web漫画/カカオ79%【あらすじ(ネタバレ)&感想190話】~残り21%の甘さ~
「ごめんなさい」
突然、翼に頭を下げられて、橘君は驚いた顔をしていた。
「え…」
横にいた勇も驚く。
「私がはっきり行動できなかったせいで、天童さんに不安な思いをさせたんだと思う。だから、天童さん…人前でよくもあんなことこんなこといつも勝手にやってくれてるけど…」
そう言うと、翼は頭を下げたまま、ちらっと勇の方を見た。翼の視線に勇も気がつく。
翼は、先程の勇の笑顔思い出していた。
そういやこんなにも全身で好きだと言ってるやつを隣にして
私は何を心配したりビビったりしてるんだろう
これじゃ
いちいち突っかかってくる勇のファンの子達とまるで一緒…
…そうだよ
私は恋愛と言うものに憑りつかれすぎているのかもしれない
勇と付き合う前から
友達じゃなくなることを恐れて嫌がっていたことや
天童さんのご乱心(?)に
いちいち反応していること
勇とも天童さんとも
一緒に過ごしてきた時間は
そういう気持ちだけじゃないはずなのに
翼は、少し顔を赤らめながら顔を上げた。勇が、不思議そうな顔をして翼の方を見ていた。
これも全部こいつが無駄にモテるせいで…
いや、人のせいにするのはやめよう
翼は、橘くんの方を見た。
「あはははは、それにこいつが女子の間で話題になるのはいつものことだから…」
翼が、勇の胸を叩いた。
「あ、はい、僕が気をつけるべきですね」
勇が棒読みで言う。
翼は早速人のせいにしている。
「ありがとう、気を遣ってくれて。噂とか気にしないでおくよ。」
嫉妬に狂った女で人を見たくない
私にはきっとそれができる
それぐらいの余裕が持てる気持ちを
私の幼馴染は見せてくれているから
***
橘君は、勇や翼たちの教室をあとにして、放課後の校舎を歩いて行く。先ほどのことを思い出していた。
…急に「ごめんなさい」と言われてビビった
フラれたかと
……いや、遠回しにフラれてる?
橘君は、窓から見える夕焼けを眺めた。
行動をはっきりするべきなのは
こっちだったんだな
橘君は、翼とのことを思い出す。
再会は嬉しかった
でも彼の存在を知ったら
すぐ蓋を閉じるぐらいの
たったそのぐらいの気持ち
橘君は、肝試しで初めて勇と会った時のことも思い出しながら、校舎の階段を軽快に降りていく。
その後ろ姿をアリザワ先輩が見かけて、声をかけようとする。
「あれっ?順ちゃーん……いっちゃった」
アリザワ先輩は後ろを振り返った。
ふむ
確か1年B組の方向から来たんだよな?
ってことは?
***
翼と勇が掃除を終えて、帰る支度中、教室にアリザワ先輩がやってきた。その顔を見て、勇は露骨にいやそうな顔をする。
「ビンゴ~まだ残ってるじゃない~」
アリザワ先輩が言う。
「先輩!どうしたんですか?うちのクラスまで」
翼が反応する横で、勇が、
客が多いな、今日
と思っていた。
「大魔王にちょっと話があってね。リナのやつにさ、誘われたって?生徒会に」
アリザワ先輩は近寄ってきた翼の正面を向いて言った。
「入りなよ、生徒会」
「ええー?」
と声を上げる翼の真横から、勇が湧いて出る。
「断る」
すると今度は、勇とアリザワ先輩が正面に向き合う。
「何すか、急に。一度断った人にこうもしつこくしつこく、それを言いにわざわざ放課後来たんですか、しつこいな」
勇が言う。
「いやぁ、俺も最初はビックリしたけどさ、俺はまだ一度しか誘ってねえよ」
アリザワ先輩が反論する。
「考えてみれば悪くないような気がしてさー」
翼はもう一度断ろうと口を開くが、アリザワ先輩は続ける。
「いや私は…」
「てんどっちーも誘って一緒に」
翼は、口を開けたまま、一瞬固まる。
「天童…さんを、生徒会に?」
翼の横で、勇も驚きの表情をしている。
「正気かよ」
アリザワ先輩は両手を前後に揺らしながら話す。
「まあまあ落ち着いて…その反応には心の底から共感するけど」
「あれか?この学校の生徒会は思春期か?反抗期か?ゴリラに続いてヤンキーとは斬新を超えて乱心かよ」
勇の言葉に翼がツッコむ。
「おい」
アリザワ先輩は、少しまじめに話を続けた。
「あいつってさ一匹オオカミみたいなとこあるじゃん。いつも一人で一人で…。んで大魔王はあいつのそういうとこ心配だろ?」
「え?あ、まあ」
「どこかの一員になって帰属意識が持てるようになれば、そういう寂しいところが少しはマシになるんじゃねえかなと思ったんだよ。あいつはオオカミじゃなくて人だからさ。垣根の外じゃなくて中にいないとな」
一同は、天童さんの後ろ姿を思い出していた。
ToBeContinid
カカオ79%【感想(ネタバレ有)】
橘君の気持ちは、天童さんや勇が気をもむほどのモノではない、ということを橘君自身が思っているように思います。それでも翼と天童さんの仲がこじれてしまうのは、決して橘君のせいだけではないはず。
過去に友達に裏切られた経験で、近づてくる人を信じ切れなくなってしまっていたり、翼の家で、天童さんが一ノ瀬家と綾野家の家族写真を眺めていたところからも、複雑な気持ちがいり混じるのだと思います。
橘君の淡い初恋の恋心は読み取りづらいです。幼い頃、引っ越して会えなくなってしまった翼。当時は精神的にも強くて、テニスにも真っすぐで。橘君はそんな幼少期の頃の翼のことを単純に尊敬したし、自分のスランプから抜け出すきっかけを作ってくれたところから、感謝もしたと思います。
それから何年かして、橘君はずっと翼のことを覚えていました。天童さんにも写真を見せながら、好きなことして紹介するほど。
でも、再会した翼は、テニスをやめていました。自分のことも覚えていませんでした。
好きな子→初恋だったかもしれない→蓋をできる、その程度の気持ち
と、翼と再会してからの橘君の気持ちも徐々に変化している気がします。あの頃の強い翼はいなかったからでしょうか。
一方勇は、強い翼が見せた、家族を思っての涙を見て、翼のことを好きだと自覚しています。もちろんそれまで、強い翼に対してのあこがれもあったのだと思いますが。。。
ちなみに、天童さんを生徒会にと妙案を言ったアリザワ先輩も、翼に気があるような描写がこれまでにありましたが、その妙案はまた天童さんをダシに、翼もそばにいる作戦?それとも本当に純粋に天童さんが心配?どちらんしても、天童さんは前者だと受け止めそうです。。。
委員長を生徒会に入れたくて、翼のことも誘ってるリナ先輩とそう変わらないですよね(苦笑)
カカオ79%【ネタバレ/伏線回収班】
橘君と翼の再会→『カカオ79%』31:再会(1)【あらすじ&感想】
勇の存在を知って橘君は気持ちに蓋を→『カカオ79%』35:肝試し(2)【あらすじ&感想】
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