『カカオ79%』168:迷子(6)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想168話】~残り21%の甘さ~

しくじった
逃げる必要なんて
なかったじゃない

天童さんの脳裏に、小学校4年生の時のミドリの言葉がよみがえる。
「可哀そうだから」
ミツウラの言葉がよみがえる。
「借りがあるだろ?!」

じゃ、橘の親切の理由は
何?

天童さんは立ち止まって思い切り振り返った。後ろに橘君はいなかった。

いない?!

はあはあ息を切らしている天童さんの背後から話しかけられる。
「俺体力だけは自信があるからさ」
ゼーゼーと息を切らした橘君だった。

いつのまに

天童さんは驚いて橘君の方を振り向いた。
「ひどいな天童、挨拶したかっただけなのに逃げるなんて…思わず本気で追いかけちまったよ」
と言いながら、橘君は天童さんの肩を後ろから掴む。
「何また逃げようとしてるの?」
橘君の顔は笑顔だ。
「ここからじゃ一人で帰れないくせに」
天童さんがあたりを見ると、そこは未知の街だった。

橘の親切の理由…
その理由は知りたくない

***

ドン、と天童さんの目の前に立ちはだかっていたのは大きなお屋敷に続く門だった。
「こ、ここは…どこ…」
少しクラクラしながら、天童さんが聞く。
うちだよ、あ、僕です」
インターホンに話しかけながら、橘君は答えた。
「お帰りなさいませ、ぼっちゃま」
インターホンからも応答がある。
「はあ?!」
天童さんが抗議の声を上げる。

橘君は天童さんの抗議の声は意に介さず、笑顔で答える。
「天童ん家の位置、正確には知らないからまずはうちへ向かったんだ。でも時間も時間だし夕食食べてから送った方がいいかなってー」
どおりで見たことない道ばかり出てくると思ったら…!と思いながらも天童さんは怒る。
「調子に乗ってんじゃねえよテメェ」

「天童?」
と橘君。
「夕食食わせろって一言も言ってねぇし、家まで送れとも言った覚えはねえよ。挨拶?そんなの交わす仲でもなかっただろうが」
橘君も天童さんもお互いのことをまっすぐに見ている。

「…と言うわりににはここまでちゃんとついて来てるし、そこが天童の可愛いところだと思うんだ
「か…!」
橘君の可愛いの一言に、天童さんは太刀打ちできない。

そりゃ道がわかんねぇから仕方なくついていたけどまさか山道へ入るとは…

と心の中で反論はしてみる。
「俺は…俺の後ろを少し離れてついてくる天童を見て、あの頃みたいで懐かしいなと思ったんだけど天童はそうでもなかった?」

二人の間に少しの時間が流れる。二人とも、小学生の頃、橘君の後ろをついてくる天童さんと、先ほど、中学生になっても後ろをついてくる天童さんの二人の様子を思い浮かべていた。
「懐かしい…?バカ言ってんじゃねぇよ、屈辱しかない記憶を懐かしがるわけがない、バカにされてることすら気づかずにヘラヘラとそいつらの後を追っていた自分が今でも許せない
天童さんは言い切った。

今になってわかる
自分をまとっていた言葉全てが
いかにも自分を見下ろしている言葉だったかを…

自分より格下の人生を
生きる人への言葉

「聞きました?あそこのご両親かなり荒れてるみたいよ」
「父親はお酒ばかり飲んで母親は毎日別の男と遊んでるらしいって」
「あらまあ…それで子供は大丈夫なのかしら」
「一緒に遊ぶなって言ってたのに…」
「私…可哀そうだから一緒に…遊んであげたのに…」

そんなお前らなんか
その気があれば無茶苦茶にしてやれる
そう行動で見せるだけで
面と向かってそういったことを
言ってくるやつらはいなくなった

なんてわかりやすい生物だろ

「テメェも周りの空気読んで縁切ったんなら…今更声かけたりすんじゃねえよ、まともじゃねぇやつらとツルんでるのを見て可哀そうだなと思ったりして…」
「天童こそ俺のことバカにしてるの?」
橘君が天童さんの話を遮って言った。
先に距離置いて縁切ってきたのは天童の方だったじゃん。何度声をかけても無視されたし顔すら見てくれなかった。卒業までクラスがかぶることもなかったし中学も別のところ、今日だって天童がいきなり逃げ出したし、先に人のこと無視してたのはどっち?
いつも笑顔だった橘君が、怒ったような怖い顔をしていた。

「…こっちからじゃなくてもいつかは…こうなるに決まっていたんだよ。どう見ても生まれから違う人生生きてんだろうが」
大きな橘君の家の前で、天童さんは自分のゴミが散乱したアパートの部屋を思い出す。
「その言い方…!」
橘君が反論しようとしたときだった。

「お腹すいてるんじゃ」
震えた小さいおじちゃんが、話を遮った。今まで怒っていたのに驚いた顔をする橘君。おじいちゃんは続ける。
「今夜は鍋だぞ、早よ上がるんじゃよ」

ToBeContinid

カカオ79%【感想(ネタバレ有)】

橘君の、天童さんの可愛いところ発言に悶えたり、そんな橘君に感情が振り回されているような天童さんに読んでいてテンションが上がったり、いつもニコニコしている橘君の、いつになくムキになったような、怒ったような表情の変化にドギマギしたりと、なかなか盛りだくさんの内容だったと思うのですが、最後のふるふると震える空腹のおじいちゃんに全部を持っていかれてしまった感じです。

このおじいちゃん、花火の時に勇と遭遇しているおじいちゃんですよね。

このおじいちゃんには誰も逆らえないですよね。もちろん天童さんも。ある意味で、橘君の鈍感さは、このおじいちゃん譲りなのかもしれないと思えてきます。

夏休み、旅館で翼と遭遇したおじいちゃんも似たような感じでしたが、どちらも私は結構好きです。登場している時に、いつでも震えているところがなんともいい感じで微笑ましいです。ついつい優しくしたくなってしまいますね。

カカオ79%【ネタバレ/伏線回収班】

準備中

 

 

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