『カカオ79％』234：深化（2）【あらすじ＆感想】

234：深化（2）

「まぁ薫君見て見て〜」
観覧車のゴンドラの中、委員長とリナ先輩は二人きり。委員長の腕にリナ先輩は自分の腕を絡めて一人で話していた。

「すごーい、綺麗な夕暮れ…こうやって薫君と二人で見られるなんて夢みたいだわ」
委員長はうつむいているが、リナ先輩は構わず続ける。
「観覧車ってつまんないけどたまに乗るといいのね〜」

「…一体どうして」
委員長は、先程のリナ先輩との会話を考える。

『男に軽々しく触れないで下さい！知りの軽い女だと思われていいですか？！』

委員長の言葉に
『実際そうだもんね』
リナ先輩はそう応えた。

あんなことがあった後なのに

委員長は、自分の腕をぎゅっと握るリナ先輩の手の感触に意識を向ける。

どうしてこの人は
何もなかったかのように
私にくっついていられるのだ？！

軽い…！

怒りさえもこんなに軽いなんて

言いすぎて
悪いと謝ったほうがいいかなと
悩んだ時間
返してほしい！

この人は

どうしてこう何もかもが軽いのか…！

「先輩！いい加減にしてください！あまり馴れ馴れしく触れないでいただきたいと言ったそばから…」

委員長は言葉に力が入る。そしてリナ先輩の顔を見て衝撃を受ける。

？！

リナ先輩は目に涙を浮かべていた。
「薫君は…そんなに私のことが嫌いなの？」
そして上目遣いで委員長のことを見つめる。

委員長は戦意喪失、口をつぐんだ。

＊＊＊

日は落ちてきて、遊園地の近くの駅の入口で、一行はなんとなく輪になっていた。

村上さんと、天童さんのクラスメイトは、２人並んで、表情のない顔で言う。
「あの…今日は本当にありがとうございました、誘ってもらえて嬉しかったです…」

楽しい遊園地の時間が終わりました

お開きの時間です

ところでみんなの雰囲気が
観覧車を、のり終えてから

何だか
より重くなった気がするのは
気のせいじゃないですよね

村上さんと天童さんのクラスメイトは、ちらっとお互いを見やる。

デジャヴ…？

と村上さんは感じており、

集まりもこんな感じだったしもういいか…

と天童さんのクラスメイトは思っていた。

翼は、モブ男のことを盗み見して、モブ男も翼のことを見ていた。

＊＊＊

時は少し戻り、観覧車のゴンドラの中。翼とモブ男は向かい合って座っていた。

「愛ちゃんの…弟？」

翼が聞き返す。
「あんたもしかして…あの清水先生という人の…？！」

モブ男が笑顔で答える。

「ピンポーン、やっとその答えにたどり着いたか」
「そんな…そんなバカな！」
翼は驚きを隠せない。

「何で私達の引っ越してきた街にあんたがいるのよ？」

「それはこっちのセリフだよ」
モブ男の顔から瞬時に笑みが消えた。

「何で俺の通ってる学校に綾野さん達が転入して来るのかね。こんな偶然あるの？ドラマや漫画でも都合よすぎるわ」

「不快この上ないっつーの」

モブ男は目を見開く。

「それで？」
言葉を失っている翼にモブ男は続ける。

「会うの？会わないの？」

「一ノ瀬くんに聞いたけど、二人は今付き合ってるんだって？」
モブ男の言葉に翼は何も言うことができない。

「まさか、こんな幸せな瞬間を夏目愛に邪魔されたくない」

翼は、ドクン、ドクンと自分の鼓動が大きくなるのを感じていた。

「もしくは、出し抜いちゃって合わせる顔がない…とか思っちゃってるわけ？」

モブ男の声がゴンドラの中に響き渡った。

ToBeContinued