『カカオ79%』213:安心と混乱(2)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想213話】~残り21%の甘さ~

遊園地まであと5日。勇は一人、手の中で小銭を弄びながら、学校内の自動販売機にむかっていた。

うむ…遊園地…
遊園地か…

チャランチャランと、手の中の300円を握りしめる。

そういや遊園地は一緒に行ったことがないな
行こうとしてた時には
翼のやつが珍しく風邪だったし

二人で行きたかったな
まあ…今回ばかりは仕方ねえし

天童も思った以上に翼に懐いてくれてるみたいだし

当分二人きりは無理か…

勇は色々考えを巡らせた後、その結論に辿りついて自動販売機にもたれかかった。ふと気が付くと、自動販売機の横から、何やらどす黒い空気が漂っていて、勇は驚く。

?!

「た、橘…?」
「…一ノ瀬」
力なく言った橘君は、いつもと違い、顔はやつれ、元気がなく、負のオーラを醸し出していた。

「…そんなところで何してんだ?」
勇の言葉に顔を上げて何かを言おうとした橘君は、顔をそらし俯いた。いつもと違う橘君の様子を勇は不思議に思った。

「あの…」
橘君が口を開いた。
「……天童はどう?

***

勇は橘くんが座っていた自動販売機の横のベンチに自分も座り、コーラを飲みながら、ここ数日、天童さんに起きた事件とその顛末を話した。

「ああ、怪我も大事ないし、翼ともうまく過ごしてる」
勇が言った。
「…よかった」
橘君が言う。

俺…何も出来なかったから…ずっと心配で…

橘君の言葉に、勇は内心反省をする。

しまった
橘へのフォローを忘れてた

気にならないはずがないのに
翼にも天童にも連絡はできず…

にしても偉く落ち込んでんな

橘君は肩を落とし、右手で顔を覆った。
「俺が天童から距離を置かないで、側にいてあげられたら、あんな危なっかしい状況は免れたかも知れないのに」

勇はそう話す橘君の顔を改めてみた。

そんな風に思っていたのか

「……橘、それで自分を責める必要はない、天童と距離を置いていたのは仕方のないことだった。それに悪いのは橘ではなく、あの借金取りのやつらで…」

勇はそう言いながら、かつて自分が、病院の屋上で愛ちゃんに向かって言った言葉を思い出した。
『俺達が…!一緒だったら、腕が…あんなことになるまでは至らなかったかも…っしれないのに…』

あの時の気持ちが蘇ってきた。目の前で顔を覆う橘君が、かつての自分と重なった。

勇は、力を込めて橘君の肩に、自分の手を置いた。
「…お前のせいじゃない。お前のせいじゃないから…」

「…一ノ瀬?」
勇の少し思いつめた様子に橘君は気が付いて、声をかけた。勇はハッとした。
「ま、まああれだよ、あいつ今日、翼に付き合わされて早朝ジョギングまでやってきたらしいから~」
勇は雰囲気を変えるように言う。
「早朝ジョギング…」
これには橘君も驚いたようだ。

「……。分かっている、頭ではそれを分かっているんだ。天童だってきっと俺の助けなど待っちゃいなかっただろう」
橘君が話す。勇は、橘がこんな乱れた姿を見せるとは…と思いながらも黙って聞いていた。
「でもあの瞬間…久しぶりに会った天童の、怪我した顔を見た瞬間、そうなるまで天童を放ったらかしにしていた自分が許せなくて、間に合わなかったということが悔しくて、家に帰ってからもあの顔が頭から離れなくて、ずっと天童のことが気になって、気になって…

橘君は話を続ける。
「…一ノ瀬、俺どうすればよかったんだろう…」
橘君は、顔を覆ていた自分の手を下げて、見つめた。
「何でこんなに悔しいんだろう、これからはどうすれば、いいんだろう」

そしてもう一度顔を覆う橘君の肩をポン、とたたいた。が、かける言葉は見つからない。

ん???

勇は口には出さなかったが、頭の中に大きなはてなが浮かんでいた。

***

翼は教室の自分の席で、LINEのトーク画面を見ていた。翼と勇と天童さん以外のもう一人を遊園地に誘って、OKが返ってきたところだった。

勇も文句ないはず!

形だけでいいからダブルデート感味合わせろ!と言った勇のことを思い出す。ちらっと、隣の空席に目をやった。

デート…ね

天童さんを励ますことで頭いっぱいだったから
勇がそういう風に言いだすとは思いもしなかったけど…

と思いながら、翼風恋人らしい翼と勇を想像してみた。

二人で笑い合って、翼が勇の腕にぶら下がってみる。
アイスをあーんって食べさせてもらう。
カツアゲしようとする悪者から、翼が勇に守ってもらう。
キスをする。

そこまで想像したところで、翼は自分がおろろろろろ、と吐き気がした。

いやいや、勇と私じゃそうはならないだろう
普通に出かけるくらいの
映画見たり
美味しいもん食べに行った……

天童さんのこととか
色んな事がありすぎて…

以前住んでたところに行ってみようという話も
後ろ倒しになっちゃってるし

考えてみると
そんな普通のことすら
やってなかったんだ

それに…

翼はここ最近の自分の行動を省みる。

『ずっと内緒にしたいとかじゃないよ、ただちょっとゆっくり……』
と翼は勇に言っていた。

『付き合ってないよ』
みんなの前でそう言った。

勇のことをドンっとつき飛ばしたり、どすっとみぞおちを殴ったりした。

上手にキス待ちの顔もできなかった。

よーく考えてみると私…
普通どころか
最悪の彼女じゃない…?

翼が考えていると、キイっと椅子をひく音がして、ガタンと隣の席に勇が座った。翼は、いつの間に、と焦りながら
「?!、お、お帰り!」
と言った。
「飲み物買うのに偉い時間かかったね?!」

「あ…いやそれが…」
勇はポリっと顔を掻いた。勇が言葉を探しながら話す。
「あのさ、遊園地にもう一人誘おうって話したじゃん」
と勇が切り出すと、
「あーそれなら私が誘っといたから問題ないよ」
と翼が返す。

「え?誘っといたって?」
勇が聞くと、
「アリザワ先輩!」
と翼がスマホの画面を見せる。

親指を立ててキラキラ笑顔で『俺行ける!』というアリザワ先輩の顔が浮かんだ。

「はあ?」

勇が不満げに言う。翼にはこの勇の反応の理由が分からなかった。

ToBeContinued

 

 

カカオ79%【感想(ネタバレ有)】

何があっても動かないであろうと思われていた鉄壁の橘君の恋心が動き出してる…(?)のでしょうか…。

それにしてもこんなにも弱っている橘君は、大変貴重です。いつもどんな時でもさわやかくんだった橘君が、黒いオーラを出していましたね。

周りが見えて、いろいろ察することが出来る橘君ですが、自分の恋心には疎い感じなのでしょうか?…と断定で書いてしまいましたが、橘君のこの戸惑いの気持ちというか、天童さんの力になれなくて落ち込んでいる気持ちが恋心で会ってほしいと、私は願わずにはいられません…。

翼はアリザワ先輩を誘ていてOKをもらっていましたが、勇のこの反応としては、アリザワ先輩はナシなんだろうな…意外と仲良く(?)しているようにも見えましたが、やっぱり警戒しているのですね。アリザワ先輩のこと。いまだに余裕がない勇ですね。

翼は、アリザワ先輩を誘ったけれど、勇は橘君を誘う提案をしようとした感じですよね?もう誘ったのかな??お互いに変なところで行動力があるタイプでまとまらなさそうな気がします。

アリザワ先輩に罪はないんですけど、勇からしたらそうはいかなさそうですね。

 

 

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