『カカオ79%』252:雨とピアノの旋律(2)【あらすじ&感想】

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web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想252話】~残り21%の甘さ~

252:雨とピアノの旋律(2)

「へぇ、ピアノが弾けるのね」
中学時代の愛ちゃんが、中学校の第2音楽室でピアノを弾いていた勇に話かけた。
「すごい!今の曲は何?何か他の曲も弾け…」

勇はピアノの椅子に腰かけたまま、しまった、という表情で振り返った。
「ピアノなんか弾けねぇよ!足が痛くてちょっと座ってただけだ!」

勇は否定する。
「え?でも確か…」
愛ちゃんが言うと、勇は怖い顔で
「弾いてない」
と再度否定した。

「はい…私も何も聴いてません…」
愛ちゃんは少し震えて、涙目になりながら言った。

***

「え?渡したい物って…それ?愛ちゃんの…ダ…」
翼はモブ男の自宅のマンションの一室で、渡したいモノがあると言われ、モブ男から愛ちゃんのダイアリーを見せられていた。黄色い表紙の愛ちゃんの日記を、モブ男が持っている。

「だ…ダメだろうが!人のダイアリーを勝手に持ち出しちゃ…!!あ、あんたそれ愛ちゃんの許可は取って持ってきてんの?だとしてもこう易々と他の人に見せるのは…」
翼が少し大きな声を出して、モブ男のモラルを問う。

「うるせえな」
モブ男は翼を試すように言う。
「見たくないの?いろいろ書いてあるよ?綾野さんのお兄さんがプロのテニス選手の綾野空だということとか…一ノ瀬君がピアノが弾けて実は雷に弱いってこととか」

「あんた…それ全部読んでるのね、この人でなしが」
翼が言う。

モブ男は構わず続ける。
「綾野さんの腕が壊れた日の気持ちとか」
翼の目が見開かれた。

***

「何ぃ?勇のやつが学校でピアノを?」
中学生の翼が言う。隣には愛ちゃん。二人は中学校の廊下を並んで歩いていた。これは中学の頃のことだ。

「あ、やっぱ弾けるのね」
愛ちゃんが言う。愛ちゃんは、勇が第2音楽室でピアノを弾いていたのを見たことを翼に話していた。

「そりゃもうバリバリと。でも人前では絶対弾かないのよ」
翼が言う。
「どうして弾けるのを隠しているのかしら」
愛ちゃんは心配そうだ。

翼は勇とピアノのことを思い出していた。

雨が
雷が
自分を責めるように聞こえて嫌だと
勇は言っていた

***

勇も、高校の音楽室のピアノの前で幼少の頃の記憶を辿っていた。自分とピアノの思い出。

母と蛍と光と離れ、父と二人で暮らしてた4歳の勇。外では雷がピカッと光る中、父が勇の両腕を抑えて、強い調子で言う。
「大丈夫だ。雷なんて怖くない。お前は男だろ?お兄ちゃんだろ?お父さんと二人で母さん達が戻って来るまでこの家を守るんだ」

勇は青白い顔をして、父の顔を見ていた。
「ピアノがあんまり上達していないことを母さんが見たら悲しむんじゃないか、サボらないで頑張っていこう」

あの頃
俺にとって

父は
ピアノは
一人は

雷だった

母さんと蛍、そして光がいない家で
父と過ごした1年

それは
俺がピアノを嫌いになるのに
十分な時間だった

そしてその数年後
俺はテニスに夢中の
翼に出会う

***

「ふざけないでよ」
翼がモブ男に怒鳴る。愛ちゃんのダイアリーを差し出してきたモブ男に、毅然と言う。
「たとえそこに愛ちゃんの気持ちが書いてあったとしてもそれを私が勝手に覗く権利はない」

「そういうのは愛ちゃんから直接聞く。今日は帰るよ。次は愛ちゃん本人に会える日に呼んでもらえると嬉しい」
翼はそう言うと、身体を反転させて玄関へと向かおうとした。

「『どうして一ノ瀬君がピアノをやめてしまったのか、結局私には教えてくれなかった』」
モブ男が突然日記を読みだしたので、翼は思わずピタッと足を止める。

「『やっぱり二人の間には私の入り込めない領域みたいなのがあるのを感じる』」
「『そしてそれを感じる度に嫉妬してしまう自分がいる』」
「『人前では弾かないと言うけど、綾ちゃんは一ノ瀬君の腕前を知ってたんだ。やっぱり綾ちゃんの前では弾いてるのかな』」

「テメェ…!」
翼はもう一度モブ男の方に向き直って怒鳴るが、モブ男は日記の読み上げを構わずに続けた。

「『怖い、いつか二人に置いていかれそうで』」
「『それならいっそ、どっちか奪ってしまえば』」
「『残されずに済むのかな』」

それを聞いた翼の目が見開かれる。勇と愛ちゃんと、楽しかった3人での日々が蘇った。

ToBeContinued

カカオ79%【感想(ネタバレ有)】

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