『カカオ79%』70:夏の風と音の匂い(5)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ&感想70話】~残り21%の甘さ~

 

70:夏の風と音の匂い(5)

【あらすじ】

「私も…連れて行ってください…」
愛ちゃんの家まで宿題を届ける勇に、ひきつった笑顔の翼が申し出てきた。テニススクール行きたくなかったのか、それとも本当に愛ちゃんのことが心配だったのか、勇にはわからなかった。まあ、両方だろうけど。

「でもこういうのってさぁ、普通1番仲の良い人に頼んだりするもんじゃないの?」
「やるじゃん一ノ瀬くんよお」
愛ちゃんの家へ向かいながら、翼が話した。
「委員長だから頼まれただけだろ。中島(副院長)より家近いし。あいつ、ぼっちだからな」
本人に誰かを受け入れる気がまったくねぇからにはしょうがねぇだろ、と言う勇の顔を翼がやけにじーっと見ている。
「仲いいじゃん」
「は?仲良くねーよ」
「ねぇ今日誘ってみようかな。夏休み一緒に遊ぼうって…」

「い、いやです」
2人の会話をつんざくように、愛ちゃんの声が聞こえてきた。びっくりして二人が声のする方を見ると、パジャマにカーディガン羽織った愛ちゃんが、女性と揉み合っていた。
「離してください、清水先生…!」
「私、1人で行けるから…」
愛ちゃんがそう言って顔を上げた。

勇や翼と目が合う。途端に愛ちゃんの顔から血の気が引いた。

少し困った顔をするかもしれないと思っていたけどこれは期待以上だ。

無理矢理、掴まれている(ように言える)手。

おびえている&嫌がっている(ように見える)夏目。

翼が、女性を敵だと判断して飛び出そうとするのを、勇は小さな声で「まあ待てって」と言って、いったん制止した。

「すいません。俺らこいつの友達で風邪の見舞いに来たんですが、何か問題でも」
勇はそういうと、愛ちゃんと女性の間に入った。女性が何かを言いかけたその瞬間、
「い、いやああぁぁぁぁぁぁぁ」
勇と翼の背後にいた愛ちゃんが、声を上げて、さらに後方に走って逃げていってしまった。
「え?」

本当に宿題だけ渡してすぐ帰るつもりだったんだよ クソ

***

「悪かったわね。わざわざ来てもらってんのに」
お茶を出しながら女性が言った。
「いえ、こちらこそ身内の方ちょっと知らずに失礼なことを言って…すみませんでした」
「夏目は、あのゴ…一緒にいた女の子が何とか連れ戻してくれると思いますので…」

「行け!追え!逃すな!」
あのあとすぐ、勇は翼にそう指令を出し、翼が猛スピードで愛ちゃんを追いかけて行った。
「とても元気な友達ができたようで」
勇が黙って座っていると、女性が話しかけてきた。
「聞かないの?どうして道端で揉めていたのかとか」
「母である私のことを先生って呼んでいたか…とか」
勇は冷静に応える。
「…何か事情があるんだろうなと…詳しく説明してもらえるほどの仲じゃないし」
「夏目本人があまりしられたそうではなかったので」

超逃げてましたね、と勇が言う。
超逃げてたね、と母親も答えた。
「まあそれ正解だわ。あの子、知られたくないだろうね。私達のせいでここまで逃げて来ちゃったんだから」

***

公園で、翼と愛ちゃんはゼーゼー息を切らしながら座り込んでいた。
「な、夏目さん具合悪いのにそんなに走るのはダメだよ。大丈夫?!」
「てかさっきの人は誰?何か嫌なことされてたの?」
と言った翼の腕を、愛ちゃんは、ガシッと掴んだ。
「い、言わないで!今日見たことは全部…!忘れて…!」
「な、夏目さん?」
「お願い!!」

***

愛ちゃんの母は、勇に話をしはじめた。
「私はもともと教師で愛ちゃんの担任だったの。結婚もしてて。君達ぐらいの子供もいる」
別に説明してもらわなくても・・・と勇は言うが、
「まあ聞いてよ。そして今の夫、そう、夏目さんに出会って離婚、そして夏目さんと再婚したってこと」
と説明を続ける。それって…と勇は言った。
「そうよ不倫。で仕事クビになってこっちへ引っ越して来たってこと。ありきたりのつまんない事情でしょう?」

***

愛ちゃんは、公園で、翼にすがりつくようにして話す。
「あなたは…!明るくてきっと友達も多い…!真ん中の子でしょ?
真ん中の子が喋るとすぐ広まってしまう…!だから、、、!」

***

母も勇に話を続けている。
「そしてそのつまんない事情のせいで、あの子も学校でいじめられたり、色々大変だったっていうこれもありきたりな話」
「本人は何も悪いことしていないのにそんな…」
勇は言葉を詰まらせる。
「いじめに本人の善悪なんか関係ないでしょう。少しの凹凸、少しのきっかけ、少しの目立つところさえあれば十分」
「そういう世界でしょう、君たちの世界って」

「…まるで自分たちは何も悪くないかのような言い方…一番悪いのも、一番傷つけたのもあなた達だから」
勇は淡々と話す。
「すごいね。初対面のクラスメートの親に対してそこまで言えるなんて、君モテるでしょ」
「そうだよ。一番悪いのは私。だから未だに先生呼ばわりで病院も一緒に行きたがらないぐらい嫌われてるの」
「本当、先生も親も向いてないわ、私には」

***

「ストーーーーップ!」
翼は愛ちゃんの頬を両手で挟んだ。
「夏目さん、ちょっと落ち着いて!言わないから!誰にも言わない!てか真ん中の子って何?!私末っ子なんだけど!!」
愛ちゃんは突然、泣き出した。
「言わないよ!人の事情勝手にばらしてバカにするやつに見えた?!」
「カバン落ちてたことは大きい声で言ったじゃん!」
「いや、ごめん。そうだね。ぶっちゃけカバンのことはわざと大声で言ったというか、
裏でそんなことやったってちゃんと気づいている人いるから…的なメッセージだったっていうか…」
愛ちゃんは、自分への嫌がらせはどうでもいい。何ともない、と言い切った。
「だから、お父さん達だけは…」
と、目に涙をためる。
「何ともなくなかったじゃん。無理して笑ってたくせに」

愛ちゃんは、転校前のいじめの記憶を思い出す。机に、不倫女の娘と書かれた。先生が母親になることで、沢山、陰口を言われた。

「ごめん勝手なことして。でもやっぱ辛いじゃん。そういうのされたら…」
翼が言った。
「同情されたいわけじゃない…」
と言う愛ちゃんに、
「違う!同情じゃない!共感だ!」
と翼は返す。
「お父さん達、大好き……だから我慢できるん…だよね」

翼は、勇の顔を思い出しながら言った。
「…私もそうだったからわ…かる…」
愛ちゃんは、何も言わずに、翼のことを見ていた。

不本意で知ってしまった事情と
誰も超えて欲しくなかったであろう安全距離

***

愛ちゃんの家に戻ってから、翼が愛ちゃんを誘った。
「夏目さん風邪治ったらうちに遊びに来ない?」
「え?!あ、いや…」
「こいつもセットだよ。隣住んでるし」
夏目はやっぱ少し困った顔をしていたけど
「行く」
「あなた達の弱み…探りに行く」
と言った。

この日から、翼の誘いを断ることはなかった。

to Be Continued

【感想】

愛ちゃんが人と距離を置くのは、家庭環境と、転校前のいじめが理由でした。
お母さんになった人も淡々と話をしていて、ドライ?なのか、ちょっと違和感を感じてしまいました。
不倫てもっと、感情的な人がすることなのではないでしょうか。
大好きだから我慢できる、と共感した2人。
お父さんのことが大好きだから、いじめも我慢できる愛ちゃん。
勇のことが大好きだから、嫌がらせの手紙も我慢できる翼。

3人の距離が縮まるとともに、モブ男と愛ちゃんの関係も気になります。
まだ、モブ男の名前は出てきていません。
そして、モブ男の両親は、母親の浮気により離婚。この母親とつながるのでしょうか?

 

【ネタバレ/伏線回収班】

・愛ちゃんの状況は、夏目父が当時結婚して子供もいた愛ちゃんの担任と不倫の末結婚、そのせいでいじめにあい転校。
・愛ちゃんの母親になった人は、勇たちくらいの子供もいる

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