『カカオ79%』257:雨とピアノの旋律(7)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想257話】~残り21%の甘さ~

257:雨とピアノの旋律(7)

中学の頃の回想の続き。

外は相変わらずの土砂降りだったが、防音室は明るく、スピーカーからはクラシックが流れていた。

ソファーに座らされた勇は、肩からピンク色のブランケットをかけられ、そのブランケットの上から翼に肩たたきと肩もみのマッサージを受けていた。翼はソファーの後ろに立って、リズムよく肩をたたく。

「お客様、力加減はいかがですか?」
放心状態の勇だったが、話しかけられて
「…あ、ちょうどいい感じです」
と答えた。

「どうよ?スッキリするでしょ?」
「お前…マッサージの才能あるわ」
勇の目の前のマグカップからのぼる湯気を見ながら言った。

「スポーツしてると嫌でもこういうことが見につくもんだよ」
「で、クラシックか、分かりやす」
勇はもう落ち着きを取り戻しているようだ。

「そうそう、リラックスと言えばピアノでしょう~あ、でもあんたは毎日聴いて弾いてるわけだし、逆に緊張しちゃう?仕事なので趣味としては楽しめません的な」
翼はソファーの後ろで、片足に体重をかけて立ちながら話していた。

「…別に緊張はしないけど聞いてて癒されもしないかな」
勇は座ったまま言う。
「でも雨の日にピアノの音に混じって聴こえてくる雨の音が、いつ雷に変って来るのかそっちばかり気にして…………ビクビクしてたと思う」

おや、ちょっと可愛いじゃない

翼は少しにやけながら、後ろから勇の顔を覗き込む。

「ん?あれ?じゃあもしかして最悪の選曲?!」
ふと翼は気が付く。
「まあねえ、そもそも雷にビビ…るようになったきっかけも一人でピアノを弾いてたことからだったし」
勇は認めた。
「いい思い出がないんだよ。ピアノに関しては。でもまぁ、今は結構慣れたし、聴くのは普通に聴けるわ、自分の手で弾いてる訳じゃない分まだマシだし」
勇は無表情で言う。

翼は話をする勇のことを、後ろからじっと見る。

「あんたもしかしてさピアノ嫌いなの?」

翼はソファに座る勇のあごを手で上に引き、上から覗き込む自分と目を合わさせた。

勇は翼の目をじっと見た。

好きかどうかを通り越して
嫌いかときかれるとは

頭を強く打たれた気がした

こんなにも簡単に見抜かれるものを
どうして俺の親と先生達は気づけない?

どうして翼には俺の本音が分かるんだ?
他の皆は気づいてないふりをしていただけなのか?

隠していたつもりはないけど
いざ聞かれると何だか言葉が出ない

勇は翼の目を見つめたままフリーズしてしまった。

やばっこれ超愚痴ってるだけのただの根性なしだ

「………そ、れは…」
勇が言いかけた瞬間、また、ピカッと外が光り、勇の身体がビクッとこわばる。
「!あ…」
真っ青になる勇の目を翼は後ろから手で覆った。バックハグをするよに。そして耳元でささやく。
「大丈夫。雷が怖いこともピアノが嫌いなことも我慢しなくていいよ」
翼が言う。
「何も一人で無理して我慢する必要ないから」

近い

ドクン、と勇は自分の鼓動が聞こえた。

耳元がジーンとして

ドクン

ドクン

と鼓動が大きくなっていく。勇の青かった顔は赤くなっていた。

一瞬
雨の音も
ピアノの音も
何も聞こえなくなった

「ちょっ…離して…」
勇が言う。

こいつ、耳元で…!
近すぎだろう!!

そもそもこの場合は、目じゃなくて耳を塞ぐべきじゃねぇの?!

勇が焦っていると翼は、勇の肩に腕をまわして
「やめちまえば?ピアノ」
と言った。
「好きでもないやつ、一生続けられる自信ある?」

「そんなに簡単に言えることじゃ…!」
勇は言うが、
「簡単だよ。好きでもないことをやめちまうのは。好きなことをやめるよりは遥かに簡単だ」

テニスが好きで
一生懸命頑張っているやつがそう言った

この頃から自分の兄とは違う
底の見える限界に気付いていたんだろうか

「…?」

翼は話を続けた。
「よく考えなよ。自分が本当にビビッてるのが雷か、それともピアノか。雷ならこのお姉さんが付いててやるからいつでもくっついてきなさい、よしよし」

「はぁ?!今くっついてんのはてめぇの方だろうが!!誰がお姉さんだ?!」
勇が怒る。
「あんた今までずっとお兄さんズラして蛍達の前でも平気なふりしてたでしょ。私の前では強がらなくていいって。私がお姉さんだから」

雷がなっていたが、大丈夫大丈夫落ち着いて、と勇の肩をもむ。
「だから…!」
勇は反論しよとするが翼は聞かない。

「雨が降る時にはこうやって一緒にいようよ、ほら、ひーひーふー」
翼は何故かラマーズ法の呼吸を持ち出してくる。ひっついてくる翼に
「それ違うから」
と勇は赤くなりながら言う。翼の「ふー」の息が勇の耳にかかっていた。

「今度は京一の音楽をかけて、美味しいもん食べながらゲームでもしようじゃない。そしていつか、雨の日だって好きになる時が来るかもよ」
そう言って翼は笑った。勇は思わず泣きそうになる。

その日の夜
俺はやっとピアノを辞めると宣言した

ToBeContinued

 

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