『カカオ79％』250：執着(8)【あらすじ＆感想】

250：執着(8)

その日の放課後、勇は音楽室を掃除しながら、雨の降る外を眺めていた。

翼は水色の傘をさして、黒色の傘をさしているモブ男の後を着いていき、そして学校を後にした。

「まだ綾野さんと喧嘩中？」
一緒に掃除をする渡辺と土井が勇に話しかける。
「今日も全然会話なかったもんな」
「隣の席でよくシカトできるよな、お互い」
勇は二人の言葉を無視して翼のことを考える。

でも何か
今日は昨日までと違って
緊張してる感じ？
がしたような…

授業中、勇は何となく翼の様子を察していた。

帰りに話が出来ればと思ったら
今度はこっちが音楽室の掃除で動けないし

勇はモップを持ったまま、ピアノによりかかった。

＊＊＊

「ねぇ今どこ向かってんの？」
翼が前を歩くモブ男に声をかける。
「愛ちゃん家？これからすぐ会えるわけ？」
「何で急に今日なったの？」

モブ男は答えない。返事しろや、と翼は怒れてくる。
「おい！何か説明を…」
「今向かってんのは俺んち、今日は夏目愛には会わない」
モブ男が突如答えた。
「今日は？！」
翼は驚く。
「渡したいもんがあるから黙って付いてきて」
モブ男が一瞬足を止めて振り返って言った。そしてまた歩き始める。

い、家って
…このままこいつにノコノコ付いて言っちゃっていいのか！？

いやでも愛ちゃん本人に会うには家に行くしかないよね？
こいつ愛ちゃんの弟って言ってたし…

いや、でも今日は会わないって…
家にいないのか？

こいつは愛ちゃんと住んでるってこと？

じゃあこんなに近くに愛ちゃんがいたってことで、

いいや、でも今日はって…
一緒に暮らしてはないとか

あれ？
じゃあこのまま家まで付いて行く必要は…？
あれ？

モブ男の後を追いながら、翼は色々思案する。するとモブ男が大きなマンションの前で足を止めた。傘を畳んでエントランスに入る。

つ、着いた？
高そうなマンション

翼は辺りをキョロキョロする。
「…本当は週末ゆっくり見せたかったわけだけど、死んでも行きたくないところに行かないといけなくなっちゃって」
モブ男が話し出す。突然の話に翼は理解が追い付かない。

何かこいつ、今日やたらピリピリしてる気がする

「俺と夏目愛のこと、そして今ここに来てること、一ノ瀬勇には知らせてる？」
エレベーターのボタンを押しながらモブ男が言う。
「知らせてないよね？」
翼の返事を待たず、モブ男は話し続ける。
「そりゃそっかー、知ったら俺と綾野さん二人で会うの許すわけないもん」

翼は驚く。
「…あんたから見てもあいつの嫉妬と執着はそんなにひどいもんなの？」
「え？あーまあ…あれもこれも全部彼の独占欲の結果だしね」
翼はモブ男の話の意味がよく解らない。構わずモブ男は続ける。
「でもよく分からないいんんだよね。どうしてこれにこだわるのか」
モブ男は失礼な眼差しで翼を見る。

これ？！
まさか私のこと？

さすがの翼も、モブ男に失礼なことを言われてるのは理解し、憤慨する。

「差し出がましいだけの馬鹿なのに」
2人はエレベーターの中に乗り込む。
「何がそんなに好きなのか、俺には全然」
モブ男は愛ちゃんの顔、そして勇の顔を思い出しながら言った。

「理解できない」

ToBeContinued