『片想いシュリンク』まさかの恋愛ファンタジー冒険譚

『片想いシュリンク』EP*04 戸惑い【あらすじ】

「おはようミチルくん」
午前中の学校。すみれちゃんがキラキラの笑顔でみちるくんに挨拶をした。
「おっおはようございます、すみれ先輩」
みちるくんは赤くなりながら、挨拶を返した。みちるくんの後ろには虎之助もいる。
「お身体はもう大丈夫なんですかっ！？」
みちるくんの質問に、すみれちゃんは笑顔で答える。
「ええ、心配してくれたの？ありがとう、ミチルくん優しいのね」
「いやあー」
みちるくんは照れた。

「あらとらのすけ」
すみれちゃんは、みちるくんの後ろにいた虎之助に声をかけた。
「前髪がいつもよりハネてるわね」
と言いながら、すみれちゃんは両手で虎之助の髪を撫でた。
「い…一限目体育だったから…」
すみれちゃんはくすっと笑った。
「夢中で気付かなかったのね、とらのすけらしいわ」
「うん、ありがと…すみれ先輩」

虎之助はぼんやりとすみれちゃんの顔を見つめた。

…昨日の

不思議な出来事は

まるで夢だったかのように

すみれちゃんは元通り

いつも通りのすみれ先輩に戻りました

おとぎ話なら

キスで魔法が解けたら

二人は結ばれるんだろうけど…

すみれちゃんと、すみれちゃんの女の子の友達二人が、虎之助とみちるくんに手を振る。みちるくんは大きく、虎之助は遠慮がちに手を振った。

今は…すみれちゃんが元気になってくれたからそれでいっか

＊＊＊

「一年生たち可愛いよねー」
虎之助とみちるくんと別れてから、すみれちゃんの友達が二人がきゃっきゃと話をする。
「私とらちゃん弟にほしーい」
「分かる！」
「いいなーすみれ、あんな可愛い子に本当のお姉さんみたいに慕ってもらえて」
その言葉にすみれちゃんはふふっと笑う。
「そう？」

「仲良すぎてそのうち二人が恋人同士になってたら私ショックだなー」
友達のひとりが言う。
「変な冗談やめてよ！とらちゃんじゃすみれと並んでても弟にしか見えないよー」
もう一人が笑いながら言った。
「それもそっか―」

それを聞いたすみれちゃんは、
「もうっ、何言ってるの二人共、私先に行くわよっ！」
と言って、友達を置いて行ってしまう。
「わー待ってよ、すみれーごめんってば」
先に行ったすみれちゃんの顔は赤かった。

＊＊＊

その日の帰り、すみれちゃんと虎之助は、喫茶店に向かって歩いていた。
「よく考えたら、まだアオイくんに彼女が出来たって決まったわけじゃないのよね！相手の人も本当に断り文句を探してる可能性もあるわ！そうしたら私にもまたチャンスが！！」
「わあ…なるほど…確かに…」
前向きなすみれちゃんに、虎之助は相槌しか打てない。

「私だってアオイくんに釣り合うおんなのこになれるように、何年も努力してきたんだもの！この位で諦めたくないわ！私がんばる！！」
「うんうん」

＊＊＊

喫茶店に入ると、アオイくんが、でれっとして報告をして来た。
「この前の告白、ＯＫだってさ☆」
すみれちゃんは、口から魂を出しながらも、なんとか
「ＨＥＥＥ－ＯＭＥＤＥＴＯＵ－」
と、カタカタした動きになりながらも言った。虎之助は、そんなすみれちゃんの異変を感じ取って、
「わあ、ごっごめんアオイくん！また来るね！！」
と言って、すみれちゃんを外に連れ出す。あおいくんは
「え…おう！？すみれまた体調わるいの？」
と言っていた。

＊＊＊

道を挟んで向かいの家の虎之助の部屋。
「…私、くじけたわ…」
ベッドに突っ伏して、すみれちゃんが泣き始めた。虎之助ははわわ…となる。
「３分前の元気はどこに!!?」
すみれちゃんは、布団の中にもぐりこんだ。
「そんなものは３分前においてきたわ。もういい…私寝る…」
「俺のベッドで？いいけど…」

虎之助は、すみれちゃんがもぐっている布団を、心配そうに見つめた。
「…すみれちゃん、冷蔵庫にプリンあるけど」
「いい…いらない…」
「じゃあ何か飲み物とか…」

虎之助が行きかけたその時、すみれちゃんがぐえっと声を上げた。虎之助は振り返って驚く。
「!!!?えっまさかすみれちゃん！？また小さくなっちゃった!!?」

すみれちゃんは驚きで、涙も止まり、青くなって震えていた。虎之助はわたわたする。
「な…なんで！？昨日のじゃ治ってなかったの！？とりあえずすみれちゃんこれタオル」
小さくなってはだかんぼうになってしまったすみれちゃんのことを、虎之助はタオルでくるむ。
「今日はおばあちゃんも帰ってくるし…なによりすみれちゃんの家族が心配するよね。どうしたらいいんだろう」
虎之助は、タオルでくるんだすみれちゃんを、両手で優しく持つ。すみれちゃんは、その手をちらりと見ながら、少し緊張した顔をしている。

「だ…大丈夫よ、とらのすけ、おまじない…昨日あれで元に戻れたじゃない、だからきっと同じようにすれば元に戻れるわ。た…たぶん…」
すみれちゃんの顔が赤くなる。
「そ、そっかぁー、さすがすみれちゃん、僕すっかり慌てちゃってたよー」
虎之助は、明るい顔をする。その屈託のない笑顔に、すみれちゃんはホッとする。
「そうだよね！一度は戻れたんだもん。同じことをすれば良いんだー」
「そ…ソウヨー」
すみれちゃんは無表情で言った。

「それじゃあすみれちゃん、またおでこ失礼するね」
「あいよー」
虎之助は、すみれちゃんのおでこにキスをした。が、何も起こらない。

「あ…あれ？」
二人は見つめ合う。

元に戻らない！？

To Be Continued

『片想いシュリンク』EP*04 戸惑い【感想】

学校の中で、すみれちゃんと虎之助以外のキャラクターが出てくると、二人の関係や、二人がそれぞれどのような立ち位置で見られているかがわかるので、新鮮ですね。虎之助は、見た目通りというか想像通りですけど･･･。

すみれちゃんは、同級生の友達にも、少しお姉さんのような感じで接しているんですね。本当に素を出せるのは、虎之助だけなんだなあと思いました。

今回注目したのは、すみれちゃんの反応です。虎之助は、すみれちゃんのことが好きなのですが、すみれちゃんにおまじないでおでこにキスをしても、すみれちゃんに裸で押し倒されても（全話ラスト）、小さくなって裸でいても、赤面しながらも笑顔で安定した対応をしています。

なんなら、描写はされていませんが、すみれちゃんが小さくなった時、服が全部脱ぎ散らかっているわけで、その脱ぎ散らかった服も、下着を含めて虎之助がきちんとたたんであげていそうですし。

でも、すみれちゃんは、虎之助におでこにキスしてもらったこと、なんだか意識しているように見えます。おまじないをしてもらう時も、照れ隠しで「ソウヨー」とか「あいよー」とか、棒読みで言っているのかな、という気もします。

アオイくんに対しても、感情だだ漏れなすみれちゃんでしたが、対虎之助に対しての反応にも今後注目ですね。

前回、解決したと思っていた小さくなっちゃう問題、振り出しに戻ってしまいました。

『片想いシュリンク』EP*04 戸惑い【タイトル考察】

感想でも触れましたが、すみれちゃんの虎之助に対する反応が終始戸惑っていましたね。虎之助の戸惑い、よりもすみれちゃんの戸惑いの方が大きいのかな、と思います。

ではすみれちゃんが何に戸惑っているのかを考えてみました。

・虎之助がおでこにキスしたこと

・虎之助のキスで身体が元に戻ったこと

・裸で虎之助を押し倒したこと

・再び小さくなったこと

いくつかあげられますが、一番の戸惑いは、白雪姫は王子様のキスで魔法がとけた、そして二人は結ばれた、というその相手が虎之助だったことのようですね。