web漫画/カカオ79%【あらすじ&感想68話】~残り21%の甘さ~
68:夏と風の音と匂い(3)
【あらすじ】
勇と愛ちゃんの教室、2人を取り囲んでクラスメイトが集まっていた。
「何してんの?皆集まって」
教室に入ってきた中島が来た。取り囲んでいたクラスメイトが状況の説明をする。
「夏目さんにテストの範囲を教えてあげようとしたら解けなかった問題が出てきてちょうど一ノ瀬くんが来て教えてもらおうとしたら夏目さんが先に解いてしまってそこから2人で対決みたいになっちゃったの」
とのこと。周りはハイレベルな問題についていけない様子。勇と愛ちゃんは、ノートを真ん中に、公式を書き込んでいる。
中島の隣にいた友達が、何か言いかけた。しかし、中島は、
「考えてみたんだけどさ、正直、綾野さんの言った通り、夏目さん悪くないんじゃない?」
「え?」
友達は少し驚いた顔をしている。
「ねぇ私も教えて~」
中島は友達を残して、勇と愛ちゃんを囲む輪に飛び込んでいった。裏切られた、と言う顔をした友達は、その場に立ち尽くしていた。
***
放課後。勇が翼に、朝の手紙の内容をしつこく聞いている。
翼は言う気はなかった。先生に用事がある勇は、翼に待っているよう言い、職員室へ向かった。翼が校舎の外に出て待つ。
「一ノ瀬君から離れてください。迷惑です」
と手紙には書いてあった。あんな手紙見せられるかよ。翼が目立たないとこで待とう、と、中庭をうろうろする。
気配に気づいてふと顔を上げると、池の向こう側の縁に女子生徒が立っていた。彼女は下を向いている。彼女の視線の先に目をやると、池の中に鞄の中身が落ちていた。
翼は驚いて、靴と靴下を脱ぐと、池の中に入っていた。
「早く拾わないと沈んじゃうよ?」」
ポチャポチャ歩きながら翼が言った。その声に愛ちゃんが顔を上げる。
「夏目…愛さん?」
そう言って翼は濡れたノートを拾い上げる。ノートに愛ちゃんの名前が書いてあったのだ。
池の深さは太ももくらいまであった。翼がスカートをまくりながら話す。
「どうしたの?うっかり落としちゃった?それとも何かイラついても投げた?まさか時代おくれのいじめだったり」
「違うよ自分で落としちゃっただけ」
そういった愛ちゃんの表情がこわばっていた。
やばい図星だったかも。
それ以上は聞かなかった。
きっと隠したかったんじゃないかな。
なんとなくその気持ち、今すごく共感できる。
***
手紙の内容をしつこく聞いてくる勇に対して、翼は後輩からのファンレターだったと説明した。
足を乾かすために、スカートをまくり上げる翼。勇は直視することができずに、自分のカーディガンを翼に渡す。
汚れるからと断る翼に
「お前の裸足見ている方が目の汚れだよ」
と悪態をつく。
カーディガンを受け取って翼は帰る準備を始める。
「…残念だったな。ラブレターじゃなくて」
勇が、靴下を履く翼の横に座って言った。
「…別に?むしろ安心したっていうか…」
「お前にしてはなかなかの慌てぶりだったから、試にでも受け入れるんじゃないのかと思った」
「試?うーん試しか…」
「ゴリラでもいつか誰かと付き合ったりするだろうよ。今は全く興味がないとしても…」
「興味がないわけじゃないよ」
翼の意外な発言に、勇は目を見開いた。
「恋がしたいって言うより、恋をしている人たちの心理がね、どうにも共感できなくて、自分も誰かを好きになったらああなるのかなとか…」
「じゃぁ俺で試してみるのは…どう…?」
勇が翼の方に向き直って言った。
翼はちょっと驚いたような顔をしたが、勇のどう?には直接答えずに、話を続けた。
「でもなかなか好きになるくらいかっこいい人がいなくてさー。背が高くて、私よりテニスがうまい人がいいなぁ」
そう言って立ち上がる。
「なんだよそれ、空にぃ?」
「…兄ちゃんより強い人がいいなぁ」
空はこの時、世界ランキング83位だった。翼がそれを聞いて、不細工な表情になってしまった。
***
その日の夜、家で、テニス選手になろうかな…と勇はつぶやく。蛍は、そんな兄の勇のことを気にもとめず、テニスバカは1人で十分、と言っている。
***
翌日、翼が蛍と一緒に中学校へ登校する。学校につくと、後から呼び止められた。中島とテニス部の後輩たちだった。
「綾野さん、おはよう。ちょっといい?この子たちが私たいものがあるって」
中島は後輩たちを紹介する。後輩の女の子は、翼にプレゼントのクッキーを渡した。
「これクッキーです!テスト勉強がんばってください…!」
翼は俺を言ってクッキーを受け取った。前回のテストの時は、テニスに専念していたが、今回は勉強していることにみんな驚いているらしい。
翼は苦笑いをしながら、
「まぁ…勉強も大事だからね…」
と言った。プロテニス選手の兄の空のことも褒められ、そして、ランチに誘われた。その時は思わずOKしたものの、少し時間が経ってから、翼は思い直した。
一応中島には、これからこういうのは勘弁してくれと伝えておくか、と翼は休み時間に中島の教室、つまり勇や愛ちゃんのクラスでもある2-5を訪れた。中島は、いないようだ。
勇と、勇の隣の席の愛ちゃんが目に入る。じーっと見ながら、翼は勇と愛ちゃんに近づいてきた。勇のそばまで来たところで、勇が翼に気がついた。
「ああ!君、勇のクラスに来た転校生なんだ!どうりで見ない顔だと思ったよ」
翼はひとなつこく愛ちゃんに話しかけた。戸惑いながらも愛ちゃんは翼の方を見た。翼は、勇の方に自分の腕を伸ばす。勇は肩を組まれてグエーと言っている。
「私、1組の綾野翼!こいつの隣ん家に住んでる幼馴染み!よろしく!」
他のクラスメイトが少し驚いた表情で翼のことを見ていた。
「昨日のノートとかは無事だった?びしょびしょだったけど…」
「…中身何も書いてなかったからそのまま捨てたよ」
その会話をクラスメートの1人、中島といつも一緒にいる女子がうつむいて聞いている。おそらく、嫌がらせをしたのはこの子だ。
「ねぇよかったら昼ご飯、一緒に食べない?」
屈託のない笑顔の翼と無表情の愛ちゃん。そして少し考えた顔している勇。
勝手に共感して
勝手に縮めた距離で
君はどれほど困っていただろう
To Be Continued
【感想】
高校生の翼にとって、大きな大きなトラウマになっていた愛ちゃん。今まで出てきた断片的な愛ちゃんの絵やセリフがどんどんつながってきました。そして思っていたより悪い子じゃない、むしろいい子だったことに困惑しながら読んでいます。
中学生の幼稚な正義感や人間関係の中で、愛ちゃんはどこか大人びてますね。そして反対に翼は、中学生の中でも、思考は子供っぽく見えます。純粋さ故ですが。
勇、翼に告白してましたね。少し遠回りのいい方でしたけど。わざとなのか無意識なのか、翼はガッツリ無視していました。こういった経験が重なって、高校生の勇は臆病で策士になっていったのでしょうか。
【ネタバレ/伏線回収班】
翼が好きになる人は、自分より背が高くて、テニスがうまい人がいい
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