたお父さんが幸せならいいよ」
「むしろ邪魔でしかない私を未だに側においてもらって…」
と言いながら、困った顔をして笑う愛ちゃんに勇は、コンとでこぴんをする。愛ちゃんは少し不思議そうな顔をした後に、涙が溢れ出した。

勇がそんな愛ちゃんを無表情で見ていると、横からスーと手が出てきて、ドゴンと大きなデコピンをされる。先ほどまで少し離れたところで商品を見ていた翼の手だった。

翼のでこぴんで、後ろののけぞる勇に対して翼が言う。
「泣かすんじゃねぇよ」
「俺は泣いてていいと思ってんだろうてめぇ」
翼と勇がそんなやり取りをしていると、翼が手にしていた商品のびっくり箱が、突然、蓋が開いて中身が飛び出した。

***

「え?あいつに彼氏がいたって?」
勇は飲んでいた飲み物を吹き出して、むせている。
「うんうん。半年くらい付き合っていたらしいよ。でも先生の噂が広まって別れたらしい」
あんなうぶそうな奴でも恋愛してるのに…!と勇は失礼な感想を持ちながら聞いている。
「そんなことで別れるなんてダッセー奴だなと言ったら、別れ話を持ち出したのは夏目さんの方らしくて。自分のせいで嫌な目に合わないようにね」
「マセてんな、あいつ」

翼はちょっと考えながら、そして、もう一度口を開いた。
「そんな好きもあるんだなぁと思った」
それを聞いて、勇は翼の顔を見つめる。
「でも両親のこともそうだし、元カレのことも全然恨んでないところが一番すごいというか…」
そう言って翼は自分の話をはじめる。
「…私、この前の大会で4位取ったんだ」
「知ってる」
「コーチ達がさ、やっぱダメだなとか言ってたの」
勇は翼の方に向き直って言う。
「…お前まさかそのせいでテニスやめるとか言ってたのか?」
「む、ムカつくじゃんかよ」
翼は勇を見ないまま、勇に肘鉄を勇に喰らわそうとするが、勇はクッションでガードした。
「だからって…!」
「…兄ちゃんは優勝した大会なんだ」
「ちょっとだけ兄ちゃん野郎、ハゲちまえばいいのにと思った」
「自分の弱さにがっかりした」
当時、兄の空は世界大会で活躍していた。
「夏目が恨んでないからと言って傷ついてないわけじゃねぇだろう。そしてお前も傷ついてるだけなんだ。あまり自分のこと責めんなよ」
勇は優しい。

いや、一緒にしてもらうのは申し訳ないよ。妬いて傷ついて八つ当たりしている私と夏目さんは違う。

これじゃ勇にふられていたずらしてる女の子達と一緒じゃねぇか。結局私もその程度の人間だったってことだ。

並んで座っている翼は、勇のことをじーっと見つめる。そして、勇の肩に頭をあずけながら、寄り掛かって考え事をする。

夏目さんみたいに「何でも我慢できる好き」はこれ(勇)。

でもそれは結局欲しくないってこと?

これぞ友情。

勇はそんな翼の行動は、よくわからなかったが、寄り掛かられて、少し赤くなっている。

そんな翼は思う。

私はやっぱりテニス関係者と恋愛するべきだ。

夏目さんにも醜いぐらい心が弱くなって、それでも手放したくないものがあるのかな

夜の風すら暑い夏休みのある日、私はそんなことを考えていた。

***

秋の空。制服は長袖になった。
「愛ちゃん!こっちこっち!」
「待って綾ちゃん…!」
翼と愛ちゃんが連れ立って歩く。
「…その呼び方、何とかできないのか?紛らわしいんだけど」
と後ろから勇。
「うっせーな、ゆうちゃんって呼ぶぞ」

二学期を迎えた。

パンを頬張ろうとする翼に愛ちゃんが言う。
「私、一ノ瀬君のこと好き…なんだ。 綾ちゃんはどう…?」

新しい季節は、また突然訪ねてきた。

To Be Continiued

【感想】

人と距離を置いていた愛ちゃんが、勇や翼たちにどんどん心を開いていく様子が嬉しくて翼が愛ちゃんが好きなことも伝わってきて、今まで勝手に思い描いてきた愛ちゃん像と全く違っていました。そして私も愛ちゃんを好きになりました。

愛ちゃんが綾ちゃんって呼ぶようになっていたり、2人が仲良くなって、本当に良かったと思えます。勇も、愛ちゃんと言う友達が出来て、翼が嬉しそうにしているのを見るのが嬉しい、という感じですね。

最後、やっぱり愛ちゃんは勇の事を好きになってしまいましたね。その予感はずっとしていました。愛ちゃんはこの頃、勇の翼への気持ちにどのくらい気が付いていたのでしょうか?もし気づいていたのなら、綾ちゃんはどう?と聞いちゃう愛ちゃん、怖い…と思いました。

【ネタバレ/伏線回収班】

・兄が優勝した大会で翼は4位
・翼「夏目さんにも醜いぐらい心が弱くなってそれでも手放したくないものがあるのかな」

 

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