『カカオ79%』255:雨とピアノの旋律(5)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想2話】~残り21%の甘さ~

255:雨とピアノの旋律(5)

中学生の翼と勇。2人は大雨の中、一緒に帰ってきて、隣同士の家の前で別れた。
「じゃ!」
「おう」

勇はびしょぬれで玄関に入る。ガタンと音を立てて傘を立てかけた。
「ただいま」

傘差した意味ねー

ビショビショの身体で家の中を歩く。誰もいない。母親と光は祖母の家に行っていた。

あれっ、蛍のやつまだ帰ってねえのか?

すると家の電話が鳴った。勇が出る。
「あ、お母さん?うん、うん、えっじゃあ蛍は今日友達ん家に泊まるの?迷惑なやつだな…嵐の日に友達ん家に遊びに行くなんて」

電話が終わると、勇はガチャンと受話器を置いた。

ザーッと外から雨の音が聞こえてきて、家の中は静かだ。そしてやけに広く感じる。

一人で家にいるのは久しぶりだな

勇がそう思っていると、ピカっと外が光った。勇は反射的にビクッとする。

何をビビッて…
だ、大丈夫だ、落ち着こう

俺はもう中学生だし雷なんて何とも…

勇が自分に言い聞かせていると、ガガガガガガガと雷の音が鳴り響いた。

「防音室…防音室へ…」
勇はふるえながら防音室へ向かう。雨と冷や汗が廊下の床に滴り落ちた。
「あそこなら雷の音もきっと聞こえないはず…」

防音室にたどり着くと、ピアノが目に入る。

一人で
弾いていた
ピアノが

父の声が

先生の声が

妹たちの声が

雷と重なって耳から離れやしない

いや、何か音楽を聞こう
ヘッドセットを付けて…

勇はCDをセットし、ヘッドフォンを耳に装着した。

***

俺は相変わらず
ピアノを辞めるタイミングを
掴めないままで

両親は育児と仕事で
どんどん疲れていった

その状況で俺は
将来留学のために英語とドイツ語まで
習わされていて

今考えるとどうしてそこまで受け身になっていたのか
自分でもわからないけど
俺自身もその状況に疲れ切っていた

ところで何故今までの流れで
俺のピアノの話は
みじんも出て来なかったのか

それは今の俺の人生(高1)の中には
ピアノという存在がなくなっているから

つまり辞めたから

じゃあ何を今更ゴタゴタ話しているかと?

勘違いしないで欲しい

これは俺のピアノに関する暗い昔話ではない

これは…
俺が翼を本格的に好きになった
きっかけの

そう、つまり
恋話だ

***

中学の頃の回想の続き。

勇が雷から気を紛らわすためにヘッドホンをつけて、音楽を聞いていると、窓の外からトントントントントントンと振動が伝わってきた。

勇は不思議に思って外に繋がっているガラス戸のカーテンを開けた。瞬間、外が光った。雷だ。

そして、窓の外にビショ濡れの翼の姿が浮かび上がった。

「!@♯!@♯!@$!$!$!&*」
勇は言葉にならない叫び声をあげた。そして尻もちをつく。

翼はガタンガタンとガラス戸をゆらし、
「開けて」
と戸の鍵の部分を指さした。

***

部屋に入れてもらった翼は、にぃっと不気味に笑った。

ToBeContinued

カカオ79%【感想(ネタバレ有)】

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