『カカオ79%』236:発展(1)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想236話】~残り21%の甘さ~

236:発展(1)

 

「その『新しく芽生えた自分にも分からない気持ち』って何?」

 

観覧車の中で、天童さんがたたみかけるように、橘君に聞く。
「誰への?」

 

 

すると突然、天童さんは立ち上がり、橘君の顔の両横に両手をドン、と突いた。

 

「どんな?」

 

 

その時の話を天童さんから聞いた翼は、声にならない声を上げながら、天童さんの両肩を両手で掴んだ。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

翌日、天童さんはハンバーガーショップでアルバイト。床掃除を終えて、ふうっとため息をつきながら顔を上げた。観覧車での続きの会話を思い出していた。

 

橘君は、天童さんの『どんな?』という問いに答えた。

「天童が怪我をしたあの日…俺のことで必要な時も俺の家族に助けを求められず、天童は一人で全部背負ってたんだなと気づいて…俺自身が許せなくなった」

 

橘君は壁ドンをする天童さんから目を離して言った。

「あれからずっとそのことが離れなくて、ずっと天童のことばかり考えている」

 

天童さんはまっすぐに橘君のことを見つめた。

 

「…ところで落ち着いて座ってくれないかな、今のセリフもこのポーズのせいで余計恥ずかしい…」
橘君の顔が少し赤くなる。

 

「橘の責任だと思っている?」
天童さんは椅子に座り直しながら言う。

「…私は今まで橘と、橘の家族のおかげで一人でも生きてこられた。本当に心から感謝している」

 

 

「怪我をさせたやつらが悪いに決まってる、橘が責任を感じる必要はない」

 

そう言い切る天童さんに橘君は食い下がる。

 

「でも俺がいつものように天童の近くにいてあげられたら…」

「じゃあ、私と付き合ってずっと側にいてくれる?」

 

天童さんの問いに橘君ははっとした顔をする。
「…それは」
言いよどむ橘君に天童さんがはっきりと言い切る。

 

 

『罪悪感』『哀れみ』、橘の『新しく芽生えた自分にも分からない気持ち』の名前だ」

 

 

橘君は何も言うことが出来ずに、正面に座っている天童さんの顔を申し訳なさそうに見る。

 

 

「…本当はわかってるくせに」
そんな橘君に天童さんは恨み節を言ってやる。
「橘はテニス以外の線引きが正確すぎて傷つく。やっぱトドメじゃない」

 

 

「…ごめん」
橘君は謝ることしかできない。

 

 

天童さんフッと微笑みながら言う。
「そこが好きだけどね、ありがとう。こんな私をずっと気にかけてくれて」

 

 

その笑顔に橘君が思わず見とれていると、天童さんは言葉を続ける。

 

「おかげで私は橘以外にも頼れる奴らに出会えた、私は今、結構幸せな方だから、どうか橘もそんなに思いつめないで欲しい」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

翌日の昼間。天童さんはいつものハンバーガーショップでアルバイトをしていた。店内で掃除を終えて一息、休憩に入る。

 

そして店内で待つ翼の席へと近づいていった。そして翼と天童さんは向かい合って座って、何やら話している。

 

ジャージ姿でテニスラケットを持った橘くんは、その様子を店の外からガラス窓を通して眺めていた。が、店に入るでもなく、くるっと体を反転させて帰っていった。

 

店内では、翼の泣き腫らしたひどい顔を前に、天童さんが言葉を失っていた。

 

「それで?相談したいことって何…」
無表情で天童さんが言う。
「待った!この顔にコメントはないの?!」
翼が慌てて言った。

 

「いや、それもう見飽きたし、今朝も見たし、前にも見たし」

天童さんは少し目を伏せながら
「大体さ…私の話でテメェが泣く理由はなんだ?私は橘とちゃんと話できて満足してるんだぞ」
と言ったが、翼は 滝のような涙を流して、テーブルに突っ伏した。

「でも結局またフラレたじゃないのぉ」

 

 

「わざわざ言葉にしてくれてどうもありがとう。綺麗にまとめてやったのに言うんかい」
天童さんは、怒って言う。

「…本当に大丈夫なの?」
と翼。

 

「大丈夫じゃない、でもスッキリはした」

天童さんは自分について話し始める。

 

「もしかしたら私は告白した時、同情でもいいから橘に受け入れてもらいたいと思っていたのかもしれない。橘にとって特別な存在になれるならそれでもいい、そう思ってずっと頼っていたから。でもいざ気持ちを混同している橘を見たら、正直な気持ちで答えてもらって良かったと思った」

 

 

 

天童さんの話に翼は、うんうんとうなずいて、成長したね、天童さん、と涙をハンカチで拭いながら聞いていた。

 

 

「で」

 

突然、話していた天童さんの声色が変わる。

 

「今度はテメェの話す番だ、その、夏目愛ってやつについて」

腫れている翼の目が見開かれた。

 

 

 

ToBeContinued

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